第43話 全力疾走
「さ、行きましょう、美羽さん」
「行きましょうじゃなくてさ! もうちょっとゆっくり行ってよ!」
ビビる私を裏目に、純ちゃんは威風堂々と歩こうとしていた。
「ほら行きましょうよ、先に進まないと終点まで行けませんよ?」
「そ、そうだけど……」
純ちゃんの言っている事は間違いではないけど、だからと言ってこんなスイスイ進むもんじゃないでしょこのアトラクション!
「……怖いんですか?」
「こ、怖いに決まってるでしょ!! わ、私は純ちゃんみたいにタフじゃないし……」
純ちゃんは私を小馬鹿にするような顔を見せた。
もう……純ちゃんったら、さっきの絶叫マシンの仕返しみたいに……。
私がいじけていると、純ちゃんは私の肩を掴んで、もう片方の手で頭を撫でてきた。
「大丈夫ですよ、死にはしません……ここはダンジョンと違って作り物なんですから」
「そ、そうだけどさ……」
「それに……美羽さんはさっきまでの絶叫マシンも余裕だったじゃないですか、僕はビビりっぱなしでしたし……」
「あ、あれはただ落ちるだけでしょうに……」
「でも、あの時の美羽さん、とても凛々しくて……僕はかっこいいなって思いましたよ」
か、かっこいいって……今は純ちゃんがそういう風に見えるけど……。
『おお……なんか尊い…… ¥3000』
『純様……私の頭も撫でて……』
『先に進んで欲しいけど、この光景もずっと続いてほしい……』
私は恥ずかしくなり、純ちゃんの手を払いのけた。
「じゅ、純ちゃん! 早く行こ!」
「お? 吹っ切れました?」
「そんなとこ!」
私は恥ずかしさをごまかしつつ、風を切るように歩き始めた。
「み、美羽さん、待ってくださいよー!」
純ちゃんが私の歩幅に合わせ、横に並んで歩き始めた。
そ、そうだ、別にこれはアトラクション……怖くなんか……。
「ウオオオオオオ!!!!」
「き、きゃああああああああああああああああ!! た、助けてえええええええええええええ!!」
突然、物陰からゾンビのようなお化けが出てきて、私は全速力で走り出した。
「ま、待ってくださいよ美羽さん!」
「無理いいいいいいいい!!」
純ちゃんの制止の声など聞く耳持たず走り続け、気が付くと、純ちゃんと距離がかなり空いてしまった……。
この後、純ちゃんと逸れてしまって、1人泣き叫んだのは別の話だ。
『なんか草』
『美羽ちゃん叫びすぎて笑う』
『怖いはずなのに笑えてくる』




