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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第十話

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アルミナ侵攻(1)

 ゼフォーン解放軍(XFi)が電撃的な侵攻を行ったのは、和議交渉決裂から一ヶ月後のことだった。アルミナ側の第5ジャンプグリッドに進出したXFiは警備要塞へと猛然と襲い掛かったのである。


「で、出た! 銀色の死神だぁ!」

 爆炎を避けてフォトンブレードを鈍く輝かせながらパシュランが姿を現すと、敵パイロットが悲鳴を上げる。

「他人様を幽霊か何かみたいに言うんじゃねえ!」

「幽霊のほうがまだマシだぁ!」

「手前ぇらどうしても斬られてえんだな!」


 大出力の推進機(ラウンダーテール)が重たい銀色の機体を押し出すと、跳ね上げられた力場剣はショルダーユニットを縦に割る。ひるがえった刃が反対の肩も割ると、パシュランは頭部を踏みつぶしつつ後方から迫る敵機の腹部へ剣身を突き込んだ。

 上からのビームを紙一重で躱し、突進する相手を横薙ぎの一閃で上下に真っ二つ。蹴り飛ばしながら前に出、バルカンファランクスの細いビームを周囲にばら撒く。ジェットシールドをかざして踏みとどまるファーレクに一気に近付き、視界を奪われている相手の頭部を刎ね飛ばす。反射的に回避しようと加速した敵機は僚機の狙撃の的でしかなかった。


「お兄ちゃん、南天方向が厚いから回ってって!」

 戦気眼(せんきがん)で、閃光を貫いて走る金線を察知して回避したリューンは、フィーナのナビゲートに耳を傾ける。

「下だと? 何やってやがる」

「元組織連合の人たち。宇宙戦闘の経験浅いから仕方ないの!」

「しゃーねえな。一人で突っ込めってか?」

 北天方面もまだ激しい戦闘光に包まれている。

「友軍は手が空き次第回るから先行! いい?」

「あとから来たって終わってるぞって言っとけ」

 ビームを断ち割りながらカノンごと敵機を両断すると、パシュランを足下へ落とすように加速した。


 警備要塞は沈黙している。急襲に反応が遅れたのもあるが、非戦闘宙域方面からの攻撃に反撃ができない所為もある。宙域内へとビームが流れるのを怖れているのだ。

 それを利用してXFiは半包囲陣形で攻略を始めたのだが、南天方向はかなり乱れているように見えた。ターナ(ミスト)の影響で測距の難しい戦場では視覚の距離感に頼るしかないが、輪郭が明確に見え過ぎてしまう宇宙空間では極めて大きいものを目の前にするとそれが狂ってくる。近くにあるのか遠いのか感覚的に分からないために、慣れないうちは突っ込み過ぎてしまったりするのだ。


(乱れてんな。距離詰めないと敵味方の識別も出ねえから混乱しちまったか?)

 2D投映コンソールにちらりと目を走らせる。ターナ(ミスト)の濃度が通常よりも濃い。要塞側の対応も混迷していそうだ。

(しばらく間を置いたから侵攻してくる余力はねえと読んだか? 例の通信会談直後は相当ピリピリしてたんだろうがな)

 常駐戦力が多いところからその辺りは読み取れる。


 戦後も増大し続けた王室の権威が、ここにきて初めてつまづきを見せた。軍部に走った動揺も尋常ではなかっただろう。

 上意下達に慣れ切った現場は判断に迷ったのかもしれない。兵の配置まで細かな命令は出ないから、とにかく抜かれないよう数だけ増やした印象が強い。実戦を知らないのは相手も同様なのだろう。


「ばらけるな。無闇に撃つな。味方との位置関係を頭に入れろ」

 銀光を引きつつパシュランが駆け抜けると空気が変わる。

「剣王が来た! 盛り返すぞ!」

「みっともないところを見せるな、お前ら!」

「続いて切り込め!」

 一気に勢いが増す。

「張り切りすぎんな! 無駄に要塞に傷を付けんじゃねえ!」

「あっ!」

 リューンは若干の不安を覚える。


 この一ヶ月は戦力の充実の意味もあるが、指揮系統の確立にも割いた時間だ。いきなり機能するとは思わないが、まだ指揮官が戦場の熱気に飲まれている感じがある。

 抵抗活動なら勢い任せも悪くない。だが、軍として作戦行動するには邪魔になる熱狂だ。


(足りねえのは装備でも訓練でもねえ、統率者だな。とはいえよ、一朝一夕に育つもんでもねえし)

 待っていては機を逃す。開戦したのはアルミナの考えを改めさせるためだ。侵略する意図など無い。普通に国同士の付き合い方をしたほうが得だと思わせられればいい。

(ただなぁ、そいつには黙らさなきゃなんねえ奴が多いんだよ。ゼフォーンにはそれが分かってねえんだよな)

 一年半前まで故国だったアルミナの歪な政治体制を嘆く。


 敵部隊の放つ砲火を舐めるように突き進む。ビームを真っ正面から左右に叩き割り、その勢いのまま斬り込むだけで編隊はいとも簡単に崩れた。


「逃げる奴は逃がしとけ。軌道計算を間違わなきゃ、帰り着けるだけの推進剤ロッドは残ってんだろ」

 要塞から警備艦隊が出ていない。逃げる先を求めて右往左往しているアームドスキンも、いずれは諦めて単機でアルミナに戻ろうとするだろう。


(なま)ってやがるな。治安維持軍のほうが遥かにマシだったじゃねえか。戦勝国だってんで驕ってたのか?)

 離脱時には感じられなかった軍の状態が、今のリューンには分かる。

(こいつは思ったより早く中央を衝けるかもしんねえな)

 上手く運べば勝負は早い気もする。

(問題は奴ら(・・)が動くか否かってとこか)


 二時間後、警備要塞を奪取したXFiはアルミナへの橋頭保を手に入れた。

次回 「別の思惑とは?」

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