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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第八話

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本星決戦(10)

 他の敵機が接近してこない。今の状況は計算通りのものらしい。リューンを油断させるために説教じみた言い分を伝えてきているのではないようだと思えた。


(それでも油断ならねえ。さっきの一撃だって牽制とはいえ加減はしてねえ。このおっさん、できるぞ)

 不用意には踏み込めないと感じる。


「別にやらなきゃやられるとか、ゲームみてえに相手の命を軽く見てるわけじゃねえぞ」

 誤魔化しが利く相手でもなさそうだと思った彼は筋道だって答える。

「現実に君がやっていることだ。認めなさい」

「そりゃ潰すつもりでやってるからだって言ってんだ。何なら調べてみろ。俺はエルハーケンじゃ二人しか殺した覚えがねえ」

「待ちなさい」

 声に動揺が混じって震えている。

「それは命を奪うつもりで戦っていると言っているように聞こえるぞ?」

「それこそあんたが言えた義理じゃねえ。と言いたいところだが、理由はあるぜ」


 右のフォトンブレードを下段に構えたまま、試しに右足を滑り込ませてみる。跳ね上げた刃を半身で躱したガラントのローディカは、同時に薙ぎ払う左ブレードを受けて巻き取ろうとした。

 足を引いたリューンは左半身に切り替え、相手の揺らめくブレードの先から放たれる金線を待つ。しかし、彼の戦気眼(せんきがん)は攻撃を伝えてこない。


(本気で説得するつもりらしい。重てえなぁ。腰抜けエフィの真逆じゃねえか)

 心の中で失笑する。


「金とか物とか奪いに襲ってきてるだけなら俺だって命まで取りゃしねえぞ。そいつは利が絡むからな。割に合わねえと感じたらさっさと逃げる。そんならぶちのめすだけで十分だろ?」

 リューンの中の理屈ではそうなのだ。やられるだけ損だと思わせればいい。

「当然だ。その程度で殺人まで犯せばそちらが法に触れる」

「それは分かってる。でもな、命や心を奪いにくる奴は駄目だ。どこかいかれてやがる」

「軍人は壊れているというのかね。それは訓練で培われた技能でしかない」

 それは軍属が口にする理屈だ。この男もそれが常識だと思っているのだろう。

「訓練してるからって人間相手でも平気で引き金ひく奴は色々壊れてんだろ? 壊れてねえ奴は戦場で壊れてくんじゃねえか。否定できんのか?」

「或る意味、たが(・・)が外れていると言えばそうだろう。しかしだ、アルミナ軍人がこのゼフォーンで無差別に殺戮をしてなどいない」

「表向きはな」


 足元を薙いでみせる。重心を動かしたところで横回りに踏み込み、後方へと流れる上半身へ背後から斬撃を放つ。ところがガラントは機体を沈みこませて躱し、下からブレードを突き込んでくる。

 肩口へと延びる突きをフォトンブレードで滑らせて流す。彼の攻撃は読まれているようだ。実戦経験の差に物を言わせている。撃破する気は無くとも戦闘能力を削り取る気は満々らしい。


「締め上げて自由を取り上げる。心を奪い取る。反発すれば潰しに掛かる。命を奪い取る。一番タチが悪ぃのはそれを心のどこかで正しいと感じてるとこだ」

 今度はリューンが光の刃をローディカへと突きつけた。

「それは……」

「統制してやんなきゃ、また大戦以前みてえにつけ上がるからか? あんたが説教垂れてんじゃねえか。好き勝手暴れりゃ後々悔いることになるってよ!」

 ガラントは怯んで僅かに下がる。

「ゼフォーンの連中だけは悔いてねえとでも言うのか? 筋が通ってねえぞ、あんたの理屈はな」

「そうかもしれん! そうかもしれんが、それには検証が必要だ。実際に暴力でまた実権を取り戻そうとしている。君のような子供まで利用してな!」


 動揺は見えるが狙いはブレない。肩や腰めがけてブレードが伸びる。しかし、そこに来ると分かっている斬撃などリューンはものともしない。全てを弾くと正面から蹴りを飛ばす。ローディカはふわりと浮いて衝撃を逃がし、二人の間の距離は開いた。


「そうやって正当化しようとすんだろ? そういう連中はな、下手に情け心を懸けると厄介なんだよ。やられりゃやられるほどに思い込みが激しくなっていきやがる」

 ビームバルカンとともに言葉も浴びせる。

「そんで次からどんどん過激になりやがるんだ。平気で武器も持たねえ相手も狙い始める。最悪だ。だから相手するなら徹底的にだ。後悔なんてしてやるかよ」

「そうまで……、か。子供の君までそうも荒んでいるのか? アルミナの統制は人心を荒廃させただけなのか?」

「統制なんて可愛らしいもんかよ。搾取だ、搾取。アルミナの繁栄はどこから来てると思ってる。奪い取ったもんで潤ってるんだろうが。結局は成り代わっただけなんだって何で気付かねえんだよ」


 軽く地面を蹴ってパシュランを前進させる。リューンの放つ斬撃は鋭さを増し、気持ちでも押されているガラントは防戦一方になる。

 それでも集中力が途切れないのは長く戦場に身を置く者らしい。アームドスキンに細かな傷を刻んでも、致命的な攻撃は防ぎ切っている。


「そんな教育を施されて戦士に仕立て上げられたのか! それで心を入れ替えたと主張するのは矛盾しているぞ!」

 頭の固い戦士はなかなか意見を覆らせない。

「そこが根本的に間違ってるんだぜ? 俺はちょっと前までアルミナで暮らしてた。この年になるまでな。あんたも知ってる、あの埃っぽい空気の中でだ」

「なにぃ!?」


 その言葉はガラントにはかなり衝撃的だったようだ。

次回 「色男とのデートは楽しかったか?」

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