第38話 いいじゃないか
次のコースターは「いいじゃないか」
高速で上下に動きつつ回転もするコースターだ。
「み、見るからにヤバそうなんですけど……」
「大丈夫大丈夫! 早く行こ!」
純ちゃんを引っ張り、早速コースターに乗り込もうとした……その時。
「このコースターに乗る際は、靴を脱いでくださーい!」
係員さんが、私たちにそう呼び掛けた。
そうか、回転するから靴が吹っ飛ばされる可能性があるのか。
これ……靴も外せるのかな?
携帯を操作すると、どうやら靴も外せるようだった、これは助かる。
『美羽ちゃんの生足助かる ¥3000』
『なんかエッッッッッッッ ¥10000』
コメント欄は興奮の声で埋め尽くされていた。
変態しかいないのか……まぁいいや。
コースターに乗り込んだ私たちは、係員さんの注意喚起のとおり、頭と足をしっかりと付けた。
ふと純ちゃんを見ると、もはやどうとでもなれというような表情になっていた。
『イノジュンもはや悟りを開いてて草』
『純様がんばれ!』
コメント欄は純ちゃんの声援で埋め尽くされていた。
「大丈夫? 純ちゃん……」
「……なんていうか、もうどにでもなれって感じです、それに……」
「……それに?」
「美羽さんがいるから……大丈夫なんだろうなって思います」
「……?」
それって……どういう意味?
「ねぇ、純ちゃん、それって……」
『それでは発進します! いいじゃないか、いいじゃないか、わっしょいわっしょーい! いってらっしゃーい!!』
理由を聞こうとしたその時、私たちはコースターが動き始めた。
私たちは常に後ろ向きで、何が起こるか分からない状態、私たちは一体どうなってしまうのか……。
『これセンテンドーランドの中じゃトップだと思う』
『後ろ向きだから余計に怖いな』
『美羽ちゃん脚冷たそう』
『美羽ちゃんの脚、俺が暖めるで ¥500』
コメント欄は私たちを心配する声で埋まっていた。
一部変態による投げ銭があったが、スルーしておこう……。
「み、美羽さん……」
「な、何? 純ちゃん……」
「これ……いつになったら落ちるんですか?」
「多分……もうすぐ……」
後ろ向きなので、いつ落ちるかもわからない、これはさっきの2つよりも別の意味で緊張する。
どうしよう、ここは別の話題で繋ぐか……。
「そ、それよりも純ちゃん、富士山、綺麗だよねー……」
「そ、そうですね……ダンジョンが無ければ完璧いいいいいいいいいいいいい!?」
「きゃああああああああ!?」
トークで繋げようとしたその時、コースターが勢いよく落ちて行った。
落ちると同時に、座席が回転を始め、視点が一転に収まらず、私たちはこれまで以上の絶叫をした。
「あああああああああああ!! 僕たちどうなってえええええええええええ!?」
「なんか声が裏返るうううううううううううううううう!?」
もはや叫びすぎて、声が裏返ってしまっていた。
上下に動きつつ、回転も同時に行われるため、私たちは実況することもままならず、叫び続けた。
そして、あっという間にコースターは終点へと到着した。
「終わり? 終わりですか? はぁはぁ……」
「み、みたいだね……」
もはや叫び続けたせいで、息も絶え絶えで、喉もカラカラの状態になった……。
「純ちゃん……降りたら……ご飯食べよ」
「そ、そうしましょう……お、オススメ……なにか……あります?」
「そ、そうだねぇ……」
私たちは降りるまでトークを繋げた。
『2人の絶叫プロ級だった』
『イノジュンの声裏返っててめっちゃ笑った』
『美羽ちゃん叫びすぎて声小っちゃくなってて笑う』




