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パトリック・ブルックスの今世‐四


軽く身だしなみを整え、対面にアーリヤ王子を、横にノエルを座らせるパトリック。

王子はまだ、ノエルに向かって威嚇をしていた。


「知ってはいると思いますが、念のため紹介しますね。こちら、アーリヤ第一王子。いわゆる幼なじみってやつですね。」


パトリックはノエルに、王子の紹介をする。


「(王族とも交流があるとは聞いていたけど、王子と幼なじみって、まるで物語みたい)」


ノエルは立ち上がり、恐る恐るお辞儀をする。


「王子、こちらが私の婚約者になったノエル・コールマン嬢です。」

アーリヤにもノエルを紹介する。

しかし王子は、にこりともせず足を組み、上から下へとノエルを見る。


「僕は認めないぞ。」


ノエルの身体がぴしりと固まる。

「(認めるも何も、パトリック様からのお声がけなのに……)」

パトリックはため息をつきながら、ノエルに「座っていいですよ。」と声をかける。


「王子の認証は必要としてません……いつまで求婚ごっこを続けるおつもりなんですか?

王子が八歳の時からずっと断ってるじゃないですか。……前に王宮に出向いた時、王妃様にも『婚約してくれ』って泣きつかれて大変だったんですよ。」


「(そのまま“はい”と頷いてくれれば良かったのに……ま、そんな素直じゃないところもかわいいんだけど、パティは!)」


「(王妃様に泣きつかれてって……よく絆されないな、パトリック様……)」


「なんですか?二人揃って私を見て。」


衣服は整えたし、顔に何かついているだろうか?

頬をぺたぺたと触っても、特に何もないように思える。

パトリックは、喉を潤すためにカップに口を付ける。


「というか、どこで私の婚約者探しを知ったんですか?王子にバレないよう、情報規制してたのに。」


「もちろん愛の力さ!と、言いたいところだけど、君の部下たちは、本当に優秀で苦労したよ!でも、ブルックス領の郵便局を民生化してくれてたおかげで見逃さずに済んだよ!」


思わず舌打ちをしそうになった。

わざわざブルックス名義の投書を、しらみ潰しに調べあげたらしい。

その熱意を、次期国王になるための準備に当てて欲しいものだ。

ノエルをチラリと見ると、顔を青くしていた。

こんなのが王子で引いているのだろうか?

……私宛に寄越した手紙もバレている、と気づいてしまったのか。

どちらだろう?

まあ、手紙の内容は知らないだろうし、知っていたら王子はノエルをもっと敵視しているだろうし。

そんなことを思いながら、再びお茶をすする。


「私の婚約者を見に来たわけではないのでしょう、王子?何か用事でもありましたか?」


さっさと本題に入れと王子に目線を投げる。

それに気付いた王子は、にこにこと嬉しそうに一枚の紙をテーブルの上に出す。


「なんですか、これ?」

パトリックとノエルが紙を覗き込む。


「一学年の授業内容終了証明書だよ。」


「は?」


「パティ今年、入学でしょ?でも、既に公爵の仕事をこなしているパティに、一学年の授業なんて無用の長物だろ?」


「端的に。」

少しイラつきながら、王子に問いただすパトリック。


「入学したら即二年生ってこと!」


この王子は毎度、勝手なことをしてくれる!

こめかみに青筋が浮かぶ。

幼少期から親切に見せかけた迷惑に、いつも振り回されている気がする。

その分、私も間接的に王子の権力を“借りている”ので、おあいこだと勝手に思っているが。


授業はおそらく王子の言う通り、ついていけると思う。

――ふと、夢の中ではあんなに勉強を嫌っていたのに、私は今、授業についていけると思った。

こればっかりは、王子と他の幼なじみたちに感謝をしなくてはならない。


しかし、同学年から自分に益なのか不利益になる人物なのか、見定めをする時間が一年、減らされたことは許せない。

……予定人数より少し多めに、直属の部下を配置するしかない。

パトリックは嘆いても仕方ないと、思考を切り替える。


「大変ありがた迷惑な配慮に私、涙が出そうです。」


包み隠さず嫌味をぶちまけるパトリック。


「その涙を拭わせてくれるのかい?きっと天使パティの涙は甘いんだろうな。」

胸焼けを起こしそうな甘く蕩けた声色で、王子は囁く。


「キッ……」

「今、私の名前をとてつもなく気持ち悪い感じで呼びました?」


王子は、にこにこと笑うだけであった。

こんなのが次期国王だなんて、世も末だなと思いつつ、先ほど「キッ」の次の文字を飲み込んだであろうノエルを盗み見る。

引きすぎて、感情が抜け落ちたような顔になっていた。

私は昔からこんな王子だったから慣れているが、知らない人からすれば冷めるよなと考えながら、ぬるくなったお茶を口に含む。


「……仕方ありません、二年生から学園生活を始めるとしましょう。」


王子が“ぱあぁ”と明るくなる。

さっきまで引いていたのに「ゔっ?!」という奇声を発しながら、ノエルの頬が少し赤らみ、小声で話しかけてきた。


「(アーリヤ王子って中身は“アレ”ですけど、パトリック様と遜色ないほど顔が整ってますよね……)」


そうか、アーリヤ王子は顔がいいのか。

彼の顔をまじまじと見る。

……普段と変わらない、あるはずのない犬の耳と大きく揺れているしっぽが見える。


幼少期の頃から変わらない。

――いつもの幻覚こうけいであった。



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