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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第七話

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エルシ・フェトレル(8)

 小口径のビームはほぼジェットシールドで弾かれてしまう。負荷も小さく、連続して当たったとしてもコアを焼くほどでもない。

 シールドの影に隠れるような前傾姿勢で十機以上が急接近してくる。ビームバルカンの掃射が途切れると同時に一斉に砲撃をしてきた。ところが銀色のアームドスキンはその僅かな隙間へと機体を滑り込ませると薄黄色く透過した長大なブレードを閃かせた。


「おおりゃあぁー!」

 リューンは気合とともに一気に狙いを定めてペダルを踏み込む。


 一斉射で守りを崩せると考えていた治安維持軍機ファーレクは、カノンインターバルに飛び込んだパシュランの一閃で胴体を斬り裂かれて、対消滅で発生したプラズマを撒き散らすと飲まれて爆散した。

 銀閃が走る度にアームドスキンの手足が舞い爆炎が湧き上がる。中破で済んだ機体も後続のXFi(ゼフィ)機ルファングの砲撃を受けて数を減らしていく。


「おっと、そこまでにしてもらおうか」

 突き進んでいくパシュランがパルスジェットの断続的な音を響かせて制動すると直前を光芒が貫いていく。

「基地では愛しいレディたちが僕の応援をしてくれているんだ」

「なんだ、根性なしか」

「根性なし言うなー!」

 腰のバルカンを振って掃射するがするすると躱している。

「避けるのが上手いのは褒めてやる」

「女性にベッドで褒められるほうが嬉しいんだけどね、銀色君」

「分かった。じゃあ、うちの女たちに、寝言でいいから今夜ベッドでお前を悼んでやれと言っとく。安心して墜ちやがれ」


 路面を蹴って加速させたパシュランを派手なカラーリングのローディカへと向ける。アルミナ軍機でも機動性よりパワー寄りな機体なのに、彼が操れば踊るように舞いながらリューンの放つ剣閃を躱していく。

 今回はそのまま接近戦に入らず、距離を取ってビームカノンを両手に構えさせていた。明らかに中距離戦闘を狙って挑んできている。


(本隊の裏側に引き込もうとしてやがるな)

 攻撃を躱しつつも回避方向に作為的なものを感じる。基地防衛に出ている本隊の後方へと誘導しようとしているのだ。

(乱戦に巻き込む気か。俺を直掩にぶつけたくねえらしい)

 エフィ・チャンボローの見せる強かさだろう。軽い男に見せて実は計算もしている。そのくらいでないと勇名を馳せるほどの撃墜数は稼げない。

(こいつを釘付けにしとけばムーフラッテ隊はそのまま基地攻略に向かう。ラーチカル隊もあんだけ焚きつけといたんだから突っ込んでくるだろう。手柄は奴らに譲ってやっか)

 リューンはこのままエフィの仕掛けに乗ってやる気になっていた。


 直撃軌道のビームは斬り裂き、カノンインターバルの間に距離を詰めていく。突如として背後に食い付かれた本隊の敵機は動揺を隠せないままに対処してくるが、距離を取ろうにもベゼルドラナン隊のプレッシャーを受けているので後退はできない。

 数機を光球に変えつつ前進。意表を突きはしたものの、ダイナたちとの挟撃が成功しているのではない。パシュランだけ孤立している形。敵部隊がそれに気付かないわけがない。


 態勢が整った敵部隊は半包囲陣形から無数の砲口を向けてくる。売り出し中で、勇み足の過ぎた馬鹿な敵を罠にかけて始末しようという算段だろう。


「できるもんならやってみやがれ!」

 リューンはフォトンブレードを構えた両腕を開き、的を大きくするようにして挑発した。


 息を吸って止める。瞬時に集中力を高めた少年は肩口に迫る金線に光刃を合わせビームを斬り裂く。頭部、胸部、左脚部と狙うビームが力場の刃に分断され、時間差で続く数射も足を止めたパシュランを捉えることはできない。


「はぁ?」

 素っ頓狂な声が上がる。

「銀色君、その芸はお金を取れるよ」

「リューン・バレルだ。憶えとけ。どうしても払いてえってんなら手前ぇの命で構わねえぜ!」


 更に畳み掛けるビームの奔流を全て斬り裂いて見せると敵部隊に怯えの空気が漂い始める。自分たちの攻撃が一切通用しないのではないかと思い始めているのだ。そこでリューンはもう一押しする。

 ヒップガードの三連装バルカンファランクスを覆うように長円のスリーブが突出する。指を添えたトリガーを絞るとそこから大口径のビームが射出された。このバルカンファランクスは同時発射で大口径ビームカノンにも早変わりするのだ。


 包囲しているうえに怯懦に捉われていた敵機は棒立ちのまま直撃を受け、炎の花を咲かせる。的が動かず、σ(シグマ)・ルーン照準が付けやすければ少年でも命中させられるのだ。


「さあ、こっからが面白いところだぜ?」

 イオンジェットが閃き、パシュランが急迫する。

「僕はそろそろお暇させてもらうよ!」

「そう言わずにもうちょっと遊んで行けよ」

「君が可愛い女の子なら魅力的なお誘いなんだけどね」


(まったく、器用な奴だな)

 意図的にブラインドで躱した敵の砲撃がエフィのローディカを襲うのだが、それさえも容易に躱してみせた。そこまでされると背中も追えない。リューンとてまだ敵中なのだ。


 フォトンブレードを閃かせて彼は敵に向き直った。


   ◇      ◇      ◇


 ベゼルドラナンから発した陸戦隊の突入によってソントコア基地は一時間あまりで陥落した。その報はアルミナ治安維持軍本部まで間をおかずに到着する。


「局面は厳しいか」

 壮年の男がぽつりと呟く。


 歴戦の勇士たる空気を纏わせたいかつい風貌だが、剣呑な雰囲気はない。ただ静かに闘志を燃やしているようだ。


「統制政府は非常事態を宣言し、一時避難を開始しております、閣下」

 副官の報告に彼は頷く。

「正念場だな。本国が援軍の派遣を決定するまでは持たせなくてはなるまい」

「まさか我らが敗戦することなど……」

「敵を見くびったからこその現状なのを忘れるな」

 上官の戒めに副官は背筋を伸ばす。

「はっ! ジーム三金宙士閣下!」


 男は迫りくる戦場の熱い空気に思いを馳せていた。

次は第八話「本星決戦」


次回更新は『ゼムナ戦記 神話の時代』第八話「協定者」になります。


※ 両編とも第八話より一日一部分正午更新に戻ります。

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