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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第九話

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独立と外交(10)

 ほんの数分前にゼフォーン解放軍となったXFi(ゼフィ)艦隊。全艦が磁場をカットして覆っていたターナ(ミスト)と光学監視妨害のミラーチャフを放出する。隠密航行を解除した途端に第8ジャンプグリッド警備要塞は、各所を彩っていた航宙灯を真っ赤に染めた。


 アルミナへと繋がる第26ジャンプグリッドにはXFiを除く元抵抗組織連合の艦隊が向かっている。連動して惑星ゼフォーンを含むハルム星系を奪還する計画だ。


「艦艇が出撃してきたら沈めてもいい。が、要塞には極力傷をつけるな」

 ダイナがこの要塞を転用する意図を周知している。

「アームドスキンを排除して陸戦隊が突入できるようにするんだよ」

「やる気充填100%」

「リフレッシュしたから身体軽ーい」

 女性陣も張り切っている。

「そうは言っても逃げる奴は放っといてやれ。追い込み過ぎたら遮二無二掛かってくるぞ」

「ダイトの言う通りだ。跳びたがっている奴は跳ばせてやれ」

「でも、僕はアームドスキンでジャンプグリッドを跳びたくないですけどね」

 基本的には問題ないとされているが、σ(シグマ)・ルーンでセンサーと連動しているだけ身体に出る影響は大きい。


 最後まで残っているアルミナ軍兵士の孤立感は半端ではないだろう。ワームホールの向こうには故国があるとはいえ、他星系にポツンと取り残されているのだ。プレッシャーは精神を苛んでいる。それが攻撃性に転化するか、恐慌を起こして脇目もふらずに逃げ出すか読めないところはある。


「お兄ちゃん、そういうことだから向かって右に回り込んでジャンプグリッド側は空けるように攻撃ね」

 フィーナから指示が来る。

「了解だ。合わせて回り込めよ、チェスカ」

「分かってるぅ~」

「駄目だ、こいつ。休みボケしてやがる」

 フランチェスカは切り替えが下手なタイプらしい。

「はぁ~、楽しかったのになぁ~」

「誰か、そいつの後ろ頭を蹴飛ばしてやれ」

「しゃきっとしな。戦争さえ終わらせられたら、毎日あんな暮らしができるんだからね」

 アルタミラが発破をかける。

「本当?」

「ああ、のんびりするさね」


(毎日じゃねえだろ)

 リューンは苦笑する。

(まあ、軍は維持しないといけないから組み込まれるだろうけどな。今の暮らしに比べりゃ、訓練の日々のほうが幾分かマシか)

 落ち着いた暮らしなど自分にはもう無縁な気がして、少々羨ましくはある。

(生き残れりゃあの話だがよ)

 そこが一番の問題だ。


「おっと!」

 リューンの意識に続けざまに戦気眼(せんきがん)の金線が走る。

「俄然やる気になったじゃねえか?」

「当たり前。私は自由にのんびりと暮らしたいの! あんたみたいな暴れん坊と違うんだから!」

「ほう? 言っとくけどな、チェスカ、お前みたいな美人が戦勝側で生き残ってみろ。芸能界が放っとかない。アイドル扱いされて引っ張り回されるオチだぜ?」

 ありがちな展開を説く。

「……あ、アイドル? 私が?」

「本気にしてやがる」

「にゃー!!」


 怒りのためか、いつもより強い敵意が金線にこもっているので躱しやすい。ブラインドを作って敵機を撃破していく。流れ弾が要塞へと向かうが、防御磁場展開しているので問題はない。


(アームドスキンを始末するのは時間の問題だな。むしろ要塞内部の攻略に手間を掛けたくねえ。こいつら、転用を嫌がって破壊しやがるかもしれねえしな)

 そんな思いが頭をよぎる。彼にもジャンプグリッドの防衛の重要性は理解できた。


「エルシ、聞こえるか?」

「何かしら?」

 呼び掛けにはすぐに応答があった。

「パシュランを繋げれば要塞機能を掌握できるか?」

「現状だとデータを抜く程度が限界だけど、その機体を中継に使うなら可能。自爆や爆破パージも防げてよ」

「察しがいいな。それでいく」


 普通は固いブロックに阻まれて外部からの制御は不可能だが、彼女ならデータを覗くくらいはできていた。更に侵入したパシュランが有線接続をしたならば制御もできるというのだ。


「聞こえたな、ダイナ。潰しながらいくぜ」

 作戦意図は伝わっただろう。

「分かった。援護する。もう少し数を減らしてからにしろ」

「確かにな。こうブンブンと飛び回られちゃうるさくって仕方ねえ」

 既に乱戦状態。

「チェスカ、少しずつ前」

「そう言うんならペルセも手伝ってよね」

「リューンを撃つのはチェスカのお仕事。敵を撃つのがペルセのお仕事」

 さらっとひどいことを言う。

「だからそういう誤解を招く表現はやめてぇー」

「じゃれてないで前に出な」


 剣身の長いフォトンブレードを展開しっ放しのパシュランは、宇宙の暗闇で非常に目立つ。集まってくる敵にタイミングを合わせた狙撃が来るので、リューンとしては利用しやすい。二人の間にはテンポ感さえ生まれてきている。


「おらぁ!」

 半透明に輝く刃で頭部を貫くと、胸元を蹴って弾き飛ばす。一瞬消えたモニターと衝撃に戸惑っているうちにビームで貫かれ爆散する敵機。

「いい度胸じゃねえか!」

 ターナ光をくぐって斬り掛かってきた相手のブレードを右の刃で巻き取るように逸らし、左で横薙ぎにする。転瞬、パシュランをかがませるとそこを通過したビームが彼方のファーレクへ突き刺さる。


 第8ジャンプグリッド警備要塞へとリューンは近付いていった。

次回 「対抗心なんて持っちゃ駄目だよ」

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