2-3 すれ違いの始まり
紗月の「一緒にいるのはやめたほうがいい」という言葉を聞いた翌日から、大輝は紗月とどう向き合うべきか悩み続けていた。
紗月は笑顔で「気にしないで」と言うが、どこか距離を置こうとしているように見える。
大輝はそれに気づきながらも、どうすることもできないまま時間だけが過ぎていった。
大学のキャンパスでも、以前のように二人で過ごす時間は減り始めた。
大輝が声をかけても、紗月は「ちょっと用事があるの」と言って、足早に去っていくことが増えた。
彼女が意図的に距離を置いていることは明らかだった。
ある日、大輝は紗月の姿を追って、彼女が向かった先を遠くから見守っていた。
紗月は大学近くの病院に入っていった。
その後姿を見て、大輝の胸に重いものがのしかかった。
「やっぱり紗月は……」
紗月の言葉の重みが、ようやく現実味を帯びて彼に押し寄せた。
彼女が一人でその現実に立ち向かおうとしていることに気づき、何もできない自分が情けなく思えた。
病院から出てきた紗月は、大輝に気づかないまま歩き始めた。
大輝はその後を追いかけ、彼女に声をかけようと決心した。
「紗月!」
彼の声に振り返った紗月は驚いた表情を浮かべた。
だが、それはすぐに少し困ったような笑顔に変わった。
「どうしてここに?」
「偶然見かけたんだ。紗月、正直に言ってほしい。君の体のこと、どれくらい悪いんだ?」
紗月は大輝の鋭い問いに一瞬言葉を失ったが、すぐに目を伏せた。
「……大丈夫だよ。心配しないで。」
「そんなはずないだろう!病院に通ってるってことは、君が抱えてるものは相当なものなんじゃないのか?」
大輝の声には焦りが混じっていた。
紗月は小さく息をつき、静かな声で答えた。
「私の病気は……治らないものなの。お医者さんも、延命治療が精一杯だって言ってる。だから……」
言葉を詰まらせた紗月の目に涙が浮かんだ。
その涙が彼女の本心を物語っていた。
「だから、君に無駄な時間を使わせたくないんだよ。私と一緒にいることで、君が失うものがたくさんある。私にはそれを受け止める勇気がないの。」
紗月は強く言葉を絞り出したが、その声は震えていた。
大輝はその場で拳を握りしめ、紗月の言葉をしばらく飲み込むように黙っていた。
そして、彼女の目をまっすぐ見つめて言った。
「紗月、君が言ってることは間違ってる。君がどんな状況にあろうと、俺にとって君と一緒にいることが一番大事なんだ。無駄な時間なんて思ったことは一度もない。」
「でも……」
「でもじゃない!俺が決めるんだ。君の病気も、君が抱えてる不安も、全部俺と分け合おう。それが俺の願いだよ。」
紗月は涙を流しながら大輝の言葉を聞いていた。
その優しさが痛いほど胸に刺さる。
だけど、同時に彼と一緒にいたいという自分の本心も否定できなかった。
「ありがとう……大輝君。でも、私にはまだ整理しきれない気持ちがある。少しだけ、時間をもらってもいい?」
その言葉に、大輝は頷いた。
「分かった。でも、絶対に君を一人にはしない。」
紗月は涙をぬぐい、小さな声で「ありがとう」と呟いた。
その場で二人は別れ、大輝は夜空を見上げながら自分の気持ちを再確認していた。
「紗月を絶対に一人にさせない。それだけは俺が守る。」
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