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ゼムナ戦記  伝説の後継者  作者: 八波草三郎
第十話

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アルミナ侵攻(10)

 モルダイトの放ったビームは回避コースを狙っており、思わず派手にパルスジェットを噴かした敵機は静止してしまう。そんなファーレクをフレッデンが狙撃して閃光に変えた。戦闘中に静止などすれば的でしかない。


「見事です、ダイト」

 熟練の技にフレッデンが賞賛を送る。

「年の功ってやつだ。そのうちお前もできるようになるぜ、フレッド」

「学ばせていただきますよ」


 戦闘経験の長いモルダイト・バングは相手の心理を読んで回避機動を予測する。一手先に一撃を放り込むことで相手を思考停止に陥らせる歴戦の勇士の技だ。

 本人は熟練の結果だというがそれも才能の一つで、だからこそ彼はここまで生き延びてきたのだとダイナは思う。経験だけを問えばモルダイトのほうが先輩なのだ。


(どんな局面でも落ち着いて対処できるのも才能かもな)

 そうとも感じる。


 若さと覇気と小器用さで戦場を駆け抜けてきた。隊長に持ち上げられ、心配性が高じて総帥に押し上げられ、今では一軍の将として将軍と呼ばれる立場になってしまった。

 確固たる志はあれど、抱いた希望の先に達した時、自分はどんな立場になっているのか全く想像ができない。だが、こうして自分を常に長として敬い、安心して背中を預けられる仲間に囲まれている今は幸せなのだろうと思う。


「そこっ!」

 ピートのブレードが、ダイナの一撃を躱したローディカの上半身を斜めに斬り裂いた。

「冴えてるね、大将!」

「いつもお前がフォローしてくれると思ってるからさ」

「頼りにしてるぜ、ダイナ」


 パイロット適性という意味では、驕りではなく一歩抜きんでている自覚はある。撃墜数がそれを如実に表しているだろう。

 それでもリューン・バレルという巨大な才能と強烈な個性の前では霞んでしまうはず。それなのに彼を立ててくれる仲間がいたからこそダイナは自信をもって戦っていられる。


「暴れてやがるぜ。あれは潰しとかなきゃあな」

 モルダイトがカノンで示す先の編隊を確認する。

「行くぞ。続け」

「おう!」


 三つの四機編隊が有機的な連携を見せつつ押し出してきている。何かをなぞるような訓練そのままの感触はすれど、クレバーな動きに対するには経験の足りない友軍機が撃破されてしまう。

 大加速から姿勢制御し、慣性飛行しつつ機体正面に敵機を捕捉。牽制のビームを入れて注意を引くと、敵編隊が上下に展開してくる。横に流れるダイナ隊に角度のある砲撃が襲い掛かる。


「散開!」


 するするとフレッデン機が接近する。丁寧な口調の割に熱い男は味方が撃破されているのを見て燃えている。そうと知っているモルダイトが上手に位置取りしながらフォローに入る。

 注目を集める彼らの裏に回るようにピートが動く。そしてダイナは隙をついて崩しに掛かる。

 それまで整然と展開していた敵編隊にほころびが生じる。これでもう彼らのペースだ。


「よくもぉー!」

 僚機を撃破された敵が斬り掛かってくる。

「ここは戦場。恨みっこなしだ」

「貴様っ! 属国の隷属民風情が!」

「そんなものを引きずっているからさ」


 振り上げた一閃で相手の斬撃を弾くと、流れのままに袈裟に斬る。その背後から突進してくるファーレクに、隙間から突き出した砲口で直撃を与えた。連鎖的に誘爆する二機から自機を逃がしつつ、後方宙返りさせて後ろの敵の頭部を蹴り潰した。


「なんでだっ!」

「常道通りなんだよ! 味方が応じてる間に背後に回る。訓練と同じことをやっているなら簡単に読める」

「ひぃっ!」

 即座に回転させたジャーグに退く敵機を追わせ、横薙ぎで両断した。


 四機編隊を一人で撃破し、ジェットシールドで防いでいる爆炎を割り裂いて敵機が現れる。さすがのダイナも息を飲んだ。


「すみません、ダイナ!」

 フレッデンの取りこぼしらしい。

「もらったー!」

「まだぁー!」

 振り下ろされる光刃に自分のそれを跳ね上げる。


 ところがブレードは途中で弾き飛ばされ、敵機も縦に両断されて蹴り飛ばされている。銀色の武骨な機体が割り込んできていた。


「気ぃ抜くなよ、大将」

 ニヤリと笑う顔が脳裏に浮かぶ。

「すまなかった」

「あんたを死なせるわけにゃいかねえんだよ。もう勝ちが見えてきてるのにな」

「よし! このまま押し切るぞ!」


 仲間の応えを耳にしつつダイナは気合を入れ直した。


   ◇      ◇      ◇


「珍しいな」


 勇躍飛び出していくダイナ隊の男たちに続いていると、左膝辺りに新たな2D投映パネルが立ち上がる。そこに映っているのはエルシの顔だ。

 彼女はあまり戦闘中は話し掛けてこない。邪魔をしたくないのだろうが、こうして特殊回線を繋げてくるというのは何か起こったのかもしれない。


「アルミナの部隊回線が妙に賑やかだったから覗いてみたのよ」

 それも珍しいことだ。


 基本的には相手の部隊回線は傍受しないものだ。マナーとかそういう類でなく、暗号が掛かっているのは当然だしフェイクである可能性も高い。更には流動的な乱戦状況で裏を搔こうとしたところで、次の瞬間には状況は変わっている。はっきり言って効果は薄い。


「だったらね、親征なんていう単語が飛び交っているわ。本当かしら?」

「はぁ?」

「アルミナ王子のエムストリがいるらしくてよ」


 リューンは驚き、片眉を跳ね上げた。

次回 「なんつー面倒なことをやってくれやがる」

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