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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第三話

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剣王(2)

 この時代の放送技術はフレニオン通信に頼らざるを得ない状況だ。電波通信は阻害技術が発達し、レーザー通信は立地や天候に左右される。放送も重要インフラである以上、維持は必須である。

 設備が高価になり、保守に特殊な技能を必要とするフレニオン通信設備は多数設置できるわけもなく、都市に一つくらいが限界で、そこから各家庭へは光ケーブルにより配信される。

 モバイルは電波通信以外に手段はないのでターナ(ミスト)の散布が行われると混乱し経済損失が発生するが、フレニオン通信基地局により警報などの最低限の通信インフラは維持されている。


 この超光速(フレニオン)通信にはフレニオン粒子が利用されている。とはいえ、このフレニオン粒子は観測及び干渉が可能なだけで、通常空間には存在しない。

 元はジャンプグリッドの研究過程で発見されたもの。ワームホールから復帰した船体からごく微量だけ観測できるのだが、微小な時間で時空間素粒子(ターディオン)へ相転移してしまう。このことから時空外素粒子(フレニオン)と考えられた。


 時空面への重力波振動でこのフレニオンに干渉できる技術が発明され、それが時空に影響されずに瞬時に伝わることが証明されると、一気に通信技術として注目を浴びた。

 当初は巨大な設備が必要だったフレニオン通信も、反重力端子(グラビノッツ)の派生技術である重力端子(グラビッツ)の開発で、一般化できるほどに普及を可能にしたのであった。


   ◇      ◇      ◇


『死者こそ出ませんでしたが、この通りクルダスの街並みは無惨にも破壊されております』

 リポーターはカメラに向かって手で示しながら続ける。

『負傷者が確認されているのもそうですが、追撃に向かった軍兵士には多数の戦死者が出た模様。これをXFi(ゼフィ)、ゼフォーン解放戦線の犯行だと断定した軍は引き続きテロリストの追跡を行っております。王室からは注意喚起を伝える布告もなされており、市民の皆さんの協力を呼び掛けています』


「やっぱりテロリストとして批判の的にされてるな」

 アルミナ中央放送を映しているトレーニングルームの2D投影パネルを観ながら、パイロットの中心的存在であるダイナ・デズンは言う。

「当たり前じゃん。ここの人にとっては僕たちって間違いなくテロリストだもん」

「俺もそいつの仲間入りか」

 女性でありながら一人称が僕のミントの意見に、リューンは自嘲気味に続けた。


(表立っては手配されてないみたいだけど、警察とかには顔画像とかの手配が回っているよね)

 フィーナも、この惑星にはもう居場所が無いと感じている。


 何やらまだ作戦が残っているらしく、戦闘空母ラングーンは隠密航行のまま静止軌道に留まっているが、条件が整い次第作戦に移行するのだと聞いている。

 そんな状態で惑星アルミナ近傍に留まっていると気持ちの整理がなかなかつかないのだが、居候先の都合なのだから仕方がないと諦めた。


   ◇      ◇      ◇


「工作員からの連絡はまだないのかね?」

 教授(プロフェッサー)ことガイナス・エストバンは苛立ちを面に出さないように問い掛ける。

「はい、未だ準備は整っていない模様です」

「急がねば我らとていつまでも軌道上に留まっているわけにはいかんのだぞ?」

「じゃがな、教授(プロフェッサー)、あちらさんの準備が整わんことには軽々に仕掛けるのは無謀というものぞ。人質に取られて我々が動けなくなろう?」


 リューンの勧誘作戦はついでに過ぎない。本命の作戦はこちらのほう。収容所の政治犯奪還作戦となる。

 アームドスキン隊を用いた強襲作戦を決行するのは現有戦力でも可能だ。ただ、それを行えば看守側が政治犯である収監者を盾にするのは明白である。向こうにとっては人道的批判を免れる為に生かしているだけで邪魔な存在。こちらにしてみれば絶対に死なせるわけにはいかない人材である以上、容易に想像できる方法だ。


「分かっている。特にアーガニー将軍とディグリダ将軍の奪還は必須である。彼らの命にかかわるような強硬手段は打てん」

 彼にも要点は掴めているのだ。

「ならば慌てず騒がず待つことじゃ。ここに居ればいつ発見されるともしれんのは儂も分かっておるぞ。じゃが、熟せん機に功を焦れば出るのは死人ばかりじゃと思いなされ」

「中と呼応しなければ本作戦は成功しない。場合によっては一時離脱も考慮する」

「そのくらいのつもりが良かろう」


 今は物資に紛れさせた武器が僅かずつ配布されつつある状況。これが完了すれば内部決起準備は完了である。

 外からのアームドスキン隊の攻撃に看守が彼ら収監者を人質にしようと動けば、そこで反撃に移って制圧し、全員で脱走する計画になっている。

 その後は降下したラングーンが彼らを保護し、速やかにアルミナから離脱する手筈だ。


「エアクラフターの手配は問題ないのだね、女史」

 いかな大気圏の航行も可能になった航宙戦闘艦とはいえ着底は不可能である。収容にはエアクラフターが必要になってくる。

「済んでいますよ。こちらから要請すれば急行してきてくれます。ただし民間機、敵の排除が最優先事項。失敗して撃墜されるようなことになれば、今後の協力は得られないものとお考えを」

「うちのアームドスキン隊なら支障なく遂行してくれよう。足を引っ張るものがいねばの話だがね」


 教授(プロフェッサー)の皮肉にエルシは知らぬ顔で応じている。

次回 「嘗めた真似しやがると本気でぶちのめすぞ?」

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