表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/64

パトリック・ブルックスの遭遇‐九


「レリーフって、最下層の部屋に置いてあるんだとばかりだと思ってましたけど……」


核を壊したあと、ゴーレムは光の粒となって消えてしまった。

その跡に残されていたのは、『レリーフ』と『手鏡』だった。

パトリックは、砂利まみれのアイテムを拾い上げた。

粉塵が落ち着いた時を見計らって、全員が彼女の元へ集まり出す。


「パディ様っ!ご無事ですか!?」

「ノエルの防御魔法のおかげで、怪我一つないですよ。」

駆け足でパトリックに近寄り、外傷の確認をするノエル。

彼女の言葉通り、怪我ないことを確認すると、思わず抱きついてしまった。


「こんっの痴女めッ!僕のパティから離れろッッ!!」

「アッハッハッ!婚約者とのあつい抱擁を、邪魔してやるなよ、アーリヤ!」

「まったく……攻略達成の余韻に、少しは浸らせろよ。」


いつものやり取り。

誰もパトリックが、失敗するなんて思っていなかった。


「お疲れ様です!と、言いたいところですが、まだ終わってないですよ。」

にこにこと笑いながら、歩いてくるペイジ先生。


「えっ、まだ何かあるんですか?」

「もちろん!」

張り詰めた空気の中、先生の次の言葉を待つ。


「――学園に帰るまでが、地下迷宮探索ですよ!」


全員が、胸を撫で下ろす。

ホッと空気が和らぐのがわかった。


……その束の間、影を落とす少女が一人。


「それって、“真実の光鏡”……?」


まるで幽霊のように佇んでいたテイラーが、パトリックの手にある『手鏡』を指さす。

くぐもった声のせいで、パトリックにはよく聞き取れていなかった。


「それがあれば……ッ!」

少し焦ったようなテイラーが、つかつかとパトリックに近づいていく。

「それさえあれば、簡単に好感度が上がるのっ!!」


なりふり構わずといった様子で、手鏡をパトリックの手ごと掴み取る。


「なんですか、いきなり……!」


テイラーの行動の意図がわからず、身体が動かなかった。

しかし、手鏡を奪われてはいけないと、更に力を込めて抱え込む。


「ッ……わたしの邪魔をしないで!“パトリシア”・ブルックス!!」


――何故テイラーが、“パトリシア”の名前を知っているのか。


頭が真っ白になり、ほんの少しだけ力を抜いてしまった。

そのせいで勢いよく抜けた手鏡は、テイラーの手からもすり抜け、宙を舞う。


目線だけで、手鏡を追う。

視覚の端で、テイラーが既に受け止めようと、手を伸ばしていた。

崩れた体勢から、彼女に追いつくのは難しい。


追いかけるのを諦めて、手鏡が落ちるであろう場所を確認する。

――そこにいたのは、


「我が前に立ちはだかる、これは一体――」


不思議そうな顔で、空に浮かぶ手鏡を見つめていた、

……へーレーだった。


彼の両手にポスッと収まり、なんの疑いもなく手鏡を開いた。


突如としてへーレーの足元から、魔法陣が浮かび上がる。

白い光が、彼を包み込んだ。

その直後、鏡にピシッとヒビが入り、そのまま割れてしまった。

そして、手鏡は最初から存在していなかったかのように、姿を消していた。


「ああ、あぁ……」


テイラーが、絶望したような顔で、地べたに座り込む。

彼女のことも気になるが、身体への変化がないか、へーレーに確認をする。


「へーレー、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。なんの問題もないぞ、我が赤薔薇よ。」

「……貴方、そんな“普通”に話せるんですか……?」


さっきまでの“独特な言い回し”ではない。

まるで別人のように話すへーレーに、違和感を覚えるパトリック。


「話せているのか……!我はちゃんと、話せているか!?」

「え?……まあ、はい。」

興奮気味のへーレーに、肩を掴まれ揺さぶられる。


「ペアだったからといって、僕のパティに気安いぞ。」

アーリヤがパトリックの腰を、自身へと引き寄せる。

へーレーを見る瞳は、人を殺せそうなほど鋭いものだった。

――が、そんなことは気にもせず、「暑苦しい、離れてください。」と王子を引き剥がすパトリックだった。


―――

「――という訳で、呪いのせいで我は、他者との意思疎通が困難な状態だったのだ。」


まだ若干、詩的な言い回しが抜けきれていないが、へーレーが自身に起きたことを、説明してくれた。


「呪いだとは思ってもみませんでしたが、呪いが解けて何よりです。」

にこりと愛想良く笑うパトリック。

へーレーは、嬉しそうに顔を輝かせた。


「(パディ様のあの笑顔……交渉しごと用の顔だわ……)」

数ヶ月の間に培われた経験値が、ノエルにそう告げる。

冷や汗が背中を伝う。


「身体を張って我を守ったばかりか、解呪までしてしまうとは、どのような礼を尽くせばいいか……」

「でしたら、お構いなく。こちらの方で、謝礼品を指定させていただいて――」


「だから、我の妃になってくれ!」

腰に手を当て、にぱっと音が付きそうな笑顔を浮かべるへーレー。


「「「は?」」」

アーリヤとペイジ先生を除く、全員が声を揃える。


「あ、謹んでお断りします。――イグニス王国の第二王子、へーレー王子。」


どこまでも、通常通りのパトリックだった。


地下迷宮編終わり!


星、評価、レビュー、感想を教えもらえますと大変、喜びます!

励みにもなるので、どうかよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ