表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
40/103

パトリック・ブルックスの遭遇‐九


「レリーフって、最下層の部屋に置いてあるんだとばかりだと思ってましたけど……」


核を壊したあと、ゴーレムは光の粒となって消えてしまった。

その跡に残されていたのは、『レリーフ』と『手鏡』だった。

パトリックは、砂利まみれのアイテムを拾い上げた。

粉塵が落ち着いた時を見計らって、全員が彼女の元へ集まり出す。


「パディ様っ!ご無事ですか!?」

「ノエルの防御魔法のおかげで、怪我一つないですよ。」

駆け足でパトリックに近寄り、外傷の確認をするノエル。

彼女の言葉通り、怪我ないことを確認すると、思わず抱きついてしまった。


「こんっの痴女めッ!僕のパティから離れろッッ!!」

「アッハッハッ!婚約者とのあつい抱擁を、邪魔してやるなよ、アーリヤ!」

「まったく……攻略達成の余韻に、少しは浸らせろよ。」


いつものやり取り。

誰もパトリックが、失敗するなんて思っていなかった。


「お疲れ様です!と、言いたいところですが、まだ終わってないですよ。」

にこにこと笑いながら、歩いてくるペイジ先生。


「えっ、まだ何かあるんですか?」

「もちろん!」

張り詰めた空気の中、先生の次の言葉を待つ。


「――学園に帰るまでが、地下迷宮探索ですよ!」


全員が、胸を撫で下ろす。

ホッと空気が和らぐのがわかった。


……その束の間、影を落とす少女が一人。


「それって、“真実の光鏡”……?」


まるで幽霊のように佇んでいたテイラーが、パトリックの手にある『手鏡』を指さす。

くぐもった声のせいで、パトリックにはよく聞き取れていなかった。


「それがあれば……ッ!」

少し焦ったようなテイラーが、つかつかとパトリックに近づいていく。

「それさえあれば、簡単に好感度が上がるのっ!!」


なりふり構わずといった様子で、手鏡をパトリックの手ごと掴み取る。


「なんですか、いきなり……!」


テイラーの行動の意図がわからず、身体が動かなかった。

しかし、手鏡を奪われてはいけないと、更に力を込めて抱え込む。


「ッ……わたしの邪魔をしないで!“パトリシア”・ブルックス!!」


――何故テイラーが、“パトリシア”の名前を知っているのか。


頭が真っ白になり、ほんの少しだけ力を抜いてしまった。

そのせいで勢いよく抜けた手鏡は、テイラーの手からもすり抜け、宙を舞う。


目線だけで、手鏡を追う。

視覚の端で、テイラーが既に受け止めようと、手を伸ばしていた。

崩れた体勢から、彼女に追いつくのは難しい。


追いかけるのを諦めて、手鏡が落ちるであろう場所を確認する。

――そこにいたのは、


「我が前に立ちはだかる、これは一体――」


不思議そうな顔で、空に浮かぶ手鏡を見つめていた、

……へーレーだった。


彼の両手にポスッと収まり、なんの疑いもなく手鏡を開いた。


突如としてへーレーの足元から、魔法陣が浮かび上がる。

白い光が、彼を包み込んだ。

その直後、鏡にピシッとヒビが入り、そのまま割れてしまった。

そして、手鏡は最初から存在していなかったかのように、姿を消していた。


「ああ、あぁ……」


テイラーが、絶望したような顔で、地べたに座り込む。

彼女のことも気になるが、身体への変化がないか、へーレーに確認をする。


「へーレー、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。なんの問題もないぞ、我が赤薔薇よ。」

「……貴方、そんな“普通”に話せるんですか……?」


さっきまでの“独特な言い回し”ではない。

まるで別人のように話すへーレーに、違和感を覚えるパトリック。


「話せているのか……!我はちゃんと、話せているか!?」

「え?……まあ、はい。」

興奮気味のへーレーに、肩を掴まれ揺さぶられる。


「ペアだったからといって、僕のパティに気安いぞ。」

アーリヤがパトリックの腰を、自身へと引き寄せる。

へーレーを見る瞳は、人を殺せそうなほど鋭いものだった。

――が、そんなことは気にもせず、「暑苦しい、離れてください。」と王子を引き剥がすパトリックだった。


―――

「――という訳で、呪いのせいで我は、他者との意思疎通が困難な状態だったのだ。」


まだ若干、詩的な言い回しが抜けきれていないが、へーレーが自身に起きたことを、説明してくれた。


「呪いだとは思ってもみませんでしたが、呪いが解けて何よりです。」

にこりと愛想良く笑うパトリック。

へーレーは、嬉しそうに顔を輝かせた。


「(パディ様のあの笑顔……交渉しごと用の顔だわ……)」

数ヶ月の間に培われた経験値が、ノエルにそう告げる。

冷や汗が背中を伝う。


「身体を張って我を守ったばかりか、解呪までしてしまうとは、どのような礼を尽くせばいいか……」

「でしたら、お構いなく。こちらの方で、謝礼品を指定させていただいて――」


「だから、我の妃になってくれ!」

腰に手を当て、にぱっと音が付きそうな笑顔を浮かべるへーレー。


「「「は?」」」

アーリヤとペイジ先生を除く、全員が声を揃える。


「あ、謹んでお断りします。――イグニス王国の第二王子、へーレー王子。」


どこまでも、通常通りのパトリックだった。


地下迷宮編終わり!


星、評価、レビュー、感想を教えもらえますと大変、喜びます!

励みにもなるので、どうかよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ