第七章:モーニング暴力
第七章
モーニング暴力
カンカンカンカンカンカンカン!!!
結構、近い距離で鐘を殴打したみたいな音が聞こえて飛び起きる。
「なになになになになに」
「ンワ°プルルルルル、ゥワー!」
ポチも吃驚したのか身体を前後に揺らしている。
大きな音に吃驚したのかも知れない。
「ジャンさん!! 起きなさい!! いつまで寝てんですか!!」
次はサラの声と扉を激しくノックする音が聞こえてきた。
「朝の準備!! 早く!!」
暫くはその音が響いていたが、すぐに静かになった。
聞こえないが、ジャンが何か返事したのだろう。
そして、何も聞こえなくなった。
それはそうだ。
この塔は造りがしっかりしているので、生活音くらいなら聞こえない。
あそこまでサラの声が聞こえる方がスゴいのだ。
一体どれだけ声を張り上げたんだろう。
「・・・・・・」
窓の方に視線をやる。
まだまだ朝日も昇っていない時刻だ。
いつもこんなに早くないし、朝御飯は本邸の使用人に届けさせているのに、今日はどうしたのだろう。
「んー」
再び、布団をかぶり直す。
そして、篭の中でコロンと転がるポチを少しつつく。
「後輩ができてサラもハシャいでいるのかな?」
「ンワ?」
「まぁ、私たちはもう一眠りしようか、ポチ」
「ンー」
「おやすみ」
爆発音で目が覚めた。
「なになになになになに」
「ンワ°プルルルルル、ゥワー!」
ポチも吃驚したのか身体を前後に揺らしている。
大きな音に吃驚したのかも知れない。
ドタドタという足音が響く。
「えぇええ?」
吃驚している私の目の前で扉がスゴい音を立てて開いた。
「すみません!! リナお嬢様!!」
そこにいたのは軽く焦げたサラであった。
軽く焦げた?
「なにやってんの!? 何したらそんなになるの!?」
「すみません!! 朝食が爆発しました!!」
「朝食って爆発するの!??」
「失礼します!! 代わりの朝食はしっかり用意するので!!」
「待って、失礼しないで!!」
驚愕している私をおいて、再び扉がスゴい音を立てて閉まった。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
私は思いだした。
そう、お兄さまが言っていた。
サラに料理をさせるなと。
料理をして前の家を首になったのだと。
「朝食が爆発しました」とサラは言った。
つまり、サラが今朝食を作っているという事?
今まで本邸に料理を取りに行っていたのに?
今日はサラが作っている?
なんで?
後輩ができたから?
なんで?
後輩を殺したいの?
再び、爆音が響き、塔が揺れる。
「ポチ、次目が覚めたとき、私たち令嬢と触手のローストになってるかも・・・・・・」
「ンワ・・・・・・」
ポチがしなしなとしおれた。
「キュ・・・・・・ンルワァアア・・・・・・」
「そうだね・・・・・・こんなのってないよ・・・・・・というか、ポチ、君の粘液って可燃性あったりする?」
「ンキュ?」
数時間後、やはり少し焦げたサラとたっぷり焦げてヘトヘトになったジャンが私たちにサラダを持ってきた。
「明日からは俺が作る。コレは決定事項だ」
ジャンの言葉に誰も異論を唱える人間は居なかった。
あと、異論を唱える触手も居なかった。
私はとりあえず、塔が爆発しなかったことと、誰もローストにならなかったことを世界に感謝した。