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ノエル・ブルックスの内心

読み返したら、ペイジ先生の口調がおかしかったので、敬語に統一し直しました。



ノエルはパトリックに手を繋がれたまま、応援席の奥に辿り着いた。

そこには、簡易的な四阿が用意されていた。


「素晴らしいお姿でした、パトリック様。ノエル様も。」


お義父様の執事でもある、執事長が出迎えてくれた。

どうしても今日中に、片付けないといけない案件があるらしく、公爵の姿は見えなかった。


執事が椅子を引き、パトリックが腰を下ろすのと同時に、静かに元の位置へ戻した。


「ブルックス公爵家の跡取りですもの、当然の結果を出したまで。」


上機嫌で返事をするパトリック。

その横で、テーブルの上に軽食が置かれていく。


「旦那様も今日、パトリック様とノエル様の勇姿を見れないことを、大変残念がっておりました。」


「今回の案件はさすがに、私の手には余るものだったから。」


ノエルの耳には、執事長とパトリックの会話が入ってこなかった。

……ずっと前から、胸の奥で考えていたことがある。


『パトリック様と距離を置こう』


ノエルは、パトリックの好意をいまいち信じきれていなかった。


自分専用の家具を買ってくれた。

学園へ通っていいと言ってもらえた。

――笑顔でいろと言ってもらえた。


傍から見れば、好意にしか見えないのだろう。

でも、“契約上の婚約者”だから、表面上そう取り繕っているだけなのでは?

そんな考えが、頭の中をぐるぐると巡り続けていた。


自分なりに『私は、心の底から貴方をお慕いしています』と伝えているつもりだった。

それに返されるものは、行動だけ。

どれもパトリックの感情が、見えてこない気がしていた。


借り物競走で、爪に口付けをしたのだって、みんなに見せる為だけのもの。

上辺だけの演技なのでは?

……そう思うと胸が苦しくなる。


――私はいつから、こんなにも我儘になってしまったんだろうか。


契約上の関係なのに、心まで欲しいだなんて――


「――ル。――ノエル?」


名前を呼ばれ、ハッとする。

パトリックの心配そうな顔が、目の前いっぱいに広がっていた。


「大丈夫ですか?」

「……だっ、だいじょうぶれふ。」

「うーん、大丈夫じゃなさそうですね。」


近い。

目の前。

至近距離。


――こつん。


「熱はなさそうですが、無理をしないでくださいね。」


ノエルの前髪をかき分けて、自分のおでこをくっ付けるパトリック。


「あれ?熱が上がった……?」


『離れよう』

決意を固めたのに、ぐらぐらと揺らいでしまう。

膝の上で、ぎゅっと拳を作る。

「本当に、大丈夫です」と少し顔を下に向ける。


心の右側では、

私を、見ていてくれた。

心配してもらえて、嬉しい。

もしかして、パディ様も同じ気持ちなのでは?

そんな期待が溢れている。


しかし、心の左側では、

パトリック様は、洞察力が優れてるから。

煩わしく思ってるかしら?

契約上、仕方なく心配そうにしているだけなのでは?

嫌な気持ちがじわり。

心全体に染み込んでいく。


心が全部、不安で塗り潰される前に、早く離れなければ。


「ノエル……私ね、とても嬉しかったんです。」


パトリックの言葉に、顔を上げる。


「最初、うちに来た時のノエルは、自分の気持ちを出さなかった。」


白い肌は赤く色付き、目はうっとりと細められていた。

ノエルの心拍が駆け足になっていく。


「最近、気持ちを隠さなくなって、今日ついに、大勢の前で自分の気持ちを出してくれた。」


膝の上にあった拳を、パトリックは両手で自身の胸元まで近づけた。


「しかも、それが私に対する好意。」


触れたパトリックの胸元から、自分と同じ速度の鼓動を感じた。

顔が熱くなり、首筋に汗が伝う。



「愛さずにはいられないじゃないですか。」



パトリックが、ノエルの耳たぶを少し食む。

気温のせいか、恥ずかしさのせいか。

ぐつぐつと頭が煮だっている。


さっきまで不安が嘘のように吹き飛んでいた。

“愛さずにはいられない”

頭の中で、何回も木霊する。


『疑うわけではなかったのです、でも、ありがとうございます』

頭の中では、確かに言えていた。

しかし、自分の耳には、自分の声が聞こえずにいた。


「ノエルは本当に、魚の真似が好きね?」


くすくすと笑いながら、席に戻ろうとしたパトリック。

その時、誰かが近づいている音が聞こえた。


「パティ、一緒に食べよ……ッこの痴女め!ついに本性を現したなっ!?」


パトリックが、ノエルの手を自身の胸に当てている現場を見たアーリヤ。

ノエルを指差し、騒ぎ立てる。


「お邪魔だったか?」

申し訳なさそうな顔をしながら、カイルが後からやって来た。


「おい、カイル。ちょっと下世話じゃないか?」

半目でカイルを見ながら、「うるさいぞ」とアーリヤを静止するノア。


「我が赤薔薇に、我が国の料理を振る舞いたくてな!」

ヘーレーはパチンと指を鳴らし、従者たちにクローシュを持ってこさせる。


四人用のテーブルに、六人がぎゅうぎゅうに座る。

さっきまでの空気は、もう無くなってしまった。

“あれが美味しい”

“そっちも取ってくれ”

賑やかな昼食時。


パトリックは、右手でカップを持ち、

ノエルは、口を左手で押さえて、小さく笑う。


二人は反対の手を、テーブルの下で手を握りあっている。

それを知っているのは、従者たちだけであった。



注目度ランキング、25位と18位ありがとうございます!


星、評価、レビュー、感想ありがとうございます!

大変励みになっております!

引き続き、どうかよろしくお願いいたします!

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