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第1話 ダンジョン配信とは

「それじゃ、今回の配信はこれでおしまい! これにて後免!」

『おつみう~』

『これにて後免!』

『今日も良かった!』


 私が配信を終える旨を伝えると、コメント欄では、三者三様の文字が流れ始めた。

 配信画面には「忍者姿の美少女の絵」とコメント欄がデカデカと映し出されている。

 もうかれこれ10年近く同じ光景を見た。

 もはや見飽きてしまうほどだ。


 配信が切れたことを確認すると、私は椅子に深く腰を掛けた。


「はぁ……疲れた」


 ずっとテンションを上げ続けるのはかなりストレスが溜まる。

 長い事やってると慣れてくるものだが、流石に年齢も相まって、疲労が溜まりやすくなってきた気がする。


「はぁ……昨日と比べてまた更に同接者が減った気がする……」


 今日の同接者は「5000人」、投げ銭の額は「123600円」、ここから手数料引かれるから……ざっと10万円か。


「多い方だけど……これでも全盛期と比べたらめちゃくちゃ落ちてる……」


 ……こう見えて私は全盛期、一日の同接者10万人は当たり前の、トップVtuber……「だった」

 私こと「百地美羽ももち みう」は、その業界では知らない人はいないVtuber。

 自分で言うのもなんだが、10年くらい前に発達したVtuber文化の先駆けの一人と言ってもいい。

 ……なんだけど。


「どいつもこいつも……やっぱり世間の注目は『ダンジョン配信』か……」


 ……ダンジョン配信、昨今流行りの配信スタイルだ。

 きっかけは5年くらい前に起きた「ダンジョン」の出現だった。

 理由は不明だが、突如世界中の各地に未知の建造物が出現した。

 世界は各々軍を派遣した、日本も自衛隊を総動員し、調査を開始した。

 ……そしてしばらく解析が進み、そこには「モンスター」と呼ばれる怪物がいて、そいつらを駆除すると未知のエネルギーを秘めた魔石やら、未知の武器やらを落としたんだと。


 ……まるでゲームみたいだった、英語圏では「Video Game Tower」、通称「VGT」と呼ばれ、一般人が興味本位で入ってモンスターを狩りまくるなんて事態も起きた。

 で、そこから発展したのがダンジョン配信の起源と言われている、「VGT Stream」なる配信スタイルだ。


 日本にもその流行が飛び火し、有名配信者たちが自衛隊の規制を掻い潜ってこぞってダンジョンに入って配信を行った。


 無論、警察や政府はそんな危険な真似をやめるよう呼びかけたが、人々は止まらなかった。

 ……しばらくして政府は、自衛隊の人員不足などから猟友会に助けを求めるも、それでも人員が足りなかった。


 そして……最終的にどうなったかと言うと、各地に存在する猟友会が防衛省管轄組織になって、「一般人からダンジョンに入る人を募集する」という事になった。

 反対意見も多数あったが、世間のダンジョン配信の流行りの波に押され、可決してしまった。

 そこからはもう……ダンジョン配信のフィーバータイムだ、猫も杓子もダンジョンに入り、そこで実況を行っている。


 おかげで私たちVtuberは完全にオワコン状態だ。

 人々はゲーム実況なんかよりもリアリティのあるダンジョン実況に流れ、雑談配信をしようにも話が上手いダンジョン配信者なんて沢山いる、一番の強みだった3D配信をしようにも、2次元的なものはもう流行らない。


 私はかろうじて生き残ってはいるが、私と同時期にVtuberを始めた人はほぼ引退、私より後のVtuberも引退するか、渡り鳥のように事務所を転々とするか、歌手などに転向するかのどれかだ。

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