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第8話 イケメン配信者と視聴者

「……誰?」


 私は思わず、そう口にした。

 ふとコメント欄を見ると、高速で文字が流れていた。


『え? 井上純?』

『本物!?』

『ガチで純様!?』

『イノジュン!? マジ!?』

『純様きたああああああああああ!!』


 ……え? 井上純って……あの?

 ……私を助けてくれたであろう人物はこちらを振り向き、手を差し伸べた。


「……大丈夫ですか?」

「は、はい……大丈夫です」


 ……私は動揺してしまったが、彼女の手を掴み、立ち上がった。


『純様と美羽ちゃんまさかの夢の競演』

『これは切り抜き確定だろ』

『私の純様に近づかないで!』

『絵の分際で純様に近づくとか何なの?』


 コメント欄は絶賛と批判、三者三様だった。


「お、今配信中って感じ? どもー、井上純です」

『ガチで純様だあああああああ!!』

『本物だ!』

『純様さまあああああ!! 結婚して!!』


 井上純はまるで何事も無かったかのように、ドローンカメラに向かって挨拶をした。


「で、今から奥に行くって感じか、じゃあ邪魔しちゃ悪いか、それじゃ! 気を付けてね!」


 そう言って、彼女はその場から立ち去ろうとしていた。


『えぇー? 純様帰っちゃうの?』

『純様! 待って!!』

『純様もっと見たいのにー』


 コメントを見ると、彼女のファンであろう人たちが必死に文字で呼び止める。

しかし、その声は彼女には届かなかった。

 まぁ、これは私の案件配信だし、彼女がいると成り立たなくなるからいっか……。

 私も先へ進もうと歩き始めた……その時だった。


『ここ美羽ちゃんの配信だぞ、純信者は帰れよ』

『井上純の視聴者って別の配信でも名前上げるから迷惑なんだよな、巣に帰れよ』

『イノジュンキッズ共は大好きな純様に脳死で投げ銭してりゃいいだろ、まぁ感謝を言われるだけでお前らの思いは届かないだろうがな』

『何? 純様馬鹿にしてんの?』

『別に馬鹿にしてねぇよ、テメェらがキモいってだけ』

『コメ欄で喧嘩すんなよ、美羽ちゃんに迷惑だろ』


 ……まずい、井上純の視聴者と私の視聴者で喧嘩が起き始めた上に、コメントに自治厨が現れ始めた。

 これは大変だ、このままでは私の配信が成り立たなくなる……どうすれば……そうだ!

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