第42話 天道記念病院
「く、暗いね……」
「懐中電灯が頼りですね……」
係員から懐中電灯を渡され、私たちは中へと入っていった。
作り物だとわかっているのに、アトラクションの中は、本当に廃墟のようで、今にも床が抜け落ちそうな雰囲気を放っていた。
コードがむき出しになっていたり、よくわからない化合物が書かれた瓶が転がっていたり……。
設定上では、この天道記念病院は、収容されていた患者を人体実験の材料に使い、怪物を作り出していたらしい……だが、そこで産み出された怪物たちが院長を襲撃、やがて院長も怪物になり、以後怪物だらけの病院になった……。
このアトラクションのモデルになったゲームは、「世界で一番怖いホラゲー」として、10年くらい前に社会現象になり、猫も杓子もこのゲームを実況配信していた……もちろん私も。
そういえば、そこから少ししてからダンジョンが現れたんだっけ? それで……。
「ずいずいずっころばしごまみそずい……」
……ん? こ、子どもの声がどこからか?
じゅ、純ちゃんの声だよね? そうだと言って!
「じゅ、純ちゃん何か言った?」
「いや、僕は何も? 多分仕掛けですね、ははは」
「ははは、じゃないでしょもう!」
なんで純ちゃんはこんなに余裕そうなんだろう? 私は怖くて仕方がないのに……暗闇でほとんど何も見えないし……。
……こんな暗闇の中でも、ドローンカメラは私たちを鮮明に映していた。
そ、そうだ、ここは宣伝でもしてごまかそう。
「す、すごいねー……このドローンカメラ……暗闇でここまで鮮明に映るなんて、ダンジョンでも大活躍だろうね」
「あはは、そうですね」
……なんで純ちゃんこんなに余裕なの!? 絶叫マシンの時はこの世の終わりみたいな感じだったのに!?
「ウオォォォォォォ……」
「ひ、ひぃ!?」
突然、順路の先から男性の呻き声が聞こえ、思わず純ちゃんの腕に引っ付いた。
もうやだああああ!! 早く出たいよぉ……。
「あはは、なんかすごい声が聞こえましたね」
「す、すごい声って、完全にアレ化け物の声だったでしょ!?」
純ちゃん、もしかしてダンジョンに潜りすぎてそんじょそこらの仕掛けじゃビビらない感じ!? 肝が据わってるなぁ……。
『純様怖くないの?』
『イノジュンタフすぎる』
『美羽ちゃんビビりすぎててなんか安心する』
『美羽ちゃん怯えすぎでしょ』
コメント欄を見て気を紛らわそうとするも、私を茶化すコメントもあって逆に緊張する。
ちょ、ちょっとはみんなも怖がってよぉ……。




