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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第五話

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解放攻勢(11)

 望遠ウインドウに妙に派手なローディカが映っている。前衛アートっぽい彩色がされていたり、各所にイラストが散りばめられていたりする。それはリューンにどうも座りが悪いような何とも言えない感覚を与える。

 そういうバイクに乗っていた輩は、得てしてただ注目を浴びるのを善しとしている場合が多いという印象。身体を持っていきそうになるGや飛び去る景色に満足し、乗ることそのものに楽しみを感じている人間は少なかった。彼にはそういう人種の嗜好が理解しがたい。


「あ、エフィがいる」

 ミントからという部隊回線の表示に目をやる。

「知ってるのか?」

「僕、ナンパされた」

「私もです」

 フランチェスカまで加わる。

「個人的に知り合いなのかよ。やりにくいな」

「ううん、戦闘中に」

「はぁ!?」

 さすがに仰天した。命のやりとりの最中に口説くというのだろうか?

「わたしも……」

「あたしでさえね」

「ペルセやルッティまでもか!」

 少年の想像の範疇を超えている。

「僕もです」

「なにをー! 男もいけるってのか!?」

「それは冗談ですが」

 珍しく動揺したところをフレッデンに付け込まれた。

「結構腕が立つから面倒な相手なんです」

「そーそー、動けなくして連れ去ろうとするんだもん。あの時は僕もヤバかったぁ」


 有名な人物らしい。話の流れからして交戦回数も多いようだ。彼ら優秀なチームがが撃破できていないのは、それだけ脅威となる敵の可能性が高いと気を引き締める必要を感じる。


「そこの初見の銀ピカくん、中身は誰かな? それは専用機?」

 ターナ(ミスト)下のノイズの多い共用無線でも呼び掛けが聞こえてくる。

「うるせ。絡んでくんじゃねえ」

「なんだ、男か」

 露骨に落胆した声音。


(面倒臭えな。舐めても掛かれねえ。無視もできねえ。こういうのはさっさと片付けるに限るが近寄りたくもねえ)

 若さで片付けるには尖りまくっているリューンには毛嫌いするタイプが多いが、これは筆頭格だと思える。

(しゃーねえ。どうしても食わなきゃなんねえ嫌いなもんは先に食うほうだからな)

 狙い定めて一直線に接近する。


「おやおや、聞いたことの無い声だったが、この僕に挑んでくるとは大した自信家だねえ。その功名心は命を縮めてしまうよ?」

 見下ろしてくるような猫なで声に頬が引き攣る。

「黙ってさっさと灰になれ!」

「口汚い台詞はやめなよ。僕は誰の戦闘(ダンス)の誘いでも受けるから」

「どうやら手前ぇの舌から斬り飛ばさなきゃなんねえようだな」


 光の剣身を閃かせて接近する。跳ね上げた切っ先は空を斬り裂いただけで、その姿は正面から消えている。

 地に足を付けて待ち受けていた敵機は巧みな機動でパシュランの背後にでも回ったか? リューンの意識に反応して後方ウインドウが多数正面に滑ってくると、その一つにローディカが捉えられていた。


(どういうことだ?)

 回避したのは分かる。しかし、攻撃の輝線が彼の意識に走らない。相手の視界から消えておいて攻撃しない意味が理解できない。

(掴めねえじゃねえか)

 戦気眼(せんきがん)に反応があればその出所に敵がいる。逆にいえば、相手に攻撃意思がなくては目で捉えたものしかリューンには掴めない。


「僕に近接戦闘とは良い度胸だ。仕方ないからお相手しよう。その奇妙な光の剣も気になるしねぇ」

 派手なローディカがくるりと回転すると両手にブレードグリップを握って対してくる。その芝居がかった動作に閉口する。

「さあ、踊ろう」

「手前ぇの精神攻撃が一番堪えるぜ……」

「精神攻撃? 何のことだい?」

 痛々しくて見ていられない。


 イオン噴流(ビームブレード)力場(フォトンブレード)が噛み合う。力は拮抗し、重金属細粉へと還元した火花がひときわ大きく散った。

 胴を狙った左の横薙ぎはブレードで防がれ、下からの右の突きも半身で躱される。腰を落として沈んだローディカは回転とともに光刃を走らせる。描かれた輝線に剣身を合わせて叩き落し、ドヤ顔が浮いて見えそうな相手の頭部を蹴り上げた。


「うげっ! 僕の顔に蹴りを入れるとは! 女の子が泣いてしまうぞ?」

 すかさず距離を取ってくる。

「分かってくれよ。俺は今、無性に手前ぇの生身の顔を蹴りたくて仕方ねえ」

「ひえっ! それはやめてくれ!」


 ストレスが溜まってきたリューンはぐいぐいと前に出る。ファーレクより重いはずのローディカを器用に操って斬撃を放ってくるエフィだが、彼は全てを弾き飛ばし叩き落ししてフォトンブレードで斬り込んでいった。


(確かに上手いな)

 あくまで躱すのが、だ。

(詰め切れねえ。ちょっと踏み込むか)

 周囲に他の敵機が居ないのを確認する。


「ロッドを換装しろよ」

 ビームブレードが少し短くなっている。コクピットには警報が流れているはずだ。

「情けを掛けるとでも?」

「本気でやり合うって言ってんだ」

「戦士の鑑だね。素晴らしい!」

 リューンとしてはこれ以上付き合いたくないだけ。


 斬撃の応酬に舞い散る火花。いやが上にも目を惹く。

 右の斬り落としにエフィは身を引く。さらに踏み込みながら跳ね上げた斬撃にも反応して躱した。そこからひるがえった横薙ぎには慌ててジェットシールドで応じる。

 それが待っていた瞬間だ。光る盾でできた死角から左を滑り込ませる。それさえも躱したのは見事と思えるが織り込み済み。その場で沈みつつ片脚を軸に回転し、剣身を振り上げるとローディカの右腕が半ばから断たれて宙を舞った。


「馬鹿なぁっ!」

「勝負あったな。覚悟し……」

 その瞬間には100m近く飛び退ったエフィ機。

「は?」

 速やかに背中を向けると一気に飛んでいく。

「逃げるなー! 腰抜けがー!」

「冗談じゃないねー。僕が死んだら悲しむ娘がいっぱいなんだからさ!」


 あっという間に小さくなっていく。主軸のエフィが完全に抑えられて劣勢に陥っていたアルミナ軍も撤退に移っていた。


「逃げ足は一級品なんだよね、あいつ」

 ミントが教えてくれる。

「……がっかりだぜ。ちっとは骨があるかと思ったのによー」

「そう? あいつ、別に近接戦闘が得意なわけじゃないよ」

「むしろバランスタイプ?」

 ペルセイエンが補足してくれた。


(意味分かんねえ奴)


 気抜けしたままリューンは棒立ちで見送っていた。

次は第六話「野望と陰謀」


次回更新は『ゼムナ戦記 神話の時代』第六話「狂える神」になります。

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