1-1 降り注ぐ星空の下で
夜の街は静寂に包まれていた。
夏の終わり、ふと耳を澄ませば、虫たちのささやきが微かに聞こえる。
都会の片隅にある小さな公園。
そのベンチに、一人の青年が腰を下ろしていた。
青年の名前は橘大輝。
大学生の彼は、日々の生活に追われる中で、自分の夢を見失いかけていた。
子どもの頃から星空が好きだった大輝は、空を見上げることで自分を取り戻そうとしていた。
今夜も、ふと気まぐれで訪れたこの公園で、星々が輝く夜空をぼんやりと眺めていた。
だが、その静寂を破ったのは、ふいに聞こえた女性の歌声だった。
透明で優しい声が、夜風に乗って大輝の耳に届く。
「……誰だ?」
大輝は声のする方に目を向けた。
視線の先には、滑り台のそばに立つ一人の女性がいた。
月明かりに照らされて、その姿は幻想的だった。
彼女は歌うのを止めると、こちらを振り向いて微笑んだ。
「ごめんなさい。うるさかった?」
その言葉に大輝は少し戸惑った。
否定するつもりで口を開いたが、思わず彼女の顔に見とれて言葉が出ない。
長い黒髪に整った顔立ち。
まるで星のように澄んだ瞳が印象的だった。
「いや、そんなことはない。むしろ……その、素敵な歌だと思った。」
ようやく口に出せた言葉に、自分でも少し顔が熱くなるのを感じた。
彼女はくすりと笑って、ベンチの横に座った。
「ありがとう。私、星を見るのが好きで、ここによく来るの。夜って、歌いたくなるんだよね。」
彼女の名前は水瀬紗月。
同じ大学の学生だとわかると、大輝は驚いた。
これまで一度も会ったことがなかったが、彼女の自然体の明るさに、少しずつ心がほぐれていくのを感じた。
「君も星が好きなの?」
そう尋ねる紗月に、大輝は頷いた。
そして、昔から天文学に興味があったこと、自分も星を眺めると心が落ち着くことを話すと、彼女は目を輝かせた。
「それなら、来週の流星群、一緒に見に行かない?」
彼女の突然の提案に、大輝は戸惑いながらも「いいよ」と答えた。
その瞬間、何かが始まる予感がした。
まるで星々が二人を導いているかのようだった。
それから二人は、空に輝く星について語り合いながら、夜を過ごした。
名前も知らないまま、自然と心が通じ合っていく感覚が不思議だった。
その夜、大輝は初めて星を見る以外の理由で心がときめいた。
紗月という一人の女性の存在が、彼の中で大きな光を放ち始めていた。
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