24本目
監視塔を後にして、冒険者ギルドへ向かう途中、貯まったSPを使い、スキル『健康体』をレベル8から9に上げる。
それにしても戦闘が終わったからって、道端で座り込んだり、寝るのはだらしないと思う。
ギルドに着くと中は報酬目当ての冒険者達でごった返していた。
受付には当然、長い列が出来ており、真面目に並んでいては日付が替わってしまうので先頭に割り込もうと人混みを掻き分けていると入り口で騒ぐ、馬鹿が来た。
「お前ら道を空けろ!」
その男は取り巻きと思われる連中を引き連れて、偉そうな態度だ。
「お前ら!月間討伐数チャンピオン。炎術士のファビオ様が通るんだ!道を空けろ!」
取り巻きの一人が丁寧に説明してくれる。
炎術士というのは中級職業であり、ステータス欄にある属性が『火』の場合に魔法士の代わりに現れる。
俺の場合は『無属性』の為、魔法士となる。なのでハッキリ言って大したことない。
しかし、不思議なことに人混みは割れて人垣となり、道が出来た。
断然、歩きやすいので俺はその人垣を歩き、受付に向かう。
「お疲れ様、ジュリアン!討伐の集計よろしくね!」
俺は笑顔でカードを差し出す。
「おいっ!坊主!さっきの言葉が聞こえなかったのかっ!」
取り巻きの連中が息巻きながら詰め寄ってくる。
「うるせーよ!後、息がくせーんだよ」
正面に立っていたキィキィうるさい男の腹に下から抉るようにボディーブローを叩き込む。
次いで隣の猿野郎にもワン・ツーからのアッパー。
その後、二人を中級職業の弓士と戦士をカンストして、更に強くなった俺のステータスが唸りを上げて叩きのめす。
こういうこともあろうかとスキル欄に体術スキルは入れたままにしてあるのだ。
「おい!猿廻し、ちょっと来い!」
知らぬうちに出来た、ギャラリーの輪から最後の一人となった通称:炎術士を呼びつけると膝にローキックをかまし、崩れ落ちてちょうどよい高さになった顔面にワン・ツー・ワン・ツー・ワン・ツー・ワン・ツー・ワン・ツー・ワン・ツー・ワン・ツー、からの膝蹴り。
顔の形を丁寧に変えてあげれば、イケメンの出来上りだ。
受付に向き直り、ジュリアンに進捗を確認する。
「も、もう少々お待ちください」
まだ、時間がかかりそうなので俺が絡まれた時にニヤついていた冒険者に詰め寄る。
「お前、絡まれる俺を見てニヤニヤしてたな?」
「い、いや俺は何も・・・っ!?」
問答無用である。
正拳突きで悶絶させる。
「おい!小僧!!うちのメンバーに何してくれてんだっ!?」
問答無用である。
「ガキのくせに調子に乗ってんじゃねーぞ!」
問答無用である。
「お、俺は関係ないだろうが!」
問答無用である。
「お前、顔がムカつくな。ちょっと来い」
「横暴かよっ!?」
俺が最近、出番のなかった体術スキルを上げるチャンスを逃すはずがない。
冒険者ギルドは床が見えない程の負傷者で溢れ返っていた。
しかし、安心してほしい。
そもそも、冒険者ギルドでは喧嘩沙汰など日常茶飯事である。(俺調べ)
なので死人を出さない限り、俺が咎められることはないのだ。
俺はボロ雑巾のような冒険者達に語りかける。
「お前ら、迷惑料として今月から毎月、一人に付き、金貨1枚上納するように以上」
「「「・・・」」」
「では解散!」
俺の用事が済むのを見計らったようにジュリアンから声がかかる。
「ア、アガト君、集計終わったよ」
なんだろう?珍しくジュリアンの顔がひきつっているけど、きっと討伐数に驚いているのかな?
「こ、今回の討伐数は1126体だったので報酬は銀貨1126枚になります」
「じゃあ、全額カードに預金しといて」
「はい、わかりました。それで今回の活躍で冒険者ランクがGからDにランクアップしたのでその手続きも一緒にしておきました」
流石、仕事が出来る女性は違う。
「ジュリアン、ありがとう。ところで今日は見たところ、もう冒険者達はいないみたいだし、良かったらこの後、ご飯でもどうかな?」
「ご、ごめんなさい。今日は襲撃のせいで後処理に忙しいのよ・・・」
「そっか、じゃあしょうがないね。また誘うよ」
ジュリアンに断られてしまい、ギルドでの用事がなくなった俺は受付嬢達の視線を一身に受けて、高級宿に戻るのであった。
それにしても、倒れた冒険者達が邪魔で歩き辛い。
そして、ギルド内にはジュリアンの悲壮な声が響く。
「誰が倒れた冒険者達を片付けるのよ・・・」
ちなみに月間チャンピオン:ファビオの討伐数は136体だった。




