2-4 孤独な選択
大輝とのやり取りから数日が経ち、紗月はひとりで考え込む時間を増やしていた。
彼の言葉はどこまでも優しく、力強く、紗月の胸を温めるものだった。
しかし、その温かさがかえって彼女の心を引き裂いていた。
「このままでいいのかな……」
自室の窓から夜空を見上げながら紗月は呟いた。
星々は変わらずそこにあり、彼女を見守っているようだった。
だが、未来のない自分と、これからの可能性に満ちた大輝を天秤にかけるたび、紗月の中に湧き上がるのは罪悪感だった。
翌日、紗月は一人で再び病院を訪れた。
担当医との面談室。
白い壁に囲まれた無機質な空間で、医師は淡々と説明を始めた。
「水瀬さん、最新の検査結果ですが、進行は予想より早いです。今後、症状の緩和を目的とした治療に専念する形になります。辛いかもしれませんが……」
医師の言葉は鋭く心に刺さるが、紗月は冷静に頷いた。
「分かりました。先生……私は、どれくらい残っているんでしょうか?」
一瞬、医師は言葉に詰まった。
だが、彼女の瞳に宿る覚悟を見て、静かに答えた。
「半年、もしくはそれより少し短いかもしれません。」
紗月の中で時間が止まるような感覚があった。
半年という限られた時間。
それは、残りの人生をどう生きるかを決めるにはあまりにも短い期間だった。
病院を出た帰り道、紗月は歩きながら考えた。
大輝との日々がどれほど幸せだったか、どれほど彼の隣にいたいと願ったか。
それでも、彼の未来を奪いたくないという思いが勝ってしまう。
「彼を自由にしてあげなきゃ……」
紗月はついに一つの決断を下した。
それは、大輝との関係を断ち切ること。
彼の優しさに甘えれば甘えるほど、別れは辛くなる。
それならば、今のうちに自分から離れるほかないと、そう思ったのだ。
数日後の放課後、紗月はキャンパス内の中庭で大輝を待っていた。
夕焼けが空を染め、影が伸びる中、大輝が遠くから駆け寄ってくる。
「紗月、待たせた?」
「ううん、ちょうど来たところ。」
紗月は微笑みながら答えた。
その笑顔を見て、大輝は安心したように座る。
「話したいことがあるんだよね?」
「うん。でも……ごめんね。私、大輝君と……もう会えない。」
突然の言葉に、大輝の表情が凍りつく。
「どういう意味だ?会えないって、なんでだよ?」
「理由なんていらない。ただ、私はもう一人でいたいの。大輝君には君の未来がある。私みたいな人間に時間を使わないで。」
紗月の言葉は冷たく響いた。
あえてそう言うことで、大輝を突き放そうとしていた。
しかし、大輝はその言葉の裏に隠された紗月の苦しみを感じ取っていた。
「紗月、本当にそれが君の本心なのか?」
紗月は何も答えられなかった。
ただ、震える声で「さようなら」と告げると、その場を走り去っていった。
大輝はその後ろ姿を追いかけることができなかった。
彼女が涙を隠していることに気づいていたからだ。
それでも、大輝の胸には一つの決意が芽生えていた。
「絶対に諦めない。紗月を一人にはさせない。」
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