3-3 告げられる現実
その日、大輝は紗月の家を訪れていた。
病院から帰宅した彼女を気遣い、一緒に過ごすためだった。
紗月の母親は遠慮がちに微笑み、大輝にお茶を出してくれた。
「大輝君、本当にいつもありがとうね。紗月もあなたが来てくれると元気になるみたい。」
「いえ、自分が紗月さんに元気をもらってるんです。」
大輝はそう答えたが、その胸の中では別の思いが渦巻いていた。
紗月の体調は日に日に悪化しており、彼女の笑顔の裏にある苦しみを見過ごすことができなかった。
紗月はリビングのソファに座り、優しく微笑んでいた。
だが、その笑顔には少し疲労が滲んでいた。
「大輝君、今日はゆっくりしていってね。私、あんまり遠くには行けないから、ここで一緒にお話ししよう?」
「もちろん。今日は紗月といるために来たんだから。」
二人は他愛もない話をしながら、静かな時間を過ごした。
幼い頃の思い出や、最近の小さな出来事。
けれど、その中には、触れられない現実が横たわっていた。
夕方、紗月が一息つくために部屋へ戻ったあと、大輝は紗月の母親と二人きりになった。
母親はしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「大輝君……少しだけ、いいかしら。」
「はい、何でも聞かせてください。」
母親は手元のカップを見つめながら、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「紗月の病気のこと、先生から聞いていると思うけど……実は、残された時間がもうそれほど長くないの。」
その言葉に、大輝は無言で頷いた。
分かっていたつもりだったが、改めて聞かされると胸が締め付けられる思いだった。
「紗月はそれを知っていて、あなたに迷惑をかけたくないって、ずっと気にしているの。でも、私は思うの。紗月が一番幸せそうにしているのは、あなたと一緒にいる時だって。」
「……僕も、紗月といる時が一番幸せなんです。どんなに辛いことがあっても、僕は彼女のそばにいたい。」
大輝の言葉に、母親は目を潤ませた。
「ありがとう、大輝君。本当にありがとう。紗月を支えてくれることが、どれほど私たちにとって救いになっているか……」
母親の言葉に、大輝は深く頷き、決意を新たにした。
夜になり、紗月がリビングに戻ってきた。
少しだけ顔色が良くなっていたが、その体は以前よりも少し細くなっているように見えた。
「ごめんね、少し休んでたの。」
「全然大丈夫だよ。今日はゆっくりできて良かった。」
大輝は微笑み、紗月の隣に座った。
そして、そっと彼女の手を握りながら言った。
「紗月、俺に何かできることがあったら、何でも言ってほしい。俺は君のためなら、どんなことでもやるから。」
紗月はしばらく黙っていたが、やがて少し寂しそうに微笑んだ。
「……じゃあ、お願いが一つだけある。」
「何でも言ってくれ。」
「また一緒に星を見に行きたいの。次の満月の夜に、あの公園で……もう一度、流れ星を一緒に見たい。」
「もちろんだよ。約束する。」
大輝は力強く答えた。
その約束が、どれほどの意味を持つのかを胸に刻みながら。
その夜、大輝は星空を見上げ、紗月との未来を強く祈った。
彼女が望む限り、その願いを全て叶えたいと誓いながら。
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