3-4 満月の夜
満月の夜、約束通り大輝は紗月を迎えに行った。
彼女は玄関先で待っており、柔らかな月明かりに照らされていた。
その姿は美しいが、どこか儚げだった。
以前よりも痩せた体と疲れが見える表情。
それでも、紗月は笑顔を浮かべていた。
「大輝君、来てくれてありがとう。行こうか?」
「もちろん。今日は特別な夜だろ?」
大輝は紗月の手を優しく取り、二人で歩き始めた。
公園までは歩いて10分ほどの距離だったが、紗月は途中で何度か立ち止まり、大きく息をつく。
「大丈夫か?無理はしなくていいんだぞ。」
「大丈夫だよ。ただ、ちょっとゆっくり歩かせてね。」
大輝は黙って頷き、紗月のペースに合わせて歩き続けた。
その間、空には大きな満月が浮かび、周囲を淡い光で包んでいた。
公園に着くと、二人はいつもの滑り台のそばに腰を下ろした。
静かな夜、木々の間から見える星々が一層輝いて見えた。
「やっぱり、この場所が一番好き。」
紗月は夜空を見上げながらつぶやいた。
その瞳は星々を映し、どこか遠くを見ているようだった。
「紗月、今日はたくさん星が見えるな。満月もすごいけど、流れ星も見られるかもな。」
「うん、見られるといいな……。」
紗月は静かに笑った。
その笑顔を見た大輝の胸に、じんわりと熱いものが広がった。
彼女のそばにいる時間が、どれほど大切なものかを改めて実感していた。
しばらく星を眺めていると、一筋の流れ星が夜空を横切った。
「見えた!流れ星!」
紗月は声を上げて、手を合わせて何かを祈った。
その姿を見た大輝も同じように祈る。
「紗月、何をお願いしたんだ?」
「……秘密。でも、きっと大輝君も同じことをお願いしたと思う。」
その言葉に、大輝は笑った。
「そうかもな。でも、俺の願いは簡単だよ。紗月ともっと一緒にいたい。ただそれだけだ。」
紗月はその言葉に微笑んだが、その笑顔には涙が滲んでいた。
「大輝君、私も同じ気持ち。でも……それが叶わないかもしれないって分かってるから、星にお願いしたの。」
「叶わないなんてことない。俺たちが願ったんだから、絶対に叶うよ。」
大輝は紗月の手を握り、力強く言った。
その手の温かさに、紗月は目を閉じて涙を一粒零した。
その後、二人は静かに星空を眺め続けた。
言葉を交わさなくても、互いの気持ちは伝わっていた。
時折吹く風が冷たさを感じさせたが、大輝は紗月の肩をそっと抱き寄せ、彼女を温めるように寄り添った。
「ありがとう、大輝君。本当に……ありがとう。」
紗月の声は、風に乗って消え入りそうだったが、大輝にははっきりと届いた。
「何を言ってるんだ。俺の方こそ、ありがとうだよ。」
その言葉を最後に、二人はまた黙り込み、星空の下で時間を共有した。
その時間は永遠のように感じられたが、やがて夜は静かに明け始めた。
「そろそろ帰ろうか。寒くなってきたし、無理するなよ。」
紗月は小さく頷き、大輝に手を引かれながら立ち上がった。
二人で歩く帰り道、紗月はそっと大輝の腕に寄り添った。
「この夜、ずっと忘れないよ。」
その声が、大輝の胸に深く刻まれる。
彼女の言葉が、どこか別れを予感させるようで、大輝の胸を締め付けた。
読んでいただきありがとうございます!
もし楽しんでいただけましたら、ぜひ星5つでレビューをいただけると嬉しいです。
感想が次の創作の大きな励みになります!
よろしくお願いいたします!




