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LV 3

 さて、健一郎達が新たな守護漢字を手に入れている頃、その様子を森の陰から窺う者達が居た。

「お前ら、見たか?」

「おうよ。どうやら、あいつら最近始めたばかりの奴らみたいだな」

「どうする? 今すぐ襲って守護漢字奪っちゃう?」

「まぁ待て。見た所、奴らクエストの最中のようだ。確かこの山のボスは熊狩りのポチだったな。ここは焦らず待って、奴らがポチと戦って疲弊しきった所を襲うんだ」

「お前は相変わらず用心深い奴だな。そこまでしなくても、あんなLVの低そうな奴らなんて俺様一人でも十分だぜ」

「馬鹿ね。だからあなたは単細胞って言われるのよ。このゲームで重要なのはLVじゃなくて言霊なの。舐めてかかると初心者相手でも痛い目見るわよ」

「ふん、ろくな漢字を持っていないくせに偉そうな事いいやがって」

「なんですって! あんたの漢字だって、ごり押し一辺倒の頭の悪そうな物ばかりのくせに!」

「なんだと!」

「うっせぇんだよ、てめえら! あいつらを殺る前に、この俺様にぶっ殺されたいのか?」

 リーダー格の男に怒鳴られ、怯えた様子の二人はすぐに口を閉じた。

「とにかくだ。俺達はここで奴らの様子を窺う事にする。そして、奴らが戦いで弱りきった所を一気に叩くんだ。いいな?」

「わ、わかったぜ……」

「わ、わかったわよ……」

 男は、獲物を狙うかのような鋭い眼光で健一郎達を見つめた。

「さあて、あいつら一体どうやって戦うのか見物だな。せいぜい頑張ってくれよ……」


◆◆◆◆◆◆


 山頂の岩場についた健一郎達は辺りを見渡す。だが、熊狩りのポチは見当たらない。

「いねえな……」

「油断しちゃ駄目よ。雰囲気的に、絶対ボス戦が近いわ」

 岩場の中央辺りまで移動した時、突然流れていたBGMが変化した。

「この緊迫感ある曲は……ボス戦の曲!」

「居た! あそこ、熊狩りのポチだ!」

 飛鳥が指差す方向を見ると、切り立った岩の上に筋肉ムキムキのライオンくらいの大きさをしたドーベルマンがこちらを見下ろしていた。ポチのステータスが表示される。


 ■モンスター名  熊狩りのポチ

 ■モンスターLV 10

 ■HP      不明

 ■攻撃力     30

 ■守備力     30

 ■敏捷性     150

 ■守護漢字    『牙』『爪』『俊』『足』

 ■特徴      野犬のリーダー。野犬の3倍の能力を持つ。


「おいおい。あれの、どこがポチだよ。まるでライオンじゃねぇか……」

「ワオオオオオオオオン!」

 ポチの遠吠えが辺りに響き渡る。すると、岩場の影から次々と野犬が姿を現した。

「囲まれたわ!」

「落ち着いて! とりあえず、みんなで固まってフォーメーションを組むんだ!」

「了解!」

 皆が飛鳥の元に集まる。と、その時、突然静香の頭上に『狩』の文字が浮かび上がり、続けて『人』の文字が浮かび上がった。

「狩人の術……」

 静香がボソリと呟く。すると、パーティ全員に黄色いオーラが浮かび上がり、続けて画面中央にウィンドウが表示された。


 ■狩人の効果

  野生動物に対し、命中率50%アップ。


「もしかしてあなた、今度は熊狩りのポチから『狩』の漢字を使ったの?」

 コクリと静香が頷く。

「やるじゃない! これなら、素早いこいつらにも攻撃が当たるわ」

 弓枝が静香に向かってグッジョブと親指を突き出した。静香も無表情に親指を突き出す。どうやら褒められて喜んでいるようだ。

「よっしゃ、いくぜぇ! みんな、サポートを頼んだぞ!」

「任せといて!」

 健一郎と飛鳥が群がる野犬に向かって突っ込んで行く。その後方から、先ほど手に入れた石弓を使い、タリーと弓枝、そして静香が野犬に向かって一斉に矢を放った。矢は見事に突き刺さり、野犬達が次々と倒れていく。LVが上がった事と、石弓の攻撃力が思ったより高いようだ。

 弓枝達の攻撃に怯んだ野犬達の隙を付き、飛鳥と健一郎が真正面からバッサバッサと木刀で野犬達を叩きのめしていく。一瞬で野犬達は全滅した。残るのは熊狩りのポチだけだ。

「もしかして、私達って結構強い?」

「油断しちゃ駄目……」

 調子に乗る弓枝を静香が諌める。弓枝はペロリと舌を出した。

「後はポチだけだ!」

「あいつは俺達に任せとけ! 行くぜ、飛鳥!」

「うん!」

 健一郎と飛鳥が一斉にポチに向かって切りかかり、さらに援護する弓枝達の矢が頭上から降り注ぐ。四方八方からの逃げ場の無い攻撃に、健一郎達は勝利を確信した。だが、ポチの頭上に『俊足』の文字が浮かんだ。


 ■俊足の効果

  敏捷性と移動速度が大幅に上昇する。


「食らいやがれ!」

 健一郎と飛鳥の斬撃が、ポチを真っ二つに切り裂いた。だが、ポチの姿が一瞬にして消える。二人が切りつけたのは、ポチが残した残像だった。

「ど、どこに消えた?」

 キョロキョロと辺りを見渡し、健一郎達は消えたポチの姿を探している。その時、静香の後ろに黒い影が突如音も無く現れた。その影に気がついた弓枝が驚きながら叫んだ。

「あ、危ない静香! 後ろ!」

「え?」

 静香が振り向くと同時に、ポチの鋭い爪が彼女を容赦なく切り裂いた。

 叫び声をあげる間も無く、静香はその場に倒れた。

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