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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第八話

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本星決戦(7)

 フランソワと別れたペコは通路を歩いている。目的の場所に向かう途中、意外な場所でフィーナの位置情報を拾ったのでその部屋の前で止まった。

 スライドドアの開閉信号を送るが開いてくれない。ロックされているようだ。仕方ないので前脚でドアを叩き、入れてくれるように促す。


「キューン。クーン」

「おや、君だったのね?」

 ドアを開けてくれたのはたまにしか会わない女性。女医のオリビア・ジェンキンスである。ここは医務室。

「フィーナならここに居るわよ」

「あっ、ペコ。探しに来たの?」

 顔を覗かせたフィーナはアンダーウェアだけの半裸だった。

「ごめん。オルテシオ艦長の膝で気持ち良さそうに眠ってたから置いてきちゃった」

「ワン!」

「今日はオリビア先生に身体測定に呼ばれてたの。一緒に来たかった?」

 特にそんな思いは無かったのだが、慣れた彼女にピッタリとくっつく。


 フィーナはそんなペコを膝に乗せると女医と対面の椅子へと腰掛けた。もう邪魔にはならないらしい。


「胸のサイズはちょっとつらくなってそうね。スキンスーツ生産データを修正しておくわ」

 喜びの笑顔のフィーナに吠えて応じる。

「それもあるんだけど、全体に少しサイズが上がっているわね。そこも修正したほうが良さそうよ」

「背が伸びたんですか!」

「ううん。そっちは微増だけど、少しお肉が付いてきてるみたい」

 ペコを撫でる手がピタリと止まる。

「気にしなくていいわ。あなたくらいの年代は少しふっくらしているくらいでいいのよ」

「そんなの駄目! お兄ちゃんにバレたら死んじゃう!」

「男の子はそんなに敏感じゃないから分からないはず」

 確かにご主人は気付かないだろう。

「嫌です! 運動するからそっちのサイズは修正しないでください!」

「思春期ねぇ」

 女医はころころと笑っている。


 すぐに着替えてトレーニングルームに向かうフィーナをペコは見送った。


   ◇      ◇      ◇


 今度のドアは開閉信号ですぐに開いた。気付いたヴェートが口元を緩ませて手招きする室内へと入る。奥にはダークブロンドの美女が備え付けのコンソールへと向かっていた。


「あら、何か用、ペコ?」

 卓の上に乗せられると尋ねてくる。

「キューン」

「問題は無さそうよ。遊びに来ただけなのかしら?」

「ワン!」


 エルシが一瞥しただけで内部データにアクセスがあったのを感じる。ひと通り検索されたようだが問題は生じていないらしい。彼女の言った通り会いにきただけなのだ。


 ペコにとって彼女は今のボディの創造主である。敬意も好意もご主人に近いものを抱いている。大好きで大切な存在なのだ。


「燃料電池カプセルもまだ半分は残っているわ。一応変えておく?」

「ワフン!」


 手ずから燃料カプセルを変えてもらった。望んでいるのは動力源ではなくエルシに構ってもらうこと。済んでから、鼻や頭を思いっ切りこすり付けて甘えた。


「私はあなたが羨ましいのよ、ペコ」

 意外な言葉が告げられた。

「そうなのですか?」

「ええ、そうなの、ヴェート。この子は私と似たような存在。学習の結果として生まれた知性。それでも彼はリューンの家族になれる。私は与えるだけの補助役でしかない」

「あいつはそんな無情な男ではありませんよ。エルシ様のことも相棒だと言っていたではありませんか。大切な人だと心から思っているはずです」

 エルシは慰められたかっただけなのだろう。少し満足げにしている。

「そうなのかしらね。そうだといいのだけれど。求められたいとこんなに思うなんて如何にもさもしいわね。幻滅した?」

「とんでもありません! 貴女は素敵な女性です。リューンだって、家族とは違うかもしれませんが親友と似たような関係と感じていると思います」

「あなたみたいに?」

 ヴェートは言い募る。

「自分と対するのと貴女に対するのでは当然違いは出ます。女性なのですから」

「そういうもの? リューンは私を普通の女性として扱っている? どうにもその辺りの機微が私には分かりづらくて」

「完全に守るべき対象だと思っていますよ。損得勘定抜きで」


 そう感じたペコも後ろ脚で立ち上がって何度も吠える。それは伝わったようで優しく抱き締められた。

 エルシがそんな感情を抱くのをペコは不思議に思う。その感情自体が明らかに人間的だ。それでも不安に感じるものなのだろうか?


 その時、呼び出し音が鳴る。立ち上がった2D投映パネルにはドアの外の様子が映っている。エルシはパネル内の開閉ボタンをタップした。

 訪れたのはダイナである。彼はペコを抱き締めている彼女に少し動揺を見せる。らしくないとでも思ったのだろうか。


「少しご相談したくて伺ったんですが」

 邪魔だったかと感じたようだ。

「構わなくてよ」

「すみません、急に。本部基地攻略なんですけど、戦力的に大きな不安はないのですが、正面からぶつかるのはどうにも消耗が激しくなりそうな気がして……」

「その先のことも考えているのでしょう? 総帥らしくなってきたのね」

 ダイナは苦笑い。

「からかわないでください、女史。考えないわけにはいかないですし」

「正面から当たりたくないと考えているのはこちらだけだとでも思っているのかしら? それは……」


 内容が難しくなったので、退屈に感じたペコはエルシに挨拶して部屋をあとにした。


   ◇      ◇      ◇


「ワンワンワン!」

 その位置情報信号に向けて駆け寄る。

「おー、ここにいたか、ペコ」

「ワゥ!」

 ご主人の足に絡み付く。

「よーし、甲板(デッキ)で遊ぶぞ」

「ワン!」


 大好きなリューンと足早に通路を駆け抜けた。

次回 「ストレス溜まるだろうがよー!」

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