2-5 誓いの星空
紗月と別れて数日間、大輝は彼女の言葉に悶々とした気持ちを抱えていた。
紗月は自分から離れようとしている――それは彼女が自分を守ろうとしていることが痛いほど分かっていた。
それでも、彼女を放っておけるはずがなかった。
「一人で苦しむなんて、絶対にさせない。」
大輝は決意を固めると、紗月に直接会うための手段を考えた。
しかし、大学での講義に紗月が顔を出さない日が続き、電話やメッセージを送っても返信はなかった。
どこかで彼女が姿を消してしまうのではないかという不安が胸を締め付けた。
そんなある日、大輝は紗月と共通の友人である優奈に声をかけた。
優奈は紗月のことを心配しており、彼女が最近何をしているのかを知っている様子だった。
「紗月、最近どうしてるか知ってるか?」
優奈は少し戸惑ったように目を伏せたが、やがて大輝の真剣な表情を見て口を開いた。
「紗月、最近よく一人であの公園に行ってるみたい。前に『星を見てると落ち着く』って言ってたから……たぶん、あそこだと思う。」
大輝は感謝の言葉を告げると、すぐにその公園へと向かった。
紗月との初めての出会いの場所――あの小さな公園が、彼女の隠れ場所になっている気がした。
夜が更け、公園にたどり着いた大輝は、滑り台の近くで空を見上げている紗月の姿を見つけた。
彼女の背中はどこか寂しげで、月明かりがその輪郭を静かに照らしていた。
「紗月!」
大輝の声に驚いて振り返った紗月は、一瞬言葉を失ったが、すぐに困ったように笑った。
「どうしてここに……」
「優奈から聞いたんだ。お前がここにいるって。逃げられると思ったのか?」
紗月は苦笑いを浮かべ、再び空を見上げた。
「逃げてるわけじゃない。ただ……これ以上、大輝君に迷惑をかけたくなかったの。」
「迷惑だなんて思ったこと、一度もない。」
大輝は紗月の隣に座り、彼女と同じように夜空を見上げた。
澄んだ空には無数の星が瞬き、静かな時間が流れていた。
「紗月、俺は君のそばにいたいんだ。病気のことも全部ひっくるめて、俺は君を守りたい。君が一人で背負う必要なんてない。」
紗月の瞳に涙が浮かんだ。
彼の言葉がどれほど温かく、どれほど強い意志を持っているかを感じた。
けれど、紗月の胸の中にはまだ迷いがあった。
「でも……私は大輝君に何もしてあげられない。未来だって、約束だって、何も……」
「そんなこと、どうでもいい。」
大輝は彼女の手をしっかりと握った。
「紗月、俺にとって大事なのは君だ。君がここにいること、それだけで十分だよ。一緒にこの星空を見られるだけで、俺は幸せなんだ。」
その言葉に、紗月の頬を涙が伝った。
彼女は一度目を閉じ、大きく息を吸い込む。
そして、微かに震える声で言った。
「……ありがとう、大輝君。でも、私は怖いの。一緒にいるほど、君を巻き込むのが怖い。でも……本当はずっと君と一緒にいたいって思ってる。」
「だったら、それでいいじゃないか。」
大輝は力強い声で言い切った。
「紗月、俺たちには時間がある。その時間をどう使うかは俺たち次第だろ?君が笑ってくれるなら、それだけで俺は十分だよ。」
紗月は大輝の言葉に、胸の中で絡まっていた感情が少しずつほどけていくのを感じた。
彼の真剣な瞳に見つめられながら、紗月は小さく頷いた。
「分かった……私、もう逃げない。大輝君と一緒に、今を大切に生きたい。」
その夜、二人は星空の下で新たな約束を交わした。
どれだけ時間が限られていようとも、一緒にいることを選んだ二人。
その決意は、無数の星々の輝きの中で強く光り始めた。
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