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第16話


「魔王を倒す?そんな事……一度も考えた事がありませんでした」




「いや……私も考えた事はなかったんですよ、今の今まで。でも、ふと……」




「魔王の力は強大で、封印が精一杯だったと、この国の歴史が語っています」




レオナ様は首を緩く振った。


『魔王を倒す』なんて大それた事を考える方が恐ろしいとでも言わんばかりだ。




「では……試した事もないのでしょうか?」


私の問にレオナ様少し考える様に首を傾げた。




「クラリス様……。封印に必要な物をご存知ですか?」




「えっと……『聖なる剣』ですよね?」




「そう。私ももちろん本の知識だけですが、その剣を扱えるのは王族のみ。その剣に聖女は聖なる力を纏わせて封印に使う……そう記されています」




「一応……その辺りは勉強しましたけど……」




「そうですね。聖女試験の筆記問題にも出ましたし。ただ、その剣は剣とは名ばかりで剣にあらず。実は鍵の様な物だと聞いた事があります」




「鍵……。では剣と言うのは……」




「もしかすると、この何百年もの間に剣という形を成さなくなったのかもしれませんね。先人達は最初は魔王を倒そうと思っていたのかもしれない。今のクラリス様の様に。しかし、剣ではない物で、どうやって魔王を倒します?」




「え?聖女が倒せば良いんじゃないですか?」


私が首を傾げると、レオナ様は驚くべき事を言った。




「実は……私、厩でクラリス様の力を見た時、驚いていたんです」




「私の力?」




「ええ。クラリス様は聖なる力を弓矢の様にお使いでしたね」




「はい。え?皆そうではないのですか?」




「アナベル様の力を直接見たわけではありませんが……私は違います。聖なる力を物質に変える力はありません。試験でも護衛の剣に聖なる力を纏わせて……それで斬る。或いは斬ってもらうのです。……まぁ、私にはどちらも出来なかった訳ですが」


私が厩で魔物を倒した事に……護衛が驚いていた理由が今分かった。




「でも……斬って貰うって……それって『魔物退治』の試験って言えるんですか?なんだか……納得いきません」




「その為に護衛が付いていたんですよ。聖騎士も。もちろん私も……きっとアナベル様も剣の扱いは一応習得はしています。でも実際扱うとなると……」




『聖騎士』と聞いて、また私の胸は痛む。だけど……聖女試験を棄権したレオナ様に彼女達の秘密を言う事は出来ない。


黙ってしまった私にレオナ様は続けた。




「もしかすると、今までにもクラリス様の様な力を持つ聖女や聖女候補者は居たかもしれませんが……攻撃に特化した聖なる力を持つ者は全体的に少ないと聞いた事があります。……どんな形でも最優先は魔王の封印。それには聖女と王族の力が必要です」




「結局……大切なのは王族と聖女が協力して魔王を封印するという事実を広く国民に知らしめる事……ですか……」




「ざっくばらんに言ってしまえば。国民に聖女と王族の力を示す。これが重要なのでしょう」




「王家に体よく使われている気分です」


私の言葉にレオナ様は苦笑した。




「そう思われても仕方ありません。ですが、封印には王族の力が必要な事もまた事実。あとは聖女さえ決まれば魔王を封印出来ます。私はクラリス様を応援していますね」




「まぁ……出来る限りはやりましたけど、試験は終わりましたから。後は結果を待つだけですね」


もう試験は全て終わってしまった。今更ジタバタしても仕方ない。




「森から帰って来た時、随分とお疲れの様子でしたけど、大丈夫ですか?馬達は私に任せてお休みしていただいても……」




「いえいえ。夜ならこれぐらいは」




「夜なら?」


レオナ様は首を傾げた。




「はい。私、何故か夜の方が力が漲るんですよ。変わってますよね?」




「そう言えばクラリス様の印は『月下美人』でしたね。……何だかぴったりです」


とレオナ様は微笑んだ。




レオナ様の印は『リューココリーネ』優しいレオナ様にこれまたぴったりだと言える。


二人で少し笑い合った後、レオナ様は静かに言った。




「私……クラリス様に出逢えて本当に良かったと思っています」




「私もです」


レオナ様は私達より歳上な事もあり、学園でも殆ど喋った事はなかった。


聖女試験がなければ、こんな風に二人で話す事もなかっただろう。




「あの……私、友人と呼べる人が居なくて……」


レオナ様が恥ずかしそうに言う。




「私もです。……これからレオナ様の事を『友達』と思っても?」




「……!もちろんです!私も……クラリス様を友達と。これからも仲良くして下さいますか?」




「当たり前じゃないですか!」


私達の間に温かい空気が流れる。




これから先、レオナ様とはずっと仲良くしていける。そう思っていた。


ーこの時までは。





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