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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第八話

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本星決戦(8)

 基地の舗装面は真夏の日差しに陽炎を揺蕩わせる。多少は暑気を和らげる緑からも、夏の虫が短い命を謳歌するように恋の歌を奏でている。

 そんな夏の風物詩も基地の兵士には何の感慨も抱かせてくれない。これから始まる戦闘はそれ以上に熱いものになるであろうと理解しているから。

 感じるとすれば、ここでの敗北は二度とこの季節の変化を味わえなくなるであろう未来である。


「ターナ(ミスト)、戦闘濃度!」

「全機発進準備よろし! 指示待ちです!」

「防御磁場、稼働強度で展開! 今のところ負荷は0!」


 戦闘準備が着々と進んでいく。治安維持軍、解放組織連合、双方が放出したターナ(ミスト)は通常以上に濃く、電波レーダーは完全に沈黙している。重力場レーダーは連合戦力の接近を探知しているが、密度の所為で正確な敵戦力の把握までは不可能。本部基地兵員はただ光学監視装置からの反応を待つしかない。


「く、来る……」

 観測員(ウォッチ)の一人が堪らずこぼす。

「武装放棄を勧告しますか? 和議の場を設ける条件で」

「無駄だ。連中は止まらん」

 慣例の手続きを踏もうと促す声もあるが、事態は既にとりかえしのつかないところまで行ってしまっている。

「本気で決めに掛かっているのだ。これは治安維持行動ではない。戦争だ」

「光学探知! 分析出ます!」

「ぐっ!」


 周囲を取り囲む敵、敵、敵。

 軍や治安部隊からの鹵獲機が多い。雑に塗り替えられたそれだけでも十分な脅威になる。

 しかし、その中にも奪われた工作機械で組み上げられたと思われるアームドスキンも散見される。まともな武器を携えたそれらは戦力としても未知数。数は少なくとも油断できない。

 そして正面からは特有のフォルムを持つ、明らかに量産されたであろう機体が整然と並んで迫ってきている。最大の脅威は間違いなく彼らだ。


XFi(ゼフィ)……」

 震える声が告げる。その中央にひと際視線を奪う銀色のアームドスキンが位置していた。

「剣王!」

「銀色の死神……」

「司令、早く発進命令を!」

 その圧力に屈した兵員が悲鳴に近い懇願をする。

「ほ、砲門、斉射三! アームドスキン隊、全機発進せよ!」

「了解!」


 苦し紛れに戦端は開かれた。


   ◇      ◇      ◇


「ちぃっ! 面倒くせえな」

 基地からのビームの斉射を躱し、ときにジェットシールドで弾く。


 宇宙での艦艇同士では砲撃戦はほとんど行われない。互いに防御磁場を展開してダメージを与えられないうえに、アームドスキンは全天から襲い掛かってくる。戦場に留まり砲撃をくわえても焼け石に水でしかない。無用な危険を避けるならば、艦載機を放出したら速やかに後退するのが常識になる。


 しかし、地上固定基地となると事情は少し異なる。敵機の活動範囲は平面上から上空までの半分になり、有効視界も短くなれば戦闘速度も遅くなる。そこにビーム砲撃の有効性が見出される。

 基地には多数の砲台が設置され、制空権の確保に余念がない。攻め手とすれば砲線を搔いくぐって接近するしかなくなるのである。

 地上固定基地の利点はそれに限る。


「艦砲来るぞ! 合わせて飽和攻撃をくわえろ!」

 ダイナの指示が飛ぶ。

「砲線の元をよく見ておくんだよ。防御磁場が緩んだら集中攻撃。砲台を黙らせるのさ」

「そのために重たい換装ロッドをいっぱいぶら下げてきたんだもんね!」


 攻め手の対抗手段はこれだ。

 防御磁場に飽和攻撃で負荷をかけて弱める。そこで砲台を破壊して接近しやすい状況を作ってから侵入を開始する。当然そこでは敵アームドスキンとの混戦が始まるのだが、それまでの前哨戦が宇宙戦闘とは大きく異なるのだった。


「抜けた!」

 ビームの先に生まれた火球で防御の低下を知る。

「狙え!」

 数撃つだけで雑だった照準を一斉に砲台に振り向ける。

「当たってる……? いったー!」

 大きめの閃光が砲台のエネルギーチャンバーの誘爆を報せる。


 各所で火球が花開き、基地からの砲撃が急激に弱まっていく。それはいずれ止んだ。全ての砲台を破壊したのではなく、基地のアームドスキン隊が前に出てくる合図だ。

 集団戦闘経験の少ない者でも、ここまでが一つのシナリオのようなものだと知っている。攻め手の戦力が足りない場合はこの前段階で消耗させられる結果になるのだ。


「ストレス溜まるだろうがよー!」

 腰のバルカンファランクスをカノンモードで放ち続けていたリューンもようやく自分の出番がやってきて、勇躍飛び立っていく。

「分かってるんでしょうね、この不良! 突っ込むんじゃなくて敵を引っ張り出すの!」

「ああ、分かってんぜ、チェスカ。お前の得意な展開だろうが」

「熱中して勝手に前進しても放っとくから覚悟しときなさいよ!」


 宇宙ポートを背負う形の基地前面にXFi(ゼフィ)が展開しているのはそのためだ。戦力をできるだけ基地から引き離して、宇宙ポートを手薄にさせるのが目的。

 そこへ弱小戦力しか持たない連合が攻め込む。退路を断たれる危険を察した治安維持軍は撤退を意識し始めるだろう。軍が撤収を始めたら戦力を退き気味にして離脱させる。


(そいつがエルシが提案した作戦だからな)

 兵力差では圧倒的な組織連合でも、未だ装備が整わない状態で衝突すれば消耗が激しい。それを避けたいダイナがエルシに知恵を借りて立てた作戦なのだ。

 敵の撃滅を目的とせず、意識を操作して宇宙に追い上げ、まずは地上を奪還するのである。装備の充実に着手するのはその後のこと。


「よし! 掛かってこい!」

 共用回線へと吠える。


 まず目立つのがリューンの役目だった。

次回 「少年、名は?」

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