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第五章:私リナ! そして、こっちは私を暗殺しようとした人!





第五章

私リナ! そして、こっちは私を暗殺しようとした人!





「つまり、なんですか」

 ポチの体液でネチョネチョになった部屋をモップ掛けしながら、サラが低い声を出した。

「この男、暗殺者なんですか」

 サラの暗澹たる瞳がお兄さんを捉える。


 お兄さんはサラからの恐ろしい瞳をチラリと見てから、再びモップを掛け始めた。

 サラはもちろんだが、お兄さんのモップを掛ける手にも慣れを感じる。


「そうだよ!」

「そ、っすね」

「ミッぷぃぃ!」

 私の同意にお兄さんとポチが肯定の返事を続ける。



「なぁにやってんですか!? 自分を殺そうとした相手と仲良くしないでくださいよ!! 状況分かっているんですか? もしかしたら私がいない間に貴女暗殺されていたかも知れないんですよ!??」

 サラが怒り狂って、モップを床に放り投げた。

「うわ・・・・・・」

 お兄さんがサラの様子にドン引いたような声を上げる。

「キュ・・・・・・」

 ポチもぷにぷにの身体を震わせて私の影に隠れるように寄り添う。

 かわいい。


「でも、お兄さん、いい人なんだよ?」

「暗殺しにきた人間にいい人も何もあるか!!」

 サラが私に詰め寄ってきた。

 放り捨てたモップには目もくれずに、私との距離を詰め、私を指さして言葉を続ける。


「いいですか、リナお嬢様! 私はあなたのお兄さまのアルバート様にくれぐれもリナお嬢様を頼むと脅され・・・・・・お願いされている身なんです!! リナお嬢様に何かあれば私は物理的に首が飛ぶんですよ!!」

「サラ、今お兄さまに脅されてるっていわなかった?」

「言ってません!!」

「いや、今」

「言ってません!!」

「えぇ、でも・・・・・・」

「大体、彼は貰えるはずのない金に目が眩んで、リナお嬢様を殺そうとした人間ですよ!? 信頼できるか以前の問題でしょうが!??」

 サラが叫ぶ。

 お兄さんはモップを掛けながら、此方をチラチラと見ている。

 詰め寄られているのは止めたいけれど、正論だしな、みたいな顔をしている気がする。


 うぅん。

 確かにそうなんだけど。



「でも、サラも私を暗殺しようとしたけど、こんなによくしてくれてるじゃん? それにやっぱりサラもいい子だったしね。だから、大丈夫かなーって」

 私がそう返すと時が止まった。


 詰め寄っていたサラが無言で踵を返す。

 そして、床に放り投げていたモップを手に取り、再び掛け始める。


「うわ・・・・・・」

 お兄さんが、ドン引いたような声を上げた。

 お兄さんを見ると、私を見て顔を引きツらせている。

 だが、頭を振り視線を床に戻すと、再び黙々とモップを掛け始めた。


「そういえば、ポチも麻痺する体液を部屋で放出してたね。もしかして、ポチも私を殺そうとしてたの?」

「ピウ!?」





「じゃあ、サラとお兄さんとポチ、三人併せて私を暗殺しようとした三勇士ってとこだね!」





「うわ・・・・・・」

 お兄さんが、ドン引いたような声を上げた。

「うわ・・・・・・え、うわ・・・・・・」

 口に手を当て、此方を凝視している。

「うわぁ・・・・・・」



 ぬちょ、ねちょとポチの粘膜の音が部屋に響いた。










「アルバート様から許可がおりました」

 サラが路地裏に潜んでいる殺人鬼みたいな顔で言った。

「暗殺クソ野郎・・・・・・いえ、ジャンさんをリナお嬢様の執事に取り立てるそうです。は? マジで言ってんですか? 本当に信じられないんですけど・・・・・・なんで暗殺を報告して、暗殺者が同僚になってんですか? どういう・・・・・・意味が分からない・・・・・・一体何が・・・・・・」

 否、殺人鬼みたいな顔から困惑と苦悩の顔になり、その場にへたり込むように座り込む。


 サラもお疲れのようだ。

 まぁ、ポチの粘液が塔中に溢れていたので、それを掃除するために夜遅くまで頑張っていたみたいだしな。

 ちなみに、外部から来る人間が通るところだけ掃除したらしい。

 つまりは、安住で堅牢なる我が監獄は未だにポチの粘液でいっぱいと言うことだ。

 そう、我が塔はねちょねちょなのである。

 サラだけの手ではどうにもならない。

 というわけで、お兄さまも動いたのじゃないだろうか。

 多分。


「あ、そうなんだ。これから、よろしくね、ジャン」

 私は元暗殺者のお兄さん、否、ジャンに微笑みかけた。

「プイ!!」

 ポチも元気よく挨拶をしている。

 ご機嫌ちゃんだ。

「いやぁ、力仕事してくれる人が増えたら、サラも大助かりだね!」

「元暗殺者ですけどね」

「サラとお揃いだね!」

「プイプ!」

「ポチともね」

「ギュ!?」



「うわ・・・・・・」

 お兄さん、いやジャンが、心底ドン引いたような声を上げた。

「うわぁ・・・・・・」



 気を取り直したらしいサラが立ち上がる。

 そして、咳払いをしてエプロンドレスの何度か手で払い、引っ張って、服装を正す。

 そのまま、背筋を伸ばしてジャンに向き直った。



「今日から、ここが貴方の職場です」

「え、っと、はい。拒否権とか・・・・・・ない感じっすね・・・・・・はい・・・・・・」

 ジャンが戸惑いと困惑でいっぱいの顔を私とサラと、後ポチに向けた。


「私に逆らったり、リナお嬢様に手を出した場合、貴方はアルバート様の手によって地獄に送られるでしょう」

「あ、ここってまだ地獄じゃないんだ・・・・・・この空気感で・・・・・・へぇ・・・・・・」

「ジャンって、お兄さまが送ってくれた資料によると元冒険者なんでしょ? 冒険の話とか聞きたい! あと、触手と戦った事ってある?」

「はは・・・・・・」

 ジャンの顔がヒキツった。





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