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パトリック・ブルックスの体面‐二


女子生徒の搬送も終わり、競技開始の合図がなされる。


『よーい、』


張り詰めた空気。

一瞬の静けさ。


――パンッ

レーンの外に立っていた先生が、魔法杖ウォンドを空に向けて、光の球を放つ。


一斉に砂を蹴る音が、校庭いっぱいに鳴り渡る。


走り出しは順調なパトリックとラズ。

ラズは頭の中で、『いちっ、にっ』と掛け声をかけて走ることに集中していた。


「こんな時で悪いんだけど、“ちょっとした”頼み事があるんだけど。」


突然、パトリックに声をかけられ、ラズは思わず「ふぇあ?!」と変な声が出てしまった。


「ラ、ラズのご用ですかー?パトリック様が、直々に頼み事だなんて恐れ多い……」


階級の都合上、はっきりと断れない。

――ので、謙遜しているのを装う。

ラズは、もごもごと断りの言葉を選んでいた。


「“私、ベリーの中ではラズベリーが好きなの”」


その言葉を言った途端、

わたわたしていたラズの表情が、スっと貼り付いた笑顔に変わった。


「あー、……どちらで、その“合言葉”を?」


「ふふっ!……とても“親切な方”が教えてくれたの。情報屋さん?」


パトリックは、目を三日月に細めて、いたずらっ子のように笑みを浮かべる。

触らぬ神になんとやら。

ラズは心の中で、『得意先にしか知らせてないはずなのに』と少し悪態をつき、パトリックに聞き返す。


「その合言葉が知れるんなら、ラズなんて無用だと思うんですけどー?」


「確かに、私の部下も優秀だけど……欲しい情報が手に入らなきゃ意味がないの。」


走る速度が少し緩まる。


「さっさと本題に入るわ。聖女と“あの先生”の情報を寄越して。」


パトリックの口から、先生の名前が耳打ちされる。


「……“あの先生”を、ですか?」


教室内で、数人の取り巻きを囲って、時折おかしな事を口走る聖女と――

至って普通の先生を、どうして?と聞き返そうとした時だった。


「先に行くよ、パティ?」


パトリックとラズのすぐ後ろ。

追いついてきたであろう、爽やかな笑顔のアーリヤ。

――と、アーリヤの隣でゼェハァと息を荒らげ、「し、死ぬ……」と呻くノアが二人を追い抜かしていく。


「あや!抜かされちゃいましたよー!いいんですか?ブルックス様ー?」


パトリックとアーリヤたちを、交互に見るラズ。

右の口角だけを上げて、パトリックは不敵な笑みを浮かべる。


「個人でも一位を目指したかったんですが、そもそも足の長さに差があるので。……それに、そろそろ来る頃合いなので。」


「来る頃合い?」とラズが首を傾げる。

後ろからドドドドと、何かが砂埃を巻き上げて、こちらに迫ってくる。


「先に行ってるぞ、パット!」


「ええ、すぐ追いつきます。」


砂埃の合間から見えたのは、赤胴色の髪だった。


「え、エリオ様……!?」


ラズは、髪色と声でカイルだろうと判断した。

……カイルは、ペアの先輩の腰を支えて、走っていた。

あれは、反則にはならないのだろうか?

そんな疑問が頭を過ぎる。


「じゃあ私たちも、ゴールに急ぎましょうか。」


パトリックはそう言うと再び走る速度をあげた。

慌ててラズも、歩幅を合わせる。


その数秒後。


――パァンッ


ゴールの合図が鳴った。


一位は――カイルと三年生の先輩。

二位が、アーリヤとノア。

三位が、パトリックとラズだった。


―――

「じゃあ、よろしくお願いしますしますね。」


パトリックはラズの手にソッと“何か”を握らせ、その場から去っていった。


「どうかしたか、妹よ。」


「下姉者、なにかあったー?」


姉のクランと妹のブルーが、心配そうにラズの顔を覗き込む。

ラズが、顔を上げる。

その顔は――


キラキラと目を輝かせ、やる気に満ちていた。


「クラン姉者!ブルー妹者!仕事依頼が来ましたよー!」


「そうか仕事か」と、落ち着いているグランと、

「えー、おしごとぉ?」と、めんどくさそうなのを隠さないブルー。


二人の様子を見て、フッフッフッと人差し指を横に振るラズ。


「なんと、前報酬がこちらっ!」


パトリックに握らされたものを、姉妹たちに見せる。


「こっ、これは……アーリヤ王子とノア様の横並び写真!?激レアなノアの笑顔!しかも明らかに、お二人に頼んで撮らせてもらったものではない!?」


「こっちは、カイル様のお着替え場面(こちらも隠し撮り)じゃん!どうやって手に入れたの!?下姉者!!」


二人から写真を奪い取り、ラズは懐に仕舞う。


「……素敵な、お得意様ができたですよー!」

例え、仕事仲間兼、身内だとしても顧客の情報は漏らさない。

それが家訓でもあり、自分の信条でもあるからだ。

姉妹たちも、それは理解している。


「お客様は、聖女の情報と“あの先生”の情報をご所望です。張り切って調べましょー!」


「「「おー!」」」


聖女の、情報明け渡し期限は、卒業式まで。

先生かれ”の情報の期限は、なんと今日中。

人使いが荒いと思いつつも、三姉妹は競技大会の合間に仕入れをしていく。


――この時はまだ、“彼”の正体を、

こんな形で知ることになるとは、思ってもみなかった。



クラン・ベリー

ラズ・ベリー

ブルー・ベリー

我ら、ベリー三姉妹(決めポーズ)(盛大な爆発)

とかやりたかったのに


星、評価、レビュー、感想ありがとうございます!

大変励みになっております!

引き続き、どうかよろしくお願いいたします!

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