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巻き込まれ女子と笑わない王子様  作者: 来栖もよもよ


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進路と答え

「……え、王宮の仕事を辞めるのか?」

「はい、来月いっぱいで」

 本日の休みはナイトと朝から学者のベルハンのところに行った。

 仕事を辞めても月に一回は訪問すると言うことで話はついた。

 その後ケヴィンの母キャスリーンに呼ばれ、彼女の家へ昼食に訪れていた。

 捨て猫だったパフは、人間と暮らしていた経験もあってキャスリーンとも上手くやっているらしいが、心配性の彼女が外に出さないためナイトぐらいしか遊び相手がいない。

 ナイトから聞くと、

『まあ本人も縄張り争いとかでいじめられてたし、エサを探すのも大変だったみたいで、別にどうしても出歩きたい訳じゃないらしいけどな。ただ留守番とかで長い時間一人のことが多いから少し寂しいらしい』

 と話していたそうで、遊びに来た時には沢山話し相手をしたり遊んだりするようにしているようだ。

「まあ王宮の中なんてお偉いさんの沢山いる場所じゃ気疲れもしちゃうわよね。それでトウコは別の仕事を見つけたのかい?」

 キャスリーンお手製の美味しいラム肉のシチューと丸パン、サラダの昼食を済ませると、最近お気に入りだと言うアップルティーを淹れてくれたキャスリーンが私を見た。

「ええと、私は迷い人なので、この国の人たちと色々生活スタイルや物の考え方が違ったりするので、どこかに勤めるのは合わないかも知れないと国王陛下が仰って、小さな店でもやるのがいいのではと勧められまして……辞める際にまとまった支度金を頂くことになりました」

 別に相手に合わせるのは苦ではないが、「やはり見知らぬ国で暮らすのだからストレスも溜まるのではないかと思ってな」と気遣ってくれる国王はやはり人間が出来ている。

 あのツヤツヤ頭とボリューミーな体は優しさと気配りで出来ているに違いない。

「あれま。王様も太っ腹だねえ。ま、迷い人だもの、そのぐらいしてあげてもいいよね。──それで、どんな店をやるんだい?」

 キャスリーンが身を乗り出してキラキラした目を向けた。ケヴィンも興味深げな眼差しだ。

 私はチラリとナイトとパフの方を見て、猫カフェをやりたいんです、と小さく告げた。

「……猫カフェ?」

「はい。せっかくナイトたちのために買った燻製窯もあるし、犬や猫用のおやつを作って販売したり……思ったよりもお店って安く借りられるようなので、ナイトに頼んで協力してくれる猫ちゃんたちを何匹か雇って、軽食を食べながら猫で癒されるカフェなんていいかなあ、って。私の故郷では普通にあるんですけど、この国にはないんですよねえ」


 ここに来た時には自分で店をやりたいなんて気持ちはなかったが、ナイトを通じて野良猫とも交流するようになった。

 去勢や避妊手術はあるようだが、NPO団体などはないので、家で飼っていて子供を産まれると困る人たちしか行わない。結果、野良猫が子供を増やし、町中は割とあちこちに猫がいる状態だ。

 だが数が増えればエサが満足になくて亡くなる子も少なくない。

 私が全ての猫を飼うなんて無理だし、国のシステムをどうにか出来るなんて思ってはいないが、せめて身近にいる子たちぐらいは食事をする機会を与え、お金が貯まったら少しずつでも避妊手術をしたりして、不幸な亡くなり方をする子を減らしたいのだ。私はナイトのお陰でこの国に来ても寂しくなかったし、強く生きて行ける気持ちを持てたのだ。

 元から猫好きではあるが、今はそれだけではない、猫に対する恩義のようなものが私の中には存在する。あとは単に癒やされる。理由なんて単純で構わないではないか。


「まあ、そんなカフェあったら素敵ねえ。ケヴィンに聞いたけど、あなた料理も得意なんですって? 美味しいランチを作ってくれたって。是非食べてみたいし、出来たら絶対行くわ」

「あはは。そんな大したものではないですが、是非オープンの際にはいらして下さい。もちろんケヴィンさんもですよ??」

「ああ。……だが、ナイトも辞めてしまうのか? うちの隊ではすっかり隊の一員になっているんだが、寂しがるぞあいつら」

 パフと話をしていたナイトが、ケヴィンの話が耳に入ったのかすたすたとケヴィンのところへ歩いて来た。

『待て待て、俺は辞めねえよ? トウコの方と両方やるってだけだから心配すんな。ま、俺様がいないと町の危険も減らねえしな! 大変だぜえ全く、はっはっはっ』

 そう言いながらてしてしと革靴を叩くナイトをたしなめた。

「ちょっとナイト、あんたの意思を理解してくれるためにボードも作ってくれたのに、何を偉そうなこと言ってるのよ」

『あ、そりゃそうだった。すまん』

「ナイトは辞めないそうなので、これからもよろしくお願い致します」

 ケヴィンに頭を下げる。

「そうか。良かった。こちらこそ頼む。……ああトウコ、そろそろ帰らないと日が傾いて来てる」

 窓の外を見ると既に夕暮れだ。

「いけない。食材も買って帰らないと。それじゃキャスリーンおば様、また遊びに来ますね」

「ああ気をつけてお帰り」

 ナイトにも声を掛け、ケヴィンと共に表に出る。

 暫くケヴィンと世間話をしながら歩いていると、少ししてケヴィンが私に尋ねる。

「……あのなトウコ、ちょっといいか?」

「はい?」

「出来れば、その、答えがいつ頃出るのか聞いてもいいかな」

「答え……あ」

 以前彼から好意を告白されたのだが、恋愛経験のない私はまずは理解し合うため友人としての付き合いを、と答えた。

 ケヴィンは快く受け入れてくれ、ここ数カ月親しい友人として休みに食事に行ったり、パフに会うためキャスリーンおば様の所へ行ったりしていた。

 この関係が心地よく、私は以前受けた告白を棚上げしてしまっていた。ずるいな私も。

「──すみません。お店のこともありますし、ちゃんと考えて王宮の仕事辞めるまでにお返事しますので、あともう少しだけ待って頂けますか?」

「分かった。すまないな、急かしてしまって」

「いえ私の方こそ」

 お互いに謝っているうちにお互い笑えてしまって、気まずい思いはせずに済んだ。

(私ももう一九歳になるのだから、しっかりしなきゃな色々)

 自室に戻ってから反省したが、何故かそこで蘇った記憶は、何故かナイトを嬉しそうに撫でているジュリアンの顔だった。





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