最強な俺氏、1人になれません。
家に着いた。
行き道では『第参天』の神楽の話をしていた。
なんとも天真爛漫な女だが幼馴染だからもうあの鬱陶しさにも慣れてしまった。
「今日の晩飯はハンバーグなんだが大丈夫か?」
「あくちんの料理はマジでうめぇからなんでもいいぜ。好き嫌いもないしな。」
「りょーかい。作ってる間に風呂はいってこいよ。」
「サンキュー。ほんじゃお借りしマース」
じゃあやるか。
手慣れた作業でハンバーグを作っていく。
他のおかずは朝に食べたサラダと、炊いておいた白飯。それと暖かい味噌汁。豆腐たっぷりだ。
10分程度で作り終わり、風呂上がりの凪を呼ぶ。
「できたぞー。」
「はいよー。」
「それでは。」
「「いただきます。」」
うん。なかなかに美味い。
我ながら流石だな。
「うめぇ…やっぱりカップラーメンとかじゃダメだな。これ食ったら他のもん食えねぇぞ。流石教養ランクEXだな。」
「あんまりランクの話はするな。俺が好きじゃないのはもう知ってるはずだぞ。まぁ美味いと言ってくれるのは嬉しいよ。」
「すまんすまん。でもまぁ料理が上手いのは事実なんだからいいじゃねぇーの。ったく前代未聞のSS以上のランクを容姿、武闘、知能、競技、教育の全ての分野で取るんだからすげぇよなほんと。」
「だから…まぁでも自分ではあんまりそんな自覚はないんだよな。凪は確か全部がSSだよな?」
「ああ。これでもすげぇはずなのにな、お前に抜かれてるんだよ!まぁ腹立つけど友達だからな。素直に褒めるよ。あくちんはすげぇ。」
「サンキュ。神楽が元気にしているのは分かったが、仁と夜美は何してんだ?」
「まぁ夜美はまだ峯光のじっちゃんの所に居るみてぇだ。まだ恩が返せてないとかなんとか。そんで仁は誰が探せんだ?あいつは『闘課』の全員係で探しても探せねぇくらいの隠れんぼバカなんだぞ?」
「ま、そうなるよな。なんとなく2人とも察してはいたよ。」
「じゃあ聞くなよ…」
「神楽はこれからどうするんだ?」
「え?あくちん聞いてねぇの?」
「え?なにが?」
「神楽も『帝条』にいんぜ?」
「は?」
「ひ?」
「まじか?」
「まじ。」
あいつが『帝条』に行ったら校舎が、いや、東京が滅んじまう!!
「ば、ばかか!お前らは!あいつを野放しにしたらあいつがどうなるか…連絡先知ってんのか?ちょっと連絡させろ!おい!」
「わ、分かった分かった!どうしたんだ?!あくちん!あいつは最終任務の時に言ったあくちんの一言でちゃんと落ち着いてるって!」
「あ…そうか。良かった。」
「あの言葉は俺もぜってぇ忘れねぇ。『1人の迷惑が全員の迷惑になる。それを自覚してない天人は天人ではない。天照グループ以下だ。』だよな。」
「ああ。よく覚えてるな。最後だったからな。当たり前のことを言ったまでだが俺達には当たり前なんて言葉はない。他の同年代は俺たちのような人間が当たり前じゃないからだ。つまり相対的に俺達もその当たり前に近づいていかなければならない。だから言ったんだ。」
「なるほどな。あくちんの優しさが詰まった一言だな。」
「うるせぇ。俺も風呂はいったらもう寝るぞ。」
「おう。俺は床でいいからあくちんはベッドで寝ろよ。」
「いやそれはいかんだろ。」
「いいっていいって。任務の時は全員コンクリートで寝たりしたじゃねぇか。それに比べたらカーペットなんて布団みてぇなもんだよ。」
「ま、それもそうだな。まぁ掛け布団は貸すよ。」
「おう、サンキュ。」
そう言って風呂に入り、2人で眠り着いた。
☆
次の朝、いつもより早く起き自分と凪の飯の準備をする。
いつものバタートーストとコンソメスープ、そして目玉焼きと今使い切ったサラダだ。
サラダもまた作らないといけないな。
そして凪を起こしに行く。
「おい、凪。学校行くぞー」
ほっぺたをぺちぺち。
「う、うん?あ、おはよぉ、あく、ちん。」
「おう。おはよ。飯食うぞ」
「はぁーい。」
2分ほど寝ぼけている凪を叩き起こし、リビングに連れていく。
飯を食べてもらい一日のエネルギーを蓄えてもらう。
現在の時刻は7時30分。
余裕である。
それから10分程度で飯を平らげ、制服に着替える。
しかし凪は髪のセットがダメだとかなんとかで少し出遅れている。
俺が昔使っていたワックスを貸してあげ、なんとかなったようだ。
「てかあくちん、いっつもその髪と伊達メガネだよな。ほんとイケメンなのに勿体ない。」
「いいんだよ。中学の時に痛い目見たから。お前も知ってるだろ。わざわざ都内じゃなくて離れた場所に『帝条』作った理由。」
「もっちろん。ほんと滑稽だよな。女に気に入られすぎて引っ越したなんてな。あははっ!」
こいつ…今度まじでボコボコにする。
そうこうしていると7時55分、出発だ。
☆
俺達が学校に着いたと同時にクラスが違うので別れて教室へと向かう。
ふと思ったが神楽は何組なんだろう。俺的にはスポーツ、武力予想だな。容姿だったら凪が言うはずだし、知能はあいつバカだからな。
教室へと入り、席に着くと後ろの方から上履きの音が近づいて来るのが分かる。もちろんその正体は彼女だ。
「お、おはよ。阿久斗くん。」
「お、おはよ。西城さん。」
一応クラス内では敬語で話すようにすると西城には伝えている。なぜなら陰キャとぼっちを演じることができないからだ。
「うん。そ、それで今日のお昼空いてる?良かったらお昼ご飯一緒しないかしら?」
「うん。いいよ。中庭にでも行こうか。」
「やった!じゃあまたね!」
るんるん〜♪と言うような擬音が体から溢れんばかりに出ている。
すると他にも話しかけてくるクラスメイトがいた。
「おい、陰キャぼっち。亜美花に気安く話しかけるな。天才組に入ったからって図に乗るなよ。」
いやいやいや、あなたの目は節穴かなんかですか?
それかそれ義眼なんですか?見えない式の義眼ですか?どうして俺から話しかけてるみたいな言い方なんだよ。
「あぁ、ごめん。話しかけないようにするよ。」
「ふん。それでいいんだ。大人しくしておけ。」
ほんとに俺って、
「おーい、あくちんー。話があんだけどどこにいんのー…あ!いたいた!おーい」
目立たないでいられるの?