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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第三話

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剣王(6)

 銀色のジャーグを先頭に、鮮やかな緑色のルファング二機が降下していく。地上では格納庫(ハンガー)から敵のアームドスキンが緊急発進してくる。深緑のファーレクが開け放たれた扉から多数吐き出されてくる様を見てフランチェスカはぞっとした。


(やっぱり防備が強化されてるぅ! ラングーンの標的が覚られてた)


 ラングーンの潜伏は発覚している。次にどこが狙われるかアルミナ軍も予測していたのだろう。それに合わせて戦力が増強されていたのだ。


(通常は二十機程度の配備のはずなのに、ゆうに超えてるし!)


 そこへ躊躇いもなく突っ込んでいく少年の気が知れない。最初から苦手なタイプだと思っていたが、ここまでくると理解不能だ。彼の頭の中には無茶という文字はないのだろうか?


(遠くから狙撃したい。でも、ルッティは続けって言うし)

 ちょっと目元に滲むものがあるのを感じる。


 リューン機は高度を下げるとすぐさまビームブレードを抜き一気に接近する。先頭の一機に接敵すると、受けにきた相手のジェットシールドをブレードで舐め、通り過ぎ様に背部を斬り裂いた。

 着地して足を滑らせながら回転すると、バルカンファランクスでビームをばら撒いている。カノンインターバルに入った武装をラッチに収めると、左手にもブレードを握って集団へと斬り込んでいった。


(正気じゃないよぅ。あんなの命がいくつあっても足りないし)


 ジャーグは至近距離から浴びせられるビームの嵐を器用に避けて接近。誘爆で巻き上げられた埃の中で光るブレードを振り回し、標的になりながらも更に閃光を増やしていく。その所為でアルタミラ機と自分には散発的な砲撃しか飛んでこない。


 彼の暴れっぷりも理解できる。フランチェスカも一応トレーニングルームで対峙したが、スティックの扱いでは足元にも及ばなかった。格闘戦のセンスでは比較にならないと分かっている。

 例の戦気眼(せんきがん)のお陰で回避能力が極めて高いのは間違いないが、それ以上に度胸がすごい。あれだけ躊躇も無く踏み込まれれば、逆に射撃を封じられて対応に困るだろう。


「多過ぎる! 退くぜ!」

 わざとらしく共用回線で吠えてくる。

「後先考えずに飛び込むからさ。さっさと退きな!」

 アルタミラも合わせて答える。


 三機は牽制の砲撃を加えつつ後退。離脱の態勢に移った。

 ここで事前の打ち合わせ通りにフランチェスカは政治犯収容所の門扉を狙撃してから反転する。これで内部決起から脱出してきた収監者を円滑に保護できるはず。あとは二次攻撃隊に任せればいい。


「まったく、猿芝居を」

 部隊回線でリューンが笑われている。

「誰が猿だ。四つか五つは墜としたぞ。そのくらい刺激しとけば頭に血が上ってんだろ?」

「まあね、こっちの意図まで読まずに飛び出す馬鹿は増えるだろうさ」


(それで無茶を承知で?)


 僅か三機の奇襲では陽動なのは見え見え。普通に誘いを掛けても食い付いてはくるまい。なので突っ込んで不意を突いたつもりに思わせる。善戦するも予想外の大戦力の反撃を受けたように見せれば、戦力を分散させた同時多発的な奇襲を意識させられてしまう。指揮官は各個撃破の好機を感じ制止する機を逸する。


(この子、猪突猛進の乱暴者に見えて、もしかして心理戦を仕掛けてるの? 結構、頭が回るんじゃない?)

 天性の勝負勘の類かもしれないが、そんなふうにも思えてくる。


「このままガルナ・ベイまで引っ張り込むよ」

 矢も楯もたまらず逃げ出したかのように見せ、追手を振り切ろうと砲撃を挟みつつ撤退戦を演じ始めるアルタミラ。

「チェスカも当てるつもりで撃ちな。リューンは……、当たらないからばら撒きな」

「うるせえよ!」

「あっ!」

 追撃部隊の中で閃光の花が開き、一時的に反撃が激しくなる。

「当たっちゃいました」

「いいよいいよ、ちょうどいい刺激さ」


 その後も交代でビームカノンの弾体ロッドを換装しつつ後退する一次攻撃隊。数分すると待ち望んでたアナウンスが流れる。


『データリンク接続しました。光学観測情報の共有を始めます』

 プローブの出力圏内に入ったのである。と同時に、部隊回線から少女の声が流れ込んできた。

「繋がった、お兄ちゃん! アルタミラさんたちも無事です、艦長! 良かった!」

「とりあえずこっちの情報は流れてるね、フィーナ。すぐに敵部隊の観測データも入るよ。把握よろしく」

「了解です、アルタミラさん。ガルナ・ベイのマッピングは完了してます。進入し次第ナビゲーションします」

 準備はできているようだ。


(妹は本当に良い娘なのにな)

 兄は非常に取っつきづらい。


「頼むぜ、フィーナ」

 取っつきづらいほうの男の声。

「大丈夫。練習してるもん」

「任せる。上手に使え」


(簡単に命を預けるってことは見たまんま兄妹仲は悪くないんだろうけど、妹ちゃんのほうは少しブラコン気味なのかな? 何か一生懸命で微笑ましい感じ)

 懐いた子犬のように後をついて回る姿が印象的だ。最近は実際にロボット犬もついて回っているが。

(兄のほうはつっけんどんなのに、妙に彼女を大事にしているみたい。あんまり似てないし、変な兄妹)

 モニターの透過マップに追撃部隊の姿がポイントされていくのを目にしながら、フランチェスカは新しい仲間のことを思う。


 滑ってきた後方ウインドウには廃都市の全容が見え始めていた。

次回 「君のそういうとこ、苦手なの!」

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