序章
いつも通りの気怠い火曜日朝7時。青年は踏み慣れた自宅の階段を踏み外した。ギャグ漫画の如く転げ落ち苦痛に顔を歪める彼を、母親が訝しげな表情で見下ろす。
「…あんた何やってんの?」
「ッつ~!いやァ…なんか、こう、目測を誤ったというか何というか…ああィつつ…。」
彼は特段抜けたところのある青年というわけではない。自宅の階段を踏み外すのだって今日が初めてだ。名前を東間ケイ(あずまけい)という。昨日17歳の誕生日を迎えた、何処にでもいる男子高校生だ。
「バカなことやってると遅刻するよ!さっさと支度しな!」
母親と容赦なく時を刻む時計に急かされ、ケイは身支度を進める。朝食を摂り、身だしなみを整える。
その最中、彼は我が身に起きた異変に気付いた。
茶碗に残った米粒を捕らえたはずの箸が空を切る。ゴミ箱にちり紙を投げ入れるのにコントロールが定まらない。これは…距離感が狂っている…?
…否。それどころではなかった。
「…左目が…見えない…?」
ケイは何度も交互にウインクをしてみる。間違いない。左目が完全に光を失っている。彼は酷く狼狽した。階段を踏み外したことに始まり、今朝からなんとなく距離感が掴めないような感覚はあったのだが、まさか原因が失明だったとは。人間は両の目でもって物を立体視することが出来る。それが突然に半分遮断された為に脳が混乱を起こしたのだ。
あまりに突然の出来事に、涙が勝手に溢れてきた。ケイは錯乱状態で母親に泣きついた。最初こそ迷惑そうに流していた母親も、息子のただならぬ様子を感じ取り深刻な表情へと変わった。
学校は適当な理由を付けて欠席し、すぐに病院へ向かった。訳も分からず片目を失明して、ケイは頭がおかしくなりそうだった。
検査の結果、目や脳に異常は見られなかった。何度も状況を説明したが、医学的にはケイの左目は問題なく見えている状態らしく、しつこく泣きじゃくる親子はついに病院を追い出されてしまった。
--ケイの左目は何故光を失ったのか、彼はまだ知らない。ましてや、これがこの世界に齎される大いなる変革の始まりに過ぎないことなど…
「…シるヨシも、ないよねぇ?くふふ…。」
作品をご覧いたただきありがとうございます。
唐突に異能力バトルものを書きたくなり、ノリと勢いでアカウントを作り、ろくに設定も考えないままに書き始めてしまいました。基本的に思い付きで書き進めていくことになるかと思いますが、ストーリーが破綻しないように注意を払いながらゆっくりとやっていきます。
また、何を隠そう筆者はこれが正真正銘人生初執筆作品な上に、特にものを書いたり読書をするのが好きな子どもでもなかったものですから、筆が遅い&文が稚拙、おまけに展開もヘタクソだと思います。徐々に改善できるよう努力しますので、温かい目で見守って頂けると幸いです。
どれほどの方の目に留まるかは分かりませんが、色々と絞り出してマイペースで進めていきますので、もしよかったら応援してやってくださいまし笑
ではまた。