喧騒の街離れ
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
自律神経の調律の為に、明日は参拝したいです。
あぁ……向いてない……。昔はあんなに楽しかったのに、今はもう、体が追い付かない。冗談抜きで歳をとって、冗談抜きで心も変わった。充填しないと……。
精神的、肉体的な枯渇を満たす方法は、割と幾らでもある。物静かな喫茶店に駆け込む事も一つ。木々に覆われた森の中をぼんやりと散歩するのも一つ。神社の神様につらつらと話を聞いて貰うのも一つ。そして私が選んだのは最後の一つだった。
何も言わずに電車を乗り継いで、鳥居を一礼して、挨拶を済ませる。後は大丈夫。基本的にぼんやりしていても、叱られる事はない。
そうして澄んだ空気を肺に溜め込んで、どういう訳だが狂った神経系を調律する。満たされる。この場に居るだけで、何もかもを満たしてくれる。
「あぁ……うぅ……」
「おや、一週間ぶり。随分と疲れた顔をしているね」
呻き声を上げていると、するりとそよ風が頬を撫でる。居心地がいいなぁ……と思ったら、梅香の君が隣に座って、頬を撫でていた。今日も穏やかだった。もうそれだけでいい。それ以上求めない。
私は死んだ顔で梅香の君の顔を眺めると、静かに息を吐き出した。
「お分かりいただけます? 久方振りに大都会出たんですよ。私の目に二十人以上の人が行き交うと、そこで完全にキャパ……容量超えます。情報処理が全く追い付きません。声色も声質もまるで私とは異なる世界です。昔はあんなに大好きで通い詰めていたくせに、今は全然駄目です。それだけ歳をとりました」
あの場所では疲れ果ててしまった。けれども眠ろうとは思えなかった。どちからと言うと気絶に近い。意識が霞んで倒れ果てて、そのまま動けなくなる様な、あの恐怖。
不思議なものである。学生時代は毎日のように入り浸っていた。店を周り、買い物をして、遅くに帰ってきたのに。
「前に比べて、君は随分と口調も、声色も、品位も、心の有り様も変わった」
「それは……良い意味で……でしょうか?」
「勿論。前よりもずっと洗練された。良い歳の取り方をした」
ならば……良いだろうか……今のままで。無理に慣れない土地に染まる必要は無いだろうか。
「これからも、気を付けていきます」
久方振りに会ったあの子は、言動共に、かなり洗練されていた。
声色に乱れが少ない、浮き沈みもない。店員が客に話しかける様に、一定の真っ直ぐな音を飛ばす。
そして口調。前よりも一回り、綺麗な言葉使いを使うようになった。
変わらないのは姿形だけか。中身はかなり変わったね。勿論、いい方向に。
梅香の君が『良い歳の取り方をした』というのは、主に口調から察してます。
前ならきっと『分かります?』っていう言い方。
今は『お分かりいただけます?』です。
小さな違いですが、言い方が丁寧になってます。
ベテランの営業さんって、声の浮き沈みと緩みが少ないんです。必ず一定の、ブレの少ない話し方をするんですよ。
恋人とか友人に対する話し方、口調とはかなりの差があひます。
今の主人公ちゃんは、それに近くなっている。
つまり、慣れた人であっても、不快感を与えないよう、無意識に気を使っているという事。
何処に出しても、決して不敬な真似はしない。
いい歳の取り方とは、そういうことでは無いかと。