1-3 心の距離
流星群を一緒に見た夜以来、大輝は紗月のことが頭から離れなくなっていた。
大学の講義中、帰り道、ふとした瞬間に彼女の笑顔が思い浮かぶ。
それまで単調だった日常が、彼女と過ごす時間を軸に動き出しているような気がしてならなかった。
大輝は、自分が紗月に惹かれていることをはっきりと自覚していた。
けれど、それをどう伝えればいいのかわからない。
下手に気持ちを伝えて、彼女との今の関係を壊してしまうのが怖かった。
そんな中で、大輝は紗月と過ごす時間を少しでも増やしたいと願うようになった。
講義の後、キャンパス内で偶然を装って彼女に話しかけたり、一緒にランチを取る機会を探したり。
それでも、紗月はいつも自然体で、大輝の気持ちに気づいている様子はなかった。
ある日、大輝は思い切って紗月を街のカフェに誘った。
彼女は快く了承してくれて、二人は夕方の静かな店内で向かい合った。
「大輝君ってさ、なんでそんなに星が好きなの?」
コーヒーカップを手にした紗月が、突然そんな質問をした。
大輝は少し考えてから答えた。
「星を見てると、不思議と心が落ち着くんだ。自分の悩みなんて、宇宙の広さに比べたらちっぽけだなって思えてくる。子どもの頃、父さんとよく天体観測に行ってたんだ。それがきっかけかな。」
「素敵なお父さんなんだね。」
紗月の言葉に、大輝は微笑んだ。
しかし、彼女が言葉を続ける様子がなく、どこか考え込んでいるように見えた。
「紗月はどうして星が好きなんだ?」
大輝が問い返すと、紗月はしばらく沈黙した後、ぽつりと答えた。
「……私ね、小さい頃からずっと同じ夢を見てるんだ。夜空を飛ぶ流れ星を追いかけて、その先に行きたい場所があるの。でも、どんなに追いかけても届かないの。」
「届かない……?」
紗月は曖昧に微笑んで、大輝の問いをはぐらかすように話題を変えた。
「ねえ、次の週末、もう一度一緒に星を見に行かない?」
突然の誘いに、大輝の胸は高鳴った。
もちろん、と答えるのに迷いはなかった。
それでも、彼女の言葉の裏にある何かを知りたいという気持ちが、心の片隅に残っていた。
「紗月、何か悩みがあるなら、話してほしい。」
大輝がそう言うと、紗月は一瞬驚いた表情を浮かべたが、すぐに柔らかい笑みを見せた。
「ありがとう。でも、大丈夫だよ。今は、星を見に行けるのが楽しみ。それだけで十分だから。」
彼女の笑顔を見て、大輝はそれ以上何も言えなくなった。
紗月の中には、触れてはいけない何かがある――そう感じた。
その夜、大輝は一人で星空を見上げた。
彼女に何かがあることは分かっている。
それでも、紗月と一緒にいる時間が増えるたびに、大輝の中で紗月への想いは強くなっていく。
「俺は、もっと彼女を知りたい。」
心にそう誓った大輝は、次の星空の下で、紗月に自分の想いを伝えようと決めた。
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