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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第九話

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独立と外交(11)

「これでいいか?」


 リューンはパシュランの腕から伸ばしたケーブルを要塞格納庫の制御端末に接続した。自動的に投映パネルが立ち上がり、目まぐるしく表示が変わり始める。


「侵入成功。しばらくは繋ぎっ放しにしておいてくれるかしら? 完全に奪い取るには多少の時間は必要よ」

 内部でも音声が明瞭になったのはアンテナの一つでも奪い取ったからかもしれない。

「おー、好きなだけ使え。俺はちょっと殴り込んでくるわ」

「あら、身体を動かしたい気分?」

「まあな。軽くぶちのめしてくるぜ」


 そう言うと少年はコクピットに戻り、シートの背面のラックから麻痺警棒(スタンスティック)を二本取り出す。相手がスキンスーツだと放電の効果は望めないが、殴打武器としては優秀である。


「ルッティ、後頼むわ」

 ダイナは指揮のために外に残っているので、彼女たちに乗っ取り操作の間の護衛を頼んでいたのだ。

「陸戦の輸送挺、もうちょっとで到着するよ?」

「あんたまで突入せずにプロに任せておきなさいよ」

「あん? たまには暴れさせろよ、チェスカ。うずうずしてんだよ。それともお前が俺の欲求不満を解消してくれんのか?」

 2D投映コンソールに映ったフランチェスカの顔が真っ赤に染まる。

「誰が! いやらしい!」

「冗談だ。ピストが泣いちまうだろ?」

「それも違う!」

 リューンは肩を竦める。


 馬鹿笑いしていると輸送挺が格納庫内へと辿り着いた。警護に付いていたルフェングは9番機のペイントがある。


「オリバーか」

 元走り屋のリーダーは、パイロット見習いは卒業したがまだまだ下働きが欠かせない。

「お前も突入する気か?」

「おう、ちょっとな」

「……俺も行く」

 彼まで警棒を取り出した。

「対抗心なんて持っちゃ駄目だよ」

「違います。点数稼ぎさせてください」

 アルタミラに窘められるが戦果が欲しいらしい。

「しゃーねえな」


 輸送挺で予備の簡易プロテクターを借りたリューンはオリバーにも投げ渡す。陸戦隊のドルガン隊長は若者たちの意気を汲んで同行を許可してくれた。


「本気か、オリバー?」

 彼のチームの一員だったデイビッドが問う。

「俺にも活躍させろ」

「無理するな」

「もちろん。今はもうお前のほうが強いだろう」

 拳を合わせている。連携は心配あるまい。


 大振りなレーザーライフルを抱えた肉体派が整列して通路へと向かう。その横でリューンは舌なめずりしながら肩を回していた。


「動体センサーは切ったわよ。警備装置も気にしなくていいわ。カメラの情報を統合してフィーナに渡すから誘導に従いなさい」

 基地要員を制圧していくのが任務だ。

「総員突入準備!」

 静粛かつ一糸乱れぬ動きで隊列を組むのに感心する。基本的には乱戦になって臨機応変に対応するアームドスキン隊とは大きく違う。


 通路を進み始めるが隔壁は閉じない。既にエルシの制御下なのだろう。フィーナの誘導で移動していると時折り遭遇戦になる。彼らは制圧しつつ奥深くへと侵入していく。


「あんまり殺すなよ」

 ドルガン隊長に頼んでおく。

「不要なら殺さないが、無傷というのは難しいぞ?」

「それでいい。こいつらは売れるからな」

「それなら手足を焼くくらいはいいだろう」

 隊長は身代金でも取るのだと思ったようだ。

「ここにきて道徳心に目覚めたわけでもないか」

「目覚めるか。容赦なくぶちのめす」


 言葉通りにリューンは敵兵に向かって飛び出す。

 既に0.8Gエリアに入っている。スキンスーツの靴底を鳴かせ、低く入った彼は銃口が向けられる前に警棒で横っ面を張り飛ばす。

 至近距離で放たれるレーザーを躱しながら迫ると相手はおののいて重心が後ろに下がる。爪先を踏んで脇腹を打ち据え、銃床を落としてくる相手に踏み込んで肘を入れ、もう一人が跳ね上げてくる膝を警棒で叩き砕く。


「お前に掛かったらプロも形無しだ」

 ドルガンは苦笑い。

「やけに警備兵が多くねえか?」

「こんなものだ。警備要塞というのはそれだけ奪われたくないもんだぞ」

「そうか。その割に連中覚悟が足りねえがよ」

 なまっているように感じる。

「ジャンプグリッド争奪戦が行われるのは戦争が本格化する頃合いだ。現役の兵は誰一人経験があるまい」

「まさか自分が当事者になるなんて思ってもねえってか?」

 ずっと戦い続けていたXFi(ゼフィ)とアルミナ軍兵士では覚悟が違うらしい。


 その後も陸戦隊が銃撃戦を演じている間に、回り込んできた部隊をオリバーと二人で沈黙させながら制圧を進めていく。フィーナの報告では、別の個所から侵入した陸戦隊も順調に制圧範囲を広げているようだった。


「ロック解除してあるな、エルシ?」

 目の前にしているのは司令官室。警備兵も打ち倒していある。

「もちろんよ」

「いくぜ」

「ああ」


 オリバーと目配せし、ドアをスライドさせるとレーザーの発射音が重なる。伏せていた二人が突入し中の警備へ襲い掛かった。

 しかし、予想外に多くの兵が詰めていてリューンの意識に金線が舞う。彼は何とか掻いくぐって打ち倒すが苦鳴が聞こえ、オリバーが肩を押さえている。


「おい!」

「大丈夫だ。さっさと始末をつけろ」

 ハンドレーザーをかざして睨み付けてくる相手の肩に二本の杖の標章を認める。リューンは助走して卓を飛び越えようとした。

「馬鹿め! 躱せまい!」

「そうでもねえぜ!」

 金線に警棒を合わせる。レーザーに焼き切られる僅かな時間で十分だ。卓上に乗った少年は司令官の顔面を掴むと、後ろの壁に叩きつけた。

「ぐあっ!」

「うるせえ」

 恫喝すると震え始めた。

「心配するな。殺しゃしねえ。手前ぇの首は高く売れそうだからな」

「ひっ!」


 背負われて撤収するオリバーは非常に不機嫌で、デイビッドとリューンは苦笑した。


   ◇      ◇      ◇


 一ヶ月後、アルミナ軍兵士と捕虜交換という形で、抑留されていた交易船のクルーがゼフォーンに帰還する。彼らが涙して家族と抱き合う姿は大々的に報道され、新生ゼフォーンの人道的な姿勢が改めて示された。


 進宙歴499年、実に七十一年ぶりにハルム星系からアルミナ勢力が排除され、ゼフォーンは真に独立を果たしたのだった。

次は第十話「アルミナ侵攻」


次回更新は『ゼムナ戦記 神話の時代』第十話「戦う意味」になります。

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