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第54話 Sideウィリアム


〈ウィリアム視点》




やっと魔王が封印された山に辿り着いた。ここまで……正直長かった。こんなに時間がかかるなんて誰も予想もしていなかったことだろう。


僕は自分の隣に居て同じ様に山を見つめている副隊長の方をチラリと見た。彼と目が合う。きっと僕達の気持ちは同じであるはずだ。


あれだけ大勢居た討伐隊はもうこの場に居ない。僕と副隊長、騎士が一人に聖騎士が二人。たったこれだけだ。あぁ、忘れていた。もう一人。この旅でなんの役にも立たなかった人物が居た。


聖なる力に頼りすぎだと言われたが、此処までの道中にこれほど多くの魔物に遭遇した意味を彼女は考えていない。誰が原因だ?と言われれば、皆は彼女を指差すだろう。そう、この現状の原因は彼女にある。それと……この僕に。




聖女が決まったあの日。もう少し彼女と話し合うべきだったと後悔する。


クラリス嬢が魔女の烙印を押され追放になったあの日の出来事は、全てが予想外の事だった。


誰もが聖女の決定より、魔女の追放に動揺し混乱した。


夜の宴はその混乱を払拭したい思いからか、皆、必要以上にふわふわと浮ついていた様に思う。それは僕も同じだった。ペースを乱された……と言えばそれまでだが、何となくアナベルにあの場を支配されてしまっていた。




今まで聖女候補者達とは上手くやれていると思っていた。もちろんアナベルとの関係だって悪くなかったはずだ。


だが、アナベルは聖女に決まったあの瞬間から、急に変わってしまった。聖女がいなければ魔王を封印出来ない。それはもちろんその通りだ。だけど何故王族までもが彼女に傅かなければならなかったのだろう。まるで彼女は既に自分が王妃になったかの様に振る舞った。……それもこれも僕が彼女に立場を理解させる為にしっかりと話し合わなかった事が原因だ。


聖女に選ばれる為に彼女達の顔色を窺うくせがついていた。僕は甘やかし過ぎたんだ。


この旅で僕はそれを痛感していた。




僕は周りを見渡す。少なくなった討伐隊。もうこれ以上減らす訳にはいかない。このままでは魔王の元に辿り着けるのは僕とアナベルの二人だけになってしまう。それだけは避けたい。


考え込んでいた僕の肩を副隊長が叩いた。




「殿下。万が一私達に何かあっても捨て置いて下さい。もう歩みを止めてはいけません。そんな時間、我々には残されていない」




「だが……っ!」




「怪我をし、一命を取り留めた者たちもどうなっているのかわかりません。此処までは連れて来なかったが……」


副隊長の言葉の続きは聞かずとも分かっていた。


魔物だらけの土地に置いてきてしまった討伐隊の皆。王都に帰らせる事も出来ず、かと言って側で守る事も出来ず。……見捨てたんだ。




「我々も同じ。殿下と聖女様をお守りする為に此処まで来ましたが、封印に我々は必要ない」


副隊長の言う事は最もだが、ここまでたくさんの仲間を失ってきた自分としては、簡単に頷けないものがあった。


何も言わぬ僕に、副隊長が痺れを切らす。




「殿下!非情にならなくてどうするのです!たくさんの国民が魔王の封印を待っています!御自分の使命を勘違いなさるな!」


発破をかけられてハッとする。そうだ……封印は国民の安全の為。多少の犠牲は仕方ない。だが……もしアナベルがもっと協力的であったなら……そう考えると居た堪れない気持ちになる。


そんな僕の気持ちに気付いたのか、副隊長は優しく僕の肩を撫でた。




「聖女を選んだのは貴方ではない。責任は大司教にあります」


その言葉にホッとした自分を同時に情けなく思った。


背後に馬車の扉が開く音を聞いて、僕は後を振り返る。


聖騎士の手を借りて、アナベルが馬車を降りてくる所だった。アナベルと目が合う。顔が歪みそうになるのを必死に堪えた。


アナベルの側に歩み寄ると、アナベルは不機嫌そうに僕を見た。




「此処からは馬車も馬も使えない。歩いて行こう」


僕がそう言うとアナベルはますます不機嫌そうに顔を曇らせた。




「歩く?此処を?」


アナベルは信じられないといった風に目を見開く。他に何処があると言うのだ。だが、僕はいつもの様に口角を少し上げる。嘘でも微笑めば、脳は笑っていると勘違いするのだそうだ。僕は今まで自分自身をそうやって騙してきたのだと、その時気付いた。




「到底その靴では此処を歩けない。それに履き替えてもらう。これは君の足を守る為でもあるんだから、拒否は出来ないよ」


聖騎士が彼女の足元に予め用意していた紐靴を置いた。彼女はそれを見て、ますます顔を曇らせた。


あぁ……僕はもう自分を上手く騙せないかもしれない。アナベルの顔を見て、僕は強くそう思った。







































































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