元に戻り行く勇者達
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土屋が倒れた所は膝までの浅い所だ。別段無理無く救出が出来、そして日影が大きい池の近くのあずまやまで担いで来れた。
土屋は暫くうわ言のように殺せ殺せと言っていたが、普段の疲れなのか、今剣を振り回した結果かそのまま寝てしまった。暫く有れば起き上がるだろう。
そうこうする内に池の中ではどう見ても体力に乏しそうな3人が力尽きようとしている。
「ウルシュラー!」
笹本氏がくすんだ金髪の女性に駆け寄った。
「あああ恵梨香先生!無理しないでください」
恵梨香と呼ばれた眼鏡の女性を無理やり岸に連れ出した。
雨宮はおかっぱ頭のスリムな女性を引き上げた。
「ふう。全員無事か」
しかしすぐに事態は再び悪化する。今度は化学教師の入江がふらつき始めた。
「「入江先生!」」
雨宮と笹本が走り出す。
「先輩、ご存知なのですか?」
「ええ。あの頃よりお年を召されましたね。先生も」
「へえ。やっぱり化学の先生だったのですか?」
「ええ。実験多めで楽しい先生でした」
入江を担ぎ込んだ所であずまやは満杯だ。次からは木陰にぶちこむしかないが、残る女性は栗毛の長い髪は若くて、太目のベリーショートは力強そうで、そしてベロニカは元よりパワーが有るから。そして弓騎兵として駆け回ってる東雲は止めようが無くてどうにもならない。
しかし、国家連邦政府組が何となく水辺から上がり始めた。
何故か疲れてどっちらけた顔をして上がってきた彼女達は、自分達が何でこんなに暴れていたのかも分からないと言う有り様だった。
「皆さんより僕らは5分先に入りましたから。間もなく落ち着きますよ」
小鳥遊がそう断言した。確かに話している内にベロニカと東雲も同じような目をして帰ってきた。
うなされていたような土屋は脱ぎ捨てた白衣を身に付け、何故かベロニカと栗毛の外国人さんは隣り合わせでベンチに座り、東雲は独り木陰で水筒からコーヒーを注いで飲んでいる。
「やはり皆さんもそうなりましたか。実は私も初めて見た時、服を構わず飛び込んであのようになりました。国籍問わず女性だけです」
「なるほどな」
土屋が羽織った白衣を揺らしながら立ち上がった。予め用意されたサーバーから飲み物を注いでそれを持ちながら演説を始めた。
「これはメスだけに効果を出す何かを撒いてるに違いない。そして多分やられる事により増殖の糧にしているのだよ」
「Ich weiß nicht, aber ich möchte Ramen essen」
栗毛の外国人さんが呟く。小鳥遊が教えてくれた『良く分からないけどラーメン食べたい』だそうだ。
「むしろ心配なのは海にまでこいつらが増えていないかと言う事の方だ。海に出られたら手も足も出ない」
「それは今のところ問い合わせはありませんね」
川村が答える。
「我が身を食わせて増える。それはまた随分な。しかしそれが何故男性に影響しないと?」
「理由は簡単です。その地にはメスないし雌雄同体の生き物しか居ないからです」
全員がほうと頷いたなか、太目でベリーショートの女性と笹本氏は入江に挨拶をしている。
「お久しぶりです入江先生」
「入江先生、三年生の時担任なさってましたね。覚えていますか?叢雲です」
「二人とも覚えていますよ。立派になりましたね」
叢雲と言うのは第6艦隊の女傑と謳われた名将だ。残虐と言う噂も有るが普段は礼儀正しく大人しい人なのらしい。雨宮はちょっと見直した。
わいわいと話が伝わる。何故かこの人達は外国語が分かるようで、外国の皆さんからも挨拶がきた。それを日本語に通訳して貰い、自動的に出来た休憩時間を過ごした。
「Znalazłem to. Mówi się, że kiedy wchodzi do morza, pęka i nie rozmnaża się.」
どうも栗毛の人とは違う言語なようだが、今のところこのマリモは海水は苦手らしい。これは笹本氏が翻訳してくれた。
お互いの交流が進む中、東雲は川村が用意してくれたブラックコーヒーを飲みながら入江と話し込んでいる。何だか深刻そうだ。
雨宮は入江と土屋が力尽きても持っていた剣を回収し、再び人口池に向かう。全員今度は無茶などしない。東雲は岸辺から弓騎兵で、残りは池の端からローラー作戦で倒して行く事になった。何故か土屋とウルシュラと呼ばれた金髪を肩口で引きちぎったような髪の人は気があったようで、笹本氏を通訳に随分話していた。
「やはりこの星はそうか」
「もしかしたら今地球は最大のピンチかも知れない」
「高温で焼けば大丈夫かな?どう思いますか?」
外国人さんのパソコンを覗きながらわいわい言っている。入江も共に話し込んでいる。狩りの時はこんな調子だった。
話し込んでいた東雲はシルバーと組めば絶好調だ。人数も適度に揃っている。雨宮や小鳥遊も池に入っての冒険をしている。戦力に不足はない。特にベロニカと東雲には宇宙軍の皆さんも目を引いている。
ベロニカのその力強さは突入部隊に欲しいと。東雲の弓騎兵ぶりには地域制圧の要になり得ると大騒ぎだ。
軍人さんはやはり軍人の目線で物を考えるものなんだなぁと思わざるを得ないが、雨宮も評価は高かったようだ。
熱心にして集中力が高い。役に立ち得る。
だそうだ。
どうもカトマンズ第8艦隊より先、ヨークシャー第9艦隊創設にも話を広げたいらしい。
そうなるとぼちぼち役に立つヒトなら拾いたいだろうなとは思わされる。国家連邦政府宇宙軍はどうやら今尚人材不足は顕著らしい。
昼からは更なる増援も来た。小鳥遊と言う人物の悪友連やら栗毛お姉さんの仲間内の海外メンバー。更にはおかっぱ美人さんの彼氏と見える小柄な男性だ。
これらの増援は池から流れる川から。元々居た人達で池から川に向かい、ボカボカ殴り果たし、遂にマリモを全て仕留めた。
勇者の書
足だけを水に浸けるだけで疲労度は半端ない。夜の冒険は出来なかった。
入江先生は必ず絶対車に着いて来るように東雲に厳命した。
東雲に何があったのか分からない。
マリモの掃討は国家連邦政府宇宙軍が来た。思いの外皆気さくだ。
栗毛のお姉さんと小鳥遊さんは恋人同士。おかっぱ美人さんと応援に来たチビさんは恋人同士。そして金髪さんと笹本さんは夫婦で、既に子供も居るらしい。
身の回りの女性を見て、宇宙軍は羨ましいとは思わされる。
雨宮の勇者の書は、絶対門外不出だ。
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