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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第五話

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解放攻勢(3)

 フィーナがエルシと兄をからかっていると、そこへ隊長のダイナと整備班長のフランソワがやって来る。彼らもアームドスキン格納庫が本拠地であり、真っ先に気になるところなのは間違いない。


「これはまた気難しそうな機体だねぇ、エルシ」

 笑顔でそう問いかけるのは冗談だからであろう。

「あなたにとってはそうでもないはずよ、フラン。前もって図面は渡しておいたでしょう?」

「目は通してあるけど、どこまで信じていいのかって感じだったんだけどさ」

「彼の専用機なんだから動かして見せてもらえばよくてよ」

 視線がオレンジの髪の少年に移る。

「そうさね。頼めるかい、リューン」

「いいぞ。どうせ慣らさなきゃなんねえ」


 フランソワが同乗を頼み込んでいる横でダイナは何かを押し隠すようにちらりちらりと銀色のアームドスキンを見ている。隠し通せていないのが彼の3Dアバターのほうだ。露骨にカスタム機のジャーグを見上げて指を咥えていた。


「ぷふふー、ダイナさん、あれに乗りたいんですか?」

 フィーナが吹き出し混じりに尋ねると、彼は動揺した素振りを見せる。

「うっ! や、やめてくれ、アバター。それは分かりやす過ぎる」

「あはは、かわいい」

 どう取り繕おうがアバターはダイナの心象を表している。誤魔化しようがない。

「そんなにアピールしなくたってカスタム機にはあなたに乗ってもらうわ」

「いいんですか、女史? 彼の予備機なのでは?」

「パシュランはそう簡単には壊れないくらい頑強だから心配無用よ。だから緑に塗り直してあるでしょう?」


 喜んでくるくると踊るダイナのアバターにリューンのペスが一緒になって踊り、ロボット犬のペコまでが追い掛けて楽しそうに吠える。

 フィーナが笑いかけるとダイナも恥ずかしそうに後ろ頭に手をやっている。27歳にもなって童心を見破られるのは、男として羞恥を覚えるのだろう。

 彼らパイロットには基本的にアバターが纏わりついているので感情が察しやすい。本人たちもそれは心得ていて、開けっぴろげな性格の人物が多いのも事実である。


「ところでよー」

 じゃれ付いてきたペコを抱き上げながらリューンが切り出す。

「お前の造るアームドスキンは合体とか変形とかしねえんだな?」

「ぶふー!」

 吹き出したのはフランソワである。当のエルシはむしろ呆れ顔だ。


 それはフィーナもちょっとだけ感じていた。

 立体(ソリッド)TVで流れるCGアニメーションや子供向け実写バトルものに挿し込まれる戦闘シーンでは、飛行形態に変形する機体や飛翔機数機が合体して一機のアームドスキンになるものまで存在する。女の子でも熱中する者は居るが、男の子となれば大概が大好物である。

 兄はそれほど熱中するタイプではなかったが、多分に漏れず好んで観ていた記憶がある。その発想が出てきても不思議には思わなかったのだが、彼らの反応を見るとおしなべて否定的であるようだ。


「いいかしら、リューン? 特にあなたのように近接戦闘専門みたいなパイロットが変形や合体をするような複雑な機構を組み込んだアームドスキンに乗ってみなさい。帰投する度に完全に解体(ばら)して全品応力検査が必要よ。どれだけ頑張ってもらっても四~五日に一度の出撃が限界になるわね」

「勘弁しておくれよ」

 フランソワは涙目である。

「お……? おう、すまなかった」

 懇願されると、勢い謝ってしまうリューンである。


 それはつまり技術的には不可能ではないという意味なのだが、問題に上っているのは構造強度の話で、技術者にとっては一般常識のようだ。

 本来は各部のパージ機構さえ排したほうが強度は高い。しかし、それは連鎖誘爆からパイロットを保護する観点から組み込まれてあるもの。そう懇々と諭されている。


「じゃあよー、やられるほど強くなる機体は造れねえのか?」

 更なる漫画的な発想である。

「無茶を言わないでちょうだい」

「そいつは操縦者のメンタルに期待するしかないね」

 リューンの素朴な疑問は落胆をもって迎えられる。


 ダイナは腹を抱えて笑っていた。男の子ならいつしか通る道なのだろうとフィーナは苦笑いで傍観している。


   ◇      ◇      ◇


「ねえ、ファニス。今夜は僕のために時間を空けてくれないかい?」


 彼が掻き上げた見事な金髪が陽光に煌めく。青年は爽やかな笑顔に白い歯を輝かせ、彼女にキメ顔で問い掛けていた。


「そんなに呑気にしていていいわけ、エフィ? 連中、戻ってきてるわよ?」

 オペレーターのファニスは呆れ気味に言う。

「ラングーンは軌道上で撃沈したけど、あいつら新造戦艦を持ち出してきてるって聞いてない?」

「聞いているさ。そんなに心配しなくたって今度は僕が沈めてあげるよ。この金髪に賭けていい」

「坊主にでもするわけ?」


 彼は自慢のようだが、その艶やかな金髪は染めたものだともっぱらの噂である。確かに出撃が多い時など生え際あたりが微妙に怪しい時があるのを彼女も知っている。


抵抗勢力(レジスタンス)の支配地域の攻略、うるさく言われてるでしょ? あなたが教授(プロフェッサー)ガイナスを仕留めてきたら食事くらい付き合ってあげてもいいわ」

 流し目を送っておく。

「よぉし、言質を取ったぜ。忘れないでくれよな?」

「はいはい。期待しておくから頑張ってね」


 これもギャラ分とファニスは自分に言い聞かせる。こんな軽い男でも、彼エフィ・チャンボローはゼフォーン駐屯軍のエースなのだから、オペレーターとしては鼓舞しておくのが使命だと思っていた。

次回 「戦闘艦やアームドスキンじゃ味わねえもんだからよ」

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