第三章 新たな機能
月曜の朝。
朝のホームルームが終わり、次の授業が始まるまでの間、寝不足気味の洋一は大きなあくびをしながら机に突っ伏していた。
ふぁああ~。やれやれ、昨日もついつい遅くまで遊びすぎたぜ。こりゃ今日の授業は良い子守唄になりそうだ。
弾打団との戦いの後、康子を加えた健一郎達は他のクエストも順調にクリアし、それに伴って熟語もかなり集まってパーティ全体のLVが底上げされていた。
ちなみに康子と言えば、相変わらず夜遅くまで遊べなかったが、土曜日、日曜日の昼間には一緒にパーティに参加し、今ではすっかり他のメンバーと打ち解けていた。……ある一人を除いて。
ぼんやりと、洋一は教室を眺める。その視線の先には、他の女子と一緒に楽しそうに話している慶子の姿があった。
それにしても、なんで慶子は康子ちゃんを目の仇にするんだろ?
康子は誰かがピンチに陥る度に健一郎と一緒に『健康』の言霊で献身的に助けていた。だから感謝される事はあっても恨まれるような事はしていないはずだ。だが、回復をしてもらう度に、慶子の機嫌は悪くなっていくように見えた。結局、ゲームを遊んでいる最中、慶子は康子と一度も口をきかなかったのだ。
何が気に入らないんだろうなぁ。女心は、よーわからんわ。
ボーッと慶子を見つめる洋一。その視線に気がついた慶子は、美香の手を引きながら嬉しそうに洋一の下へ駆け寄ってきた。
「おはよ、洋一!」
――バンッ!
「いってぇ!」
来るなり早々背中を思いっきり叩かれ、洋一は飛び上がる。
「いきなり何しやがる!」
「何って、おはようの挨拶じゃない。あんたが眠そうに見えたから起こしてあげたのよ。感謝しなさい?」
「誰が感謝するか! ったく、思いっきり叩きやがって……。少しは手加減しろよ、この乱暴女!」
「少し叩かれたくらいでギャーギャー騒ぐんじゃないわよ。男のくせにだらしないわねぇ」
「お前こそ、もっと美香を見習うなりして女らしくしやがれ! なぁ?」
洋一に話を振られた美香は、顔を真っ赤にしながら慶子の背に隠れる。
「見ろ、これが正しい女の子の反応だ。女の子は恥じらいってもんが必要なんだよ」
「うっさいわねぇ。美香は美香、私は私でしょ?」
「なにやら楽しそうだね」
騒がしい洋一達のもとに、宏と本多がやってきた。
「お前らからも言ってやってくれよ、この乱暴女にもっとおしとやかにしろってさ」
「私のどこが乱暴女だって言うのよ! ねぇ二人とも、私ってば普通よねぇ?」
引きつった笑みを浮かべながら、慶子はバキバキと指を鳴らし宏と本多を見つめる。二人はブルブルと震え上がりながらコクコクと頷いた。
「あ! そ、そう言えばさ! 言霊ワールドの事で新しい情報が手に入ったんだよ!」
話題を変えようと、宏が大きな声で言った。
「新しい情報って何さ」
「実は、今日から掲示板とメールシステムが導入されるんだって。今朝学校へ来る前にサイトをチェックしていたらトップ画面に告知されていたんだよ」
「掲示板? 掲示板って言うと皆であれこれ書き込める……」
「そう、その掲示板。この機能を使えばプレイヤー同士の情報交換が出来るようになるし、メールを使えばゲーム中に知り合った人同士で手紙のやりとりも出来る。これで、今まで以上にプレイヤー間の交流が盛んになるってワケだ」
「メールかぁ……」
洋一は、康子の事を思い浮かべた。
不特定多数の人間が遊ぶネットゲームの世界では、お互いの素性を知らないまま遊ぶ事は日常茶飯事である。だが、仲良くなれば個人的に連絡を取ったり、リアルの世界で会う事も出来る。洋一は、いつか康子のプレイヤーと会ってみたいと思っていた。この機能の登場は、康子ともっと仲良くなれるチャンスかもしれない。
「とりあえず、学校が終わったらまた広場に集合しよう。掲示板は、各町の広場に設置されるらしいからさ。僕たちの知らない情報が載っているかもしれない」
「さんせーい!」




