第3話 あの世?
登場人物
栗田聖羅 15歳 鈴鹿と静は高校での出会い
性格:???? 犯罪歴???? チート能力????
青森静 15歳 鈴鹿とは幼馴染
性格:天然女子 犯罪歴???? チート能力:なし
山並鈴鹿 15歳 静の世話係
性格:ドジっ子 犯罪歴???? チート能力:なし
ゆっくり目を開ける。
しかし、視界は瞼の裏の暗闇と変わらない。
2、3回瞬きをしたが、変わらなかった。
自分が倒れている地面は、ざらざらのコンクリートの様だ。
ここは……何処?
冷たい地面に手を付いて体をゆっくり起こす。
周りを見わたしたが、景色は変わらず、闇に飲み込まれたかのように真っ暗で、静寂に包まれている。
一体何が……っ!?
突然、車が衝突してきた場面やゴブリンに手を踏み潰され、首を切断された場面が映像のように流れる。
頭が割れそうなほど激し頭痛に襲われる。
必死に右手で頭を押さえながら、左手を床に着く。
少し経つと頭痛がゆっくり収まった。
短い息を繰り返した後、震える手で、首と折れていた腕に触れる。
何ともなっていなかった、まるで、傷害を負わされた事実なんてなかったかのようだ。
そっか……死んだんだ……
状況的にそうとしか考えられず、力が抜けて肩を落とす。
癖でポケットに手を入れてスマホを取り出そうとした。
死んだんだからあるわけないか……
予想通りポケットはスマホだけでなく、財布もなかった。
だとしたら、ここは恐らく地獄……当然だ、それだけの事をしてきた。自業自得だ……
思わず苦笑する。
立ち上がり、ゆっくり歩き始める。
足音はしなかった為、静寂は破られない。
閻魔様は孤独という罪を私に与えたのかもしれないけど、でも、私はこの暗い静かな世界が落ち着く……なんか……懐かしい感じがする……
「痛っ!?」
突然、頭に何か硬い物がぶつかった衝撃が走る。
「だ、誰!?」
聞き覚えのある声が前から聞える。
「え!? 鈴鹿!?」
後ずさりをして、赤くなった額を手で押さえながら前を向く。
「聖羅!?」
暗闇で見えなかったが、声の方向から目の前にいる事が分かる。
「良かった! 一人じゃなくて!」
歓喜の声を上げながら腕を掴み、力強く握ってくる。
1人じゃなかったか……
嬉しいのか嬉しくないのか複雑な気分だ。
という事は静もいる?
「いや、怖かった! 気が付いたらここに居たんだよね!」
「あっそ」
生返事をする。
「ここ何処か分かる?」
「暗闇の中」
「そのまんま……」
鈴鹿は呆れた声を出す。
「トイレ何処?」
また聞き覚えのある声が聞こえて来た。
「え!? 静ちゃん!?」
鈴鹿は嬉しそうな声を出す。
「そうだよ!! トイレ知らない? うんこしたいんだけど……」
「流石! こんな状況でもぶれないね!!」
聖羅は静を褒める。
「それで、ここが何処か分かる?」
鈴鹿は聞いてくる。
「どう考えたって、あの世じゃないの?」
聖羅は言う。
「あの世!?」「え!? どういう事!?」
静と鈴鹿の驚いた声が同時に聞こえる。
「覚えていないの?」
聖羅は聞く。
「え? な、何が?」
鈴鹿は躊躇しながら聞き返す。
「自分が死んだことよ」
「……え? 死んだ? 聖羅が?」
鈴鹿は首を傾げる。
「違う、鈴鹿自信の事」
「え? どういう事?」
上の空の声だ。
「あの時、法定速度を余裕で越えた車が、私達に向かって、突っ込ん出来て、静はブロック壁に頭を打ち付けられて、鈴鹿は電柱と車に挟まれて即死していた」
淡々と説明し終わると、2人とも数秒間、沈黙した。
「え!? ま、待って!!」
掴まれていた腕に力が入り、震えているのが伝わる。
「意味が分からないんだけど!? 要するに私、死んだの!?」
現実を拒絶し、事実を否定して欲しい感情が伝わる。だが、
「うん、車と電柱にスクラップにされているのがはっきり見えた。誰がどう見ても即死していた」
事実を突きつける。
「……」
再び沈黙が走る。
「嘘だ!!」
鈴鹿の口から真っ先にその言葉が出る。
腕を掴んでいる手により力が入り、痛みが走る。
握られていない方の手で、掴まれている腕を弾き叩いた。
腕から鈴鹿の手が離れる。
「そう思うんだったら、そう思ったら? でも、現実は変わらないから」
冷たい声で言う。
倒れる音と同時に、鈴鹿のすすり泣く声が空間に響く。
「ということは……私たち幽霊っていう事!?」
静は驚いた声を出す。
「そうなるね」
ため息をしながら腕を組む。
「おお!! これが幽霊か! でも、体が浮いたり、フアフアしたりしないんだけど……全然、期待外れなんだけど……」
静は深いため息をする。
こいつは自分が死んだことに対して何とも思っていないの?
まあ、あいつ(鈴鹿)みたいに泣き崩れるよりはいいけどね。
「聖羅はどうやって死んだの?」
いつもの声で普通に聞いて来る。
話す? まあ、信じてもらわなくてもいっか。
「信じられない話だけど、あの後……」
これまでの経緯を話した。
「うわ……首切断……凄い!」
明るい声で言う。
「え? 何が?」
「だって! 首を完全に切断された後も意識があるていう貴重な体験出来た事だよ!!」
「はぁ? 静ちゃん、もう一回殺すよ?」
頭にきたが、殴りたい衝動を抑えた。
「え? 怒ってる? だったら、ごめんなさい!」
「全く……相変わらず、空気を読まない天才なんだから!」
「え? 天才!? やっぱり!」
嬉しそうに言う。
「……もういいや、何でもない」
まともに会話すると、ストレスと疲労が蓄積されていくため、その場を離れる。
よく考えたら……光が見えた、あの時は迎えが来たのかと思ったけど、よく考えたら本が光っていたよね……
「ん?」
足に軽い何かがぶつかり、すれる音がした。