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転生したら大好きな悪役令嬢を断罪する筈の王子だったので勿論婚約破棄せずに幸せになる所存。なお、聖女候補は勝手に自滅の模様。

作者: 豆ははこ

初投稿です。宜しくお願い申し上げます。

「ナーハルテ公爵令嬢、聖女候補に対する平民差別とは愚劣なる行い!ここで第三王子たる僕との婚約破棄を……」

 テンプレートな断罪風景。来月には卒業式を迎える王立学院の卒業の前祝い、祝賀ダンスパーティー。卒業式後のパーティーよりは軽いものではあるが、だからといって断罪からの一方的な婚約破棄をしていい状況ではない。

 ただし、テンプレなのは王子としな垂れかかった聖女候補のみ。断罪される筈の公爵令嬢は凛々しく美しく、その周囲を同様に美麗な淑女達が囲んでいる。公爵令嬢は筆頭公爵令嬢にして、法務大臣令嬢。周囲を囲む華たちは騎士団団長令嬢、魔法庁長官令嬢等……それぞれがこの国の重要人物達のご令嬢である。

 そして、対する王子は継承順位最下位の第三王子。一応こちらにも囲む者たちはいるものの、法務次官令息、騎士団副団長令息以下略と、公爵令嬢を囲む皆様方より後ろ盾、実力、美貌、才能そのすべてが劣る。しかも、第三王子を含めて全員がお願いして婚約を結んでもらった立場である。これが乙女ゲームなら、ぜひとも悪役令嬢の皆様方と恋をしたくなること請け合いなのだ。


 そう。ここは乙女ゲーム『キミと歩む道筋』略してキミ道の世界。

 この乙女ゲーム、ヒロインの聖女候補はともかく、攻略対象が全て外見以外しょうもないというある意味すごいゲーム。しかし、悪役令嬢が、皆さん、素敵!なのでゲーム会社には悪役令嬢もといイケメン令嬢との乙女ゲーム?にしろ!というリクエストが相次ぎ、後の追加ディスクで学院卒業後に皆様方が女王や女性法務大臣、騎士団女性団長などになるサクセスストーリー編が発売された程なのだ。

 それはいい。私も喜んで舞い踊って何度もクリアした。

 ちなみに私が一番惚れ込んだのは筆頭公爵令嬢にして法務大臣のご令嬢、聡明にして美しく、お心ばえも最高のナーハルテ様。

 だからこそ、成功編が嬉しかった反面、(本編でナーハルテ様を幸せにして差し上げたかったなあ)という思いは残ってしまった。そう呟きながら何度めか忘れかけたクリアをしていた時、

『では、幸せにしてあげて下さい。』という声が聞こえてきた、と思ったら何故か体が浮いていた。浮きながらあれよあれよという間に住宅ローン残り25年の中古2LDKマイマンションの白い壁に吸い込まれ、よく分からない空間をかなりの速度で移動させられた。

 移動中に声の主は私を含めたキミ道への思い入れが生み出した精霊さんで、私を異世界のキミ道ワールドに転生させたいという。その世界ではイケメン令嬢の皆様方が正規ルートで幸せになれる可能性があると言われればやる気が出たが、私のいた現世で私は行方不明者になったりしないのかと訊いたらその辺りはきちんと対処してくれるという。

『そもそも、大好きなゲーム世界に転生して頑張ってます!と伝えたらそうか、頑張ってねと返して下さるご家族でしょう?そういう人を選んだつもり』とは精霊さんの弁。確かにその通り。ちゃんと大学を出て就職して生活できていたらやりたいことをしたらいいよ、という家族や友人たち。私という女性に対する理解が深い人々。ありがたい限りだ。会社やマンションのローン残高云々も何とかしてもらえるらしい。だとすれば、両親なり姉なり姪っ子ちゃんなりに遺産らしきものも遺してあげられる。ならば、行くに決まっている。レッツ異世界。


 そして冒頭に戻る。「婚約破棄……する訳ないでしょう!ナーハルテ様のこの美しさ!賢さ!砂色の髪の毛は煌めく海の砂の色、赤い瞳は焼ける炎の輝きとその優しくも気高い心ばえを映して輝いて!そんな方と婚約できただけでも幸甚なのにお願いした立場で破棄?どこの馬鹿野郎ですかそいつは!」

 我ながら美声。そう。このゲームの攻略対象達は外見のみ。声は外見に含まれます。

 ……て、ええ?私、あの、馬鹿野郎こと第三王子に転生?いやそれは転生了承しましたけど。攻略対象だなんて聞いてませんよ。精霊さん?

『安心して。とりあえず貴方が第三王子に転生、上手くいったら次々に他の攻略対象も了承を得て安全万全に転生してもらう計画でね。攻略対象のスペックはきちんと爆上げしてあるからイケメン令嬢ちゃん達と切磋琢磨しながらラブストーリーを展開していってちょうだい。研鑽を積めば学院での学業を継続することも可能よ。何かあれば、精霊さん、て呼んでくれたらなるべく対応するから。でもしばらくは次の攻略対象候補選定で忙しいなあ。とりあえずお幸せにね!』

 えーと。とりあえず状況は理解しましたけど。あ、ヒロインこと聖女候補の顔が崩れてる。可愛いけれどもかなりまずい表情。

「王子殿下。先ほどのお言葉ですが、婚約破棄というのは?」

 ナーハルテ様のお声。ぴんと張りのある、でも可愛らしさもある美声。素敵。ああ、うっとり。……じゃなくて!

「申し訳ない。ナーハルテ公爵令嬢、貴方が平民である聖女候補に対して愚かな差別行為を働いていると噂を捏造した者がいてね。その者と周辺を油断させるため、やむを得ずこのような茶番をさせてもらった。……騎士諸君!」

 継承順位は低くても、王子は王子。警備の騎士さん達が素早く移動してくれた。

「学内の映像水晶のこの日時をすぐに確認させてくれ。そして聖女候補の再教育を学院長先生から聖教会に依頼して頂こう。」


 周囲がざわついている。あの阿呆…じゃなかった、第三王子がまともだ……ナーハルテ公爵令嬢の足下にも及ばないどころか王族なのに選抜クラスに入ることさえできなかった伝説の王子なのに……皆さん、聞こえてますよ。貴族階級だったり優秀な平民さんだったりするのにいいんですか本音漏らして。まあ全部本当のことだけれどね。

 とりあえず映像水晶の確認をしてもらえば、第三王子を除いた攻略対象に聖女候補が「貴方だけにご相談します」とナーハルテ様からの差別行為に悩まされていると相談しているところ、差別行為を行っているのが下級貴族達であることが確認できる筈。当然だが下級貴族がナーハルテ様から命じられたなどと申し出てきたらそれもぶっ潰すことは可能だ。ナーハルテ様のファンを舐めるなよ。

「王子殿下、確認が取れました。」

 騎士さん達に指示を出し、攻略対象達と聖女候補に映像水晶を確認させる。「僕と君だけの秘密の相談の筈じゃなかったのか!」というやりとりが聞こえるが、知ったことか。こんな不確実な根拠でナーハルテ様を断罪しようとするなんて本当に馬鹿王子とその他大勢。あ、馬鹿王子、今は私だ。恥ずかしい。

 該当する下級貴族達は控え室に送ってもらう。皆大人しく俯いて出て行った。ナーハルテ様に冤罪をかぶせる気力など既にないらしい。もともと恐れ多くてそんなつもりはなかったのかもしれないけれど。まあ、卒業延期は覚悟してもらおう。あとは聖女候補に一言お説教かな。

 第三王子から無理やり引き剥がされたヒロインさん、きょとんとしている。顔面の修正ができたらしい。

「え、でも、貴方はあたしと婚約し直すのよね、王子様?」

 ――この状況でそれを言うかな。


 そこに一喝。

「お黙りなさい。」

 ぴしり、と扇で指されて固まる聖女候補。

 ナーハルテ様、格好いい。

「貴女はご自分が聖女候補としてこの学院で学ばれるお立場ということをお忘れですか。平民差別などという愚かしい行為を看過してしまったことは貴族階級に属する者としてわたくしもお詫び致します。ですが、異性の方々、それもご婚約者がいらっしゃる方々にご相談という行為は正しいものではございません。少し冷静におなりあそばせ。皆様方もそのように。よろしゅうございますか、王子殿下?」

 え、あ、はい。この場で一応一番身分が上の私が命じればよろしいでしょうか。

「婚約者がありながら聖女候補と親しく密談を行った君達、それを繰り返した聖女候補をとりあえず学院長室に。学院長先生宛には伝令鳥を飛ばしておくよ。」

 飛ばしておくよ、とは言ったけどゲームの中ではかなりのレベルにならないと使えなかった伝達魔法。魔力で伝令鳥を生成して…できた!よかった。

 凛々しい白色の伝令鳥を学院長先生の執務室に飛ばす。程なくして、伝令鳥が了承の羽色、朱色に変化して戻ってきた。かなりのレベルの術式だが、今の第三王子には可能なのだ。また周囲がざわついている。

「えー。なんで馬鹿王子が伝令魔法なんて使えるの?学年首位で美貌の才女様が婚約者だとお疲れになりませんか?貴男の隠れたお力はあたしだけが知ってますとか言って癒してあげてたのも全部見抜かれてたの?他のお坊ちゃま達に筆頭公爵令嬢に差別されてるとか嘘ついて、少しずつ王子に告げ口してもらってたのも?えー。いいのは顔だけじゃなかったの?勿体ないことしたぁ!」

 すごい。聖女候補、全部自白。馬鹿王子って言っちゃってるし。攻略対象達はイケメン令嬢様達に一縷の望みをかけて視線を送っているけど、絶対後で絞められるパターンだな。こいつら、精霊さんが中身を入れ替える前に全員断罪とかにならないだろうな。


「王子殿下、恐れながら申し上げます。」

 ナーハルテ様の親友のご令嬢騎士団団長ゴールド公爵のご令嬢、別名冷徹筋肉さんが挙手している。脳筋とは対極の賢い筋肉女子。愛用の扇は確か30キログラム。それを羽の様に操るのだから、本当に敵に回したくない。

「発言を許します。」

 私が合図すると、優雅に礼をして、冷徹筋肉さんが語る。要するにナーハルテ様以外のイケメン令嬢の皆さんが攻略対象達をまとめて絞めてとっちめるので、ナーハルテ様と私第三王子はパーティーを継続してくれと。それを優雅なお言葉で、立て板に水のごとく語られた。いやあ、願ったり叶ったり。攻略対象達がびびりまくっているけれど、知ったことか。聖女候補は哀れ、気絶した。イケメン令嬢達の目力、強い。


 ―――ナーハルテ様と私以外の高位貴族と聖女候補が会場を後にした。自主的にではなく連行とも言えるけれども。それでも2人で伝令鳥にお礼を言い、会場全体に清浄魔法をかけて、場内スタッフに指示を出し、断罪前の光景を一応取り戻させた。今は皆、会食なり歓談なりダンスなりを楽しんでいる。


「本当に驚きましたわ。伝令魔法を使われただけでなく、会場全体に清浄魔法をかけられたのに、涼やかなお顔をされていらっしゃるのですから。」

 うふふ、と微笑まれるナーハルテ様、可愛い、素敵、最高!

 ええと、無実の公爵令嬢に対して断罪と婚約破棄をしかけた馬鹿王子に向ける表情とは思えないのですが。どうしよう。

 そもそも、本物の馬鹿王子はどこにいったのだろう。このまま私がナーハルテ様を幸せにしてさしあげたら、また入れ替わったりするのかな。その辺も後で精霊さんに聞いてみないと。

「どうされました?やはりお疲れなのでしょうか。」

 あ、まずい。ナーハルテ様の可愛らしさに現実逃避してしまった。バルコニーに二人きり。防音防壁魔法はナーハルテ様がかけてくださった。このくらいはさせて下さいませ、っておっしゃっていたけれど、このくらいな魔法じゃないんだけどね。

「今の貴方様はわたくしの目をしっかりと見てくださいますのね。」

 赤い瞳に白銀の瞳が映る。いや、かなり頑張って見てます。尊さが極限状態。あれ、()()って……。

「第三王子殿下とご友人方が聖女候補様を大切にされていたのは周知の事でした。ですが、まさか、わたくしを原因として婚約破棄をされるおつもりとまで考えが及びませんでした。何しろ、聖女候補様とは直接お話したことすらなかったのですから。」

 そうなのだ。ヒロインとイケメン令嬢様達にはゲーム内での接点が皆無。学院長先生から聖女候補が編入するから何かの時には力になってあげてほしいと言われた以外の事は何もない。

 先ほど確認させた映像水晶の同日付同時刻には皆様登城や授業や訓練といった大切な業務をこなしておられたのだ。

「婚約破棄なんてするはずがありません!私は貴方を幸せにしてさしあげたいと心から思っております。」


「今の貴方様は……そう……おっしゃって……」

 ほろほろほろ。

 え、泣かせてしまった。大好きな方を。

 美しい方の涙は本当に美しいのだなあと思う。

「泣かないで下さい。貴方が泣くのは嫌です。」

 正直に言ったら微笑まれた。花が開くような、とは本当にあるのだ。

「淑女失格かもしれませんが、嬉し涙とはうれしいものですのね。これから色々、貴方様のことを教えて下さいませ。異世界のお方。」

 はいい?ご存じだったの、ナーハルテ様!

 ――と尋ねようとしたら、防壁魔法を無視してふわふわもこもこの癒し系の伝令鳥がパタパタもこもこしながら飛んできた。

 うわ。かわいい。もふもふ。触りたい。と思って手を伸ばしたら1件の新しいメッセージがあります、ピー、という再放送のドラマで聞いたことのある留守番電話のメッセージ。

『ごめーん言い忘れてた!馬鹿王子に代わって異世界から貴方の事ものすごーく大好きな人が転生してくるから違和感あっても愛ゆえにだからフォロー宜しく!ってナーハルテちゃんに言ってあるからねーて教えてなかったよね。なお、このコメントはラブストーリーがスタートした際に再生されますが、精霊さんはしばらく対応はできません。あしからず。でも、このかわいいもふもふちゃんは差し上げます。2人の連絡用として活用してください。門出へのお祝いです。』

 あの精霊さん、昭和世代なのかな。

 いやでも確かにこのもふもふちゃんはかわいい。

 かわいいすずめをふわっふわにした感じ。ふわふわすずめちゃんだ。

「かわいいこの伝令鳥は……異世界の鳥ですか?」

 ナーハルテ様もキラキラした目ですずめちゃんを見つめている。私も普通に使いこなしていたけれど、この世界の伝令鳥は神秘的な感じで格好いいから、このふわふわすずめちゃんはこちらの世界では異世界っぽいのかもしれない。

「あ、はい。でも、とりあえず」

「はい。」

「踊って頂けますか?ナーハルテ様。」

 すずめちゃんと一緒に、ナーハルテ様にお願いしてみた。この子もナーハルテ様のことを好きになったみたいで、嬉しそうにパタパタしている。

「謹んでお受け致します。」

 完璧な礼。どきどきする。でも、たぶん、大丈夫。

 ここは異世界だけれど、ここには大好きな人がいて、私はここで、この方と幸せになるから。

 ちゅんちゅんちゅん?(だれかをわすれてない)

 あ、もちろんふわふわすずめちゃんもね!

ブクマと評価を頂きました。本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ゲーム内転生と悪役令嬢救済をベースに、わかりやすく物語を展開しつつも、ナーハルテが自分のことを異世界転生者と知らされているなど、意表をつく意外性があって展開の起伏を感じながら読み進めることができました…
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