5本目
俺は今、家の裏手にある父が自身で造った弓の練習場にいる。
俺が弓の練習をしているのかって?
残念ながら今日は弟が父指導の元、弓を握っている。俺はその横で弟の成長を見ながらナイフ片手に矢を自作している。
こんな田舎の農村には武器屋などあるはずもなく、木こり兼大工のじーさんは居て、頼めば作ってもらえるがお金がかかるので矢は自分達で作るしかない。
弓も当然、自作で俺が使っている弓は父手製の物だ。
それにしてもこんなにゆったりしていて良いのかと思うが俺が昨日、鹿を2頭も仕留めたもんだから余裕があり、本日の狩りは休みになった。
この余裕を利用して、父は弟に弓の猛特訓を強いている。
ちなみに今更だが弟の名前はカイト。父はガクトで母はアリーという。
ほんと、今更だな。
気付いた人もいるだろうが二人の名前を取って、俺の名前はアガトにしたそうだ。
俺としてはゲームのキャラネームとして適当に着けただけだったんだけどな。
さて、カイトの練習に目を戻すと父のシゴキに耐えかねて既に目に涙を溜めて泣く寸前だ。
実に面白い。
誰だっ!?酷いって言ったヤツは?
俺はカイトの今にも泣き出しそうな顔が面白いと言っただけで内心では頑張れと思っているよ。
そんな事を思っているうちにとうとうカイトが泣き出した。まあ、昨日の狩りで俺の出来があまりに良かったから父のガクトが弟にも期待して練習が厳しくなっても仕方ないか。
親として子供に期待するのは当然の事で俺の活躍を目の当たりにしたからではない。決して俺には非はない。
さて、矢の作成に集中しようかな。
「(アガト~!アガト~!)」
家の中から母さんが呼んでいるようだ。
俺は手に持っていた作りかけの矢とナイフを地面に置くと家へと向かう。
「私の便利な倉庫ちゃん・・・じゃなかったアガトはどこに行ったのかしら」
おいおい、流石に倉庫呼ばわりは傷付くぜ、ババア。
「あら、そんな所にいたのアガト。探したわよ。それにしても何か失礼なこと言わなかった?」
「母さん程じゃないよ」
あー実に心温まる素晴らしい母子の会話だ。
「それはそうと昨日、片付けてくれた漬け物石出してちょうだい」
俺は大人しく母さんの指示に従い、漬け物石を出してあげる。
「それからあれとこれも出してあっちの物をしまっといてね」
「はい」
うちでは母さんが最強だから逆らう訳にはいかないのだよ。逆らった日には具無しのスープにされてしまう。
母さんには従順でいなければ。
あ~、母さんの用事を早く終わらせてまた練習場でカイト見ながら笑っていたいぜ。
◇◇◇
俺が前世の記憶を取り戻してから1ヶ月、やっと村人の職業がカンストした。
まさか村人をマスターするのに1ヶ月かかるとは思わなかった。
原因は父の無駄な殺生はしない主義だろう。
狩りに行き、手早く獲物を仕留めてしまう俺。その為、余力を残すどころか程よい運動で午前中に狩りが終わってしまう。
なんとも不完全燃焼でありそれに伴い、辛かったのは俺だけではないだろう。
その被害をもろに受けたのは弟のカイトだ。
俺の成長を日に日に目の当たりにする父は熱を帯びたようにまだ遊びたい盛りのカイトに弓の練習を強いている。
南無・・・
まあ死に体のカイトの話は置いといて俺の話に戻そう。
村人をマスターしたおかげで1つ中級職業が解放された。
・上村人《最大Lv30》
《Lv毎ALL+2》
健康体
上村人。
俺が欲しかったスキルを持つ有用な職業だ。
レベルアップ時のステの上がり具合も良く、何よりもスキルが素晴らしい。
・『健康体Lv:1/10』
レベルに応じて、状態異常の確率及び効果を軽減。又、レベルに応じて、体力・魔力・精神力の回復速度が上昇。その他、アンチエイジング等。
壊れスキルである。ただし、問題もある。その問題と言うのがスキルのレベル上げだ。
この健康体、ゲーム時代に検証組が四苦八苦してレベルの上げ方を解き明かしていたのだがその上げ方が問題だった。
なんとゲーム内で健康に健やかに過ごすという物だった。
そう、夜更かしなんてもっての他、3食バランスの良い食事、適度な運動、怪我なんてした日にはもう・・・そんな健康な日々を1週間過ごしてやっと1レベルアップ。
無茶苦茶な設定であったがあくまでこれは自力でレベルを上げようとした場合だ。
当然、俺はそんな事はせずにSPでさっさと上げるつもりだ。
俺が今、所持しているSPは20SP。
スキルレベルを2に上げる為に必要なSPは1SP。レベル3に上げるのに必要なSPは2SP、レベル4は4、レベル5は8と倍ずつ増えていく。
早速上げてみよう。
名前:アガト
属性:《無》
職業:上村人『Lv:0/30』
SP:5
STR:20
VIT:20
INT:20
MND:20
DEX:20
AGI:20
LUK:20
《スキル》
1.『弓術Lv:3/10』
2.『索敵Lv:3/10』
3.『隠密Lv:3/10』
4.『解体Lv:3/10』
5.―
6.―
7.―
8.―
9.『健康体Lv:5/10』
10.『無限収納』
こんな感じになりました。
取り敢えず、この調子でいつかは俺TUEEEしたいが先はまだ長そうだ。