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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第五話

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解放攻勢(5)

 のど輪を掛けて踏み込み右脚を回して絡ませ、路面へと叩きつけた。背中を強打した相手は激しく咳き込み転げまわっている。

 これで少年全てが転がって呻いていることになる。彼らが無手だったので一人として大怪我はしていないはず。痣だらけになっているかもしれないが流血もほぼ無い。


(お兄ちゃんってこういうところも律儀なんだよね)

 容赦はしないが加減はする。兄のリューンはそんな戦い方をするとフィーナは知っている。


「どうだー、やたらめったら誰にでも噛み付いたって、ろくなことにならねえって分かったか?」

 目を細めて睨み付ける彼に少女たちも震え上がっていた。

「他人様に迷惑かける走りをしてんじゃねえぞ。警察の厄介になったらお前らなんぞ何されるか分かんねえだろ?」

「うう……、そんなへまするかよ」

 呻きながらも反論してくる。

「そいつはもっと厄介な相手を警戒して見逃してくれてるだけだ。目に余るようなら始末されちまうぞ」

「…………」

 薄々は察しているのか今度は声も上がらない。

「元気が有り余ってんなら誰かを助けるために使ってみろ。よほどスッキリするぜ?」

「ここでそんなことすれば、それこそ消されちまうじゃないか?」

 ゼフォーンで困っているのはゼフォーン人ばかり。助けようとすれば倫理統制管理権の行使の対象にされるという意味だろう。

「根性ねえな。覇気を見せろよ」

「覇気なんて誰にも残ってないって。抵抗運動の所為で締め付けが厳しいんだ。お前も分かってるだろうが」


(アルミナのドロップアウト組とは違うんだね)

 溜まっている不満は同じかもしれないが、同族意識で徒党を組むことに楽しみを見出している彼らとは差異が感じられる。ゼフォーンでは鬱憤を暴走で誤魔化しているだけらしい。


「大人が馬鹿騒ぎしてるんだから、俺たちが少しぐらい騒いだっていいじゃん」

 その言い分は責任転嫁でしかない。

「何でも大人の所為にするな。大きかろうが小さかろうが喧嘩は喧嘩だ。大人じゃなくたってできるじゃねえか。結局手前ぇらは腰が引けてんだよ」

「無茶苦茶言うな!」

「憶えとけ。肝が据わってねえから何もできねえ。怯えて縮こまっているってんなら、手前ぇらはずっとそこから動けねえで終わるぜ?」


 言い捨てるとリューンはヘルメットを被り直す。フィーナも再び兄の腰に手を回すとバイクは小さな唸りとともに発進する。


 振り返って見れば、少年少女の瞳は逡巡の色に揺れていた。


   ◇      ◇      ◇


 エルシはリューンが持ち帰ったプネッペンの街の情報を分析する。聞き取りもするが、ほとんどはσ(シグマ)・ルーンを介して記録した映像の解析による各種施設配置の3D映像モデル化だ。

 それをどう扱うかは彼女の仕事ではない。資料として上げたあとはXFi(ゼフィ)として判断が下される。


 支配地域の拡大、ひいては全土奪還が目標である。情報戦として人工衛星からの画像データも入手しているが、警備施設の配置の詳細やアームドスキンの配備状況が把握できたのなら動かない手はない。


「ではアームドスキンを配備している管区警察署には三機を配置。消防機も武装が考えられるけど一機で対応できると思われます」

 作戦協議中の議卓でダイナは戦力配置の案を出している。

「戦闘不能にしたら次という感じで南側から順に攻略していって、制圧のほうは陸戦隊に任せる形で問題ないでしょうか?」

「それでいいだろう。戦力にも限りがあるしな」


 今回の作戦では戦艦ベゼルドラナンに戦闘空母ラーチカルが随伴している。アームドスキンで五十五機を投入できるが、一度に警備施設全てを攻略できるほどではない。

 ベゼルドラナンには反重力端子(グラビノッツ)を装備した空挺機甲車も搭載されている。敵アームドスキンを無力化したあとは陸戦隊に制圧を任せて他地域の攻略に回る策を提案している。


「進めてくれたまえ。各人の配置は任せよう」

 危険度の低い作戦に、教授(プロフェッサー)も鷹揚に応じている。

「それでリューンはどうしましょう、女史? 今回はビームカノンも基本不使用になりますのでチェスカを付けても意味がありませんし」

「誰と組ませても同じことよ。近接戦では連携以前に付いていけるものが居ないわ」

「俺もそう思うんですよ」

 ダイナは困り顔だ。

「何も迷う必要は無い。連携が取れんというなら単独で出すしかないだろう。新型機まで与えられたのだ。見合う働きをしろと言えばいいではないか?」

「分かりました。一機くらいはサポートを付けるべきかと思ったのですが、女史にも異論がないのであればそのように」


 議論は陸戦隊の配置へと移っていく。


   ◇      ◇      ◇


「誰かを助けるために使ってみろ」

 その言葉がピスト・ビクトランの胸をもやもやとさせている。


(簡単に言いやがって。身なりも整ってたし、あれだけ強ければ大人にも言いたいことが言えるだろうさ。でも、身体はでかくなっても子供だって言われ続けている俺はどうすればいいんだよ)


 本気で掛かっていったのに、あの灼熱の炎のような髪の男には一蹴された。無力感は増している。自分に何かが成し得るとは思えない。なのに踏み出したい衝動に駆られる。


(やるのか? 埋もれていくだけなら無茶をして散ったほうが格好いいのか? そんなの父さんも母さんも馬鹿な息子だって言うんだろうな。どうせ今も言われてるか)


「大丈夫? まだ痛い?」

 ネイツェが気遣ってくれる。何だかんだと馬鹿をする少年が黙りこくっていたので不安に感じていたのだろう。

「平気だって。……なあ、オリバー。俺たちってこのままでいいのか?」

「いいとは思ってないが、だったら何をする?」

「考えないか。なに……」


 その時、遠く金属を打ち合わせるような異音が響いてきた。

次回 「こっち向けよ、馬鹿野郎! 俺が遊んでやるぜ!」

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