第二章 コトダマ・クエスト
次の日の昼休み、洋一と宏、そして本多の三馬鹿トリオは昨日のコトダマ・ワールドの話で盛り上がっていた。
「すげー面白いな! コトダマ・ワールド! さすが宏が勧めてくるだけあるぜ!」
「へへっ。任せてよ。昨日は、母ちゃんの乱入で強制終了食らっちゃったけど、明日は土曜日だし、母ちゃんは友達の結婚式とかで仙台に行っているからさ、夜通し遊べるよ」
「宏の母ちゃんは怖いからなぁ」
本多は、宏の母ちゃんの顔でも思い浮かべているのか、ブルっと身震いしている。きっと、過去のあの『炒り卵事件』の事を思い出しているのだろう。あれは確かに恐ろしい事件だった。
「ちょっとあんた達、聞いたわよ」
その時、コトダマ・ワールドの話題で盛り上がっていた洋一達に、二人組の女子が話しかけてきた。クラスメイトの森田慶子と、今野美香だ。
「あんた達、コトダマ・ワールドやっているんですって?」
来て早々に話を切り出した慶子に、洋一達が驚く。
「なんで、お前がそのゲームを知っているんだ?」
「友達から聞いたのよ。あんた達がコトダマ・ワールドをやっているってね。実は、私達も昨日からやっているのよ」
「マジか!」
パチリとウィンクをし、慶子が前かがみに指を立てる。
「も、もし良かったら、今日にでも一緒に遊ばないかなぁと思って……」
慶子の背中に隠れながら、美香が恥ずかしそうに小声で呟く。
「うん、いいよ。冒険に出るなら人数は多い方が楽しいし、それに熟語も集まりやすいしね。二人はどう?」
「別にいいぜ」
「異議無し」
宏の提案に、洋一と本多も頷いた。
「よーし、決まりね! じゃあ、帰ったらメールで連絡するからさ。旭川広場に集合ね!遅れるんじゃないわよ!」
そう言って、慶子は洋一の背中を思いっきり引っ叩いた。突然の攻撃に、洋一はゴホゴホと咳き込む。
むせる洋一を見て、慶子は豪快に笑いながら席に戻っていく。その後を美香がパタパタと付いて行った。
「あいたたた……。あいつ思いっきり叩きやがって。本当、乱暴な女だぜ」
「女版ランボー、森田慶子」
本多がボソッと呟く。その言葉に、洋一はプッと噴出した。
ポニーテール姿がその象徴かのように、行動的で活発な性格をしている慶子は、女子の中でもリーダー的存在だ。反面、地味なボブカットの髪型に、引っ込み思案であまり喋らない性格の美香。この二人が、何故いつも一緒で仲が良いのかは謎である。なんでも二人は幼馴染らしいが……。
「そう言えば、あの二人、俺たちがコトダマ・ワールドをやっている事を友達から聞いたって言っていたけど、お前ら話した?」
洋一の質問に、宏と本多は首を横に振る。
「ふーん、一体誰だろうな。まぁ、別にいいけどさ」