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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第二話

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XFi(ゼフィ)(7)

 戦闘空母ラングーンは山間に潜んだまま数日が経過している。完全に面子を潰されたトルリチー大陸のアルミナ軍本部は広範囲に展開して捜索にかなりの戦力を投入している。監視網が少し薄くなるまでは迂闊には動けない。

 これはあらかじめ想定された状況であり、間もなく軌道艦隊に陽動作戦が仕掛けられることになっている。頭を押さえられていなければ動きようもあるのだ。


「第五ジャンプグリッドに抜けます。位置的に軌道艦隊は剝がれてこっちに向かってくるでしょう」

 別働艦隊の司令官からのフレニオン粒子通信である。時空外物質に干渉するこの超光速通信は傍受される心配はない。

「作戦通り陽動任務を実行したまえ。その間に我々も作戦を実行に移す」

「見事に逃げ回ってみせますよ」


 ジャンプグリッド近傍は星間航行の要衝であり絶対的非戦闘宙域となっているが、当然のようにアルミナ軍の観測機は置いてある。出現と同時に感知され、戦力が振り向けられるのは間違いない。

 それを利用してラングーンは活動を再開するのだ。無論、地上戦力を排しなければならないが、捜索範囲を分散させただけ突破は難しくなっているはずである。


「では、軌道艦隊の移動が確認でき次第、捜索部隊を排しつつ後退し、一度高衛星軌道まで上昇して作戦ポイントまで移動する」

 教授(プロフェッサー)が作戦概要を指示する。

「衛星軌道まで上がったら磁場展開してターナ(ミスト)散布。隠密航行に移行せよ」

「了解」

 艦長命令に艦橋(ブリッジ)要員はそれぞれにシークエンスを確認しておく。


   ◇      ◇      ◇


 これまでの間、重力場レーダーには一日に何度も感があり、その度にパイロットには呼集が掛けられハンガーへと走らされ続けている。

 レーダー波を発すれば存在を覚られるため周囲の状況は掴めていない。パッシブに作動する重力場レーダーしか頼るものがないのである。


「重力場レーダーに感! 戦闘準備!」

 艦内放送と同時にパイロットはハンガーに駆け込んでくる。

「どうせまた気付かず行っちゃうんだから走らなくてもー!」

 ミントはもう繰り返しに飽き飽きしているようだった。

「黙って走れ!」

「遅いぞ。俺はもう身体が暖まってんぜ」

「偉そう! フランに使われてただけの癖にー!」

 ダイナにどやされた上に、新人(リューン)にまで責められた彼女はたちまち不機嫌になる。

「うるせえ!」

「少年のほうが解ってるぞ」

「ぶー!」


 届いて間無しのスキンスーツをたくし上げ、スライダーを首元まで上げたらフランソワがヘルメットを被らせてくれる。バイザーは上げたままで礼を言い、パイロットシートに身を投げ出した。


σ(シグマ)・ルーンにエンチャント。機体同調(シンクロン)成功(コンプリート)

 機体が稼働状態に上がっていく唸りを耳にしつつ、鳩尾の前に投影された2Dコンソールに指を走らせハッチを閉じた。


 全体通信ウインドウが開いてオペレーターのハーン・ジーケットの顔が映ると、ミントの勘が外れたのを告げる。


「敵機を光学確認した。既にターナ(ミスト)の散布を始めている。敵が集まってくる前に全機発進!」

「行ってきな!」

 モニターが生きると、収容される昇降バケットの整備班長が親指を上げて見送ってくれている。

「任せろ。行ってくるぜ」

 見えないと知りながらリューンも親指を上げて応える。すぐに別のウインドウが開いてエルシの顔が映った。

「改良は間に合わなかったわ。そのままで行きなさい」

「そんなことやってたのかよ。こいつは結構動くぞ?」

「あなた用にはチューニングされてないの。無理は止すのよ」

 ヘルメットを指先で叩いて頭に入れておくと合図する。実戦となればその限りではないから断言などできない。


 他の機を追うように機体を滑らせる。母艦を守りながらの撤退戦だ。カタパルト発進などはしない。

 浮上を始めているラングーンの甲板まで出ると、味方機は展開を始めている。地平線上には機影が陽光の反射で確認でき、赤いターゲットカーソルが敵機であることを示している。


「わらわら集まってきやがるな」

 自分の口元が笑みに染まっているのを自覚する。

「偏向磁場の外側に展開。二機で組んで迎撃。引きつけてから撃てよ」

「引きつけても当たんねえよ」

 リューンは独り言ちる。


 反重力端子(グラビノッツ)の出力を下げると眼下に身を躍らせた。


   ◇      ◇      ◇


「あいつ、行っちゃいましたよ!」

 ピートが驚きの声を上げてダイナはジャーグの姿が無いのに気付く。

「マジか! 誰か続け!」

「もう見えない……」

「どうしよう」

 ペルセイエンがぽそりと告げ、フランチェスカの困惑が聞こえる。

「だー! 何なんだよ! もう放っとけ!」


 構っていられないと思って接近する敵機に砲口を定めていると、樹林から飛び上がったジャーグが編隊の一機を斬り裂く。誘爆のターナ光に紛れて降下したリューン機は、再び樹林の中へと隠れている。


(あいつ、ここでゲリラ戦をやる気か?)

 有効といえば有効だ。ターナ(ミスト)の圏内であれば、重量の嵩む重力場レーダーを装備していないアームドスキンには探知できない。


 足元を気にしている敵機を狙撃しようとすると、また飛び上がったジャーグがその相手に斬り掛かっている。


「射線に入るな、リューン!」

 部隊回線に吠えたてたダイナは押しかけたトリガーから指を外す。その頃には敵機は爆炎に包まれていた。


 扱いに困った彼は珍しく口汚い言葉を吐いてしまっていた。

次回 「あなたなら彼を制御できるわ」

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