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【第二章スタート】アンタッチャブルな彼女  作者: ゆま
第一章 最後の夏休み
2/19

02葡萄園来訪

 数日後。

 「今日からシャインマスカットの袋掛けを行う」

 早朝からおやじは全開である。

 袋掛けが終わると葡萄の手入れもひと段落だ。

 とともに俺の夏休みも終わりに近づく。

 今日は妹も手伝って家族4人とパートのおばちゃん2人で一気にかたずける。

 

 ~~~~ 佐野元春:スターダスト・キッズ ~~~~

 

 ひとしきり働いてそろそろ休憩かというときに母がお茶入れたよ~と声を上げた。

 農作業の休憩時は昔から夏でも熱いお茶と決まっていた。

 むろん飲んでいるときは熱い。でも不思議とその後の体感温度が下がるのだ。

 

 と、そこへあの時のドイツ車がやってきた。

 「朝早くからすみません、こちら夏浦葡萄園様ですか?」

 あの時のおばさまだ。

 おばさまはあの時の農協の荷物を確認してネットで場所を調べてきたのだろう。

 親には何も言っていなかったので、

 「うちのバカ息子がすみません」

 とかおやじは言ってやがる。

 丁重にお詫びするおばさまにようやく状況が分かったようだ。

 「夏輝さんもその後お体に異変はありませんか?」

 なぜ俺の名を⁈ああこの間作った葡萄園のホームページか。

 「ええピンピンしてます」

 「本当にすみませんでした。きな子も降りてお詫びをなさい!」

 助手席のドアがあくと若い女性が降りてきた。

 この暑いのに長袖長ズボン、つばの大きな帽子で顔が見えない。

 ゆっくりと俺の前に来ると一言か細い声で、

 「すみませんでした」

 と言うとおばさまの後ろに隠れてしまった。

 ふむふむ、どうやらいいとこの箱入り娘キャラのようだ。

 しかしなぜ謝るのかは謎であった。


 謝罪とお詫びの品を渡し終わるとおばさまは興味津々で、

 「ところでこちらは葡萄の販売をされているのですか?あ、申し遅れました私は桜田美輝と申します、葡萄大好きなので分けていただければと」

 やっとおばさまを卒業して桜田母と呼べる。

 娘は桜田きな子か。

 「販売してますよ。今日袋掛けを始めたところなので収穫できるのは1ヶ月以上後になります」

 商売の話になるとおやじは貪欲だ。

 すっかり休憩モードに入っている母・妹たちをどけて椅子に案内してる。

 「八月の間しかこちらにいられないんです、九月になると娘の学校が始まりますし……」

 「郵送もできますよ、ネットから注文もできるようになりました!」

 今時偉そうに言う話ではないぞ、おやじよ。

 「でもやっぱり取れたて新鮮なのが食べたいし……」

 うんうん消費者にありがちな取れたて新鮮野菜の拡大解釈だ。

 「そうですね……来ていただければ店頭販売もしてますが……」

 「品種は何が……」

 話は長くなりそうだ、と思ったら席を立って園内に二人は行っていしまった。

 「元春好きなんですか?いいですよね~元気が出る」

 「ほかにも色々流してますけどね。音が、この振動が病害虫が嫌がって減農薬の葡萄ができるんです」

 歩きながら喋る二人の会話が聞こえるが、それはおやじの独自理論だろ。


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