2本目
俺は布団に入りながら、今日あった出来事を振り返る。
気付けば、前世の記憶が蘇り、ハマっていたVRゲームと酷似した世界で生きている。
なぜ、俺がハマっていたゲームと酷似した世界だと言えるのかというとまだ、わずかではあるがそうではないかと思える所がいくつかあるからだ。
まずは名前。
俺がプレイしていたVRゲームで使っていたキャラネームがアガト。
そして、ステータス。ゲームと仕様が全く同じである。もう少し検証は必要だろうが。
後は母親にそれとなく、この村がある国の名前を聞いてみたところ、ゲーム開始時の国と同じ国名だった。ただ、ゲームだと始まりの町から始まったのだが俺が今いる場所は聞いたことのない農村だ。
まだ、確証は得られないが俺としてはゲームの世界であって欲しいと願うばかりだ。
兎に角、明日は父と一緒に初めての狩りに行くので出掛ける前に出来れば、もう幾つか確認しておきたい事があるので今日はもう寝ることにする。
隣には気持ち良さそうに布団を蹴飛ばし、腹を出して寝ている弟がいるので布団を着せてやりつつ、鼻を摘まんで息が出来なくしてやる。
苦しそうな表情を浮かべた弟を見て、満足すると解放してやり、今度こそ俺も寝るのであった。
【本日の弟の記録30秒】
◇
翌朝、いつもよりも早くに起きた俺は顔を洗いに行くと言い、井戸へは向かわず村の北側にある教会へと赴いた。
俺が知っているVRゲームと似ているようにステータスの欄には職業が表示されていた。なので昨夜、父親に転職したいと言ってみたところ、予想通りの返事が返ってきた。
まず、転職は各町や村などにある教会で行うことが出来るが転職する際にお布施というなの料金を渡さないといけないとのこと。
ここも俺が知っているVRゲームと同じだった。
しかし、そこで予定外だったのはうちの懐事情だ。
職業には下級、中級、上級、そして天級といった具合に強さによって分類されているのだが下級職業に転職するだけでも金貨1枚が必要であり、うちにはそんな大金はなかった。
たった金貨1枚と思うかもしれないが今、住んでいる田舎の村でなら金貨1枚で家族4人が半年は生活出来るらしい。
だがそこで諦める俺ではない。もし、俺がプレイしていたVRゲームの世界だとしたらバグ技が使えるに違いないと思い、教会の裏側へとやってきた。
俺は教会の壁に身体を密着させて、いるのかどうかも知れない神様へと祈る。
このバグ技は製作者の設定ミスによって教会内部にある転職の間の範囲が微妙にズレており、建物の裏側から身体を密着させることにより、範囲内に入り勝手に転職を可能にするバグ技だ。ゲームでは初期の頃に見つかりすぐに修正されていたけどね。
そして、俺の祈りはどうやら届いたようだ。
転職が可能になったことと、俺が知るゲームの知識が通用したことによってここがゲームの世界だと確証を得た俺は静かにほくそ笑む。
【下級職業一覧】
・戦士見習い《最大Lv20》
《Lv毎STR+3》
剣術、大剣術、槍術、斧術、盾術
・騎士見習い《最大Lv20》
《Lv毎VIT+3》
剣術、大剣術、槍術、斧術、盾術、馬術
・拳士見習い《最大Lv20》
《Lv毎VIT+2・AGI+2》
体術、集中
・魔法士見習い《最大Lv20》
《Lv毎INT+3》
火、水、風、土、無属性魔法
・僧侶見習い《最大Lv20》
《Lv毎MND+3》
回復魔法、補助魔法
・弓士見習い《最大Lv20》
《Lv毎DEX+3》
弓術、集中、解体
・斥候見習い《最大Lv20》
《Lv毎AGI+3》
短剣術、索敵、隠密
・遊び人見習い《最大Lv20》
《Lv毎LUK+3》
口笛
・商人見習い《最大Lv20》
《Lv毎INT+1》
目利き、値切り
・鍛治士見習い《最大Lv20》
《Lv毎STR+2》
鍛治、目利き
・村人《最大Lv10》
《Lv毎ALL+1》
なし
目の前に表示される職業欄から戦士見習いを選択し、獲得スキルを解放するとすぐに次の職業を選択して、次々とスキルを解放していく。全ての下級職業を選択し終わり、職業を村人に戻す。
ちなみに転職で獲得出来るスキルは基本スキルのみで他にも数多のレアスキルやユニークスキルなどが存在するが入手方法が特殊だったりする。職業自体も同じで基本職以外は色々とこなさなければ他の職業につくことは出来ない。
後は解放したスキルをセットすれば、準備完了だ。
名前:アガト
属性:《無》
職業:村人『Lv:0/10』
SP:10
STR:10
VIT:10
INT:10
MND:10
DEX:10
AGI:10
LUK:10
《スキル》
1.『弓術Lv:1/10』
2.『索敵Lv:1/10』
3.『隠密Lv:1/10』
4.『解体Lv:1/10』
5.―
6.―
7.―
8.―
9.―
10.『無限収納』
俺が欲しかったスキルもセットしたのでこれで狩りの準備は万端だ。
それにしても転生特典なのか『無限収納』があったのは大きい。
ついでにステータスについて少し説明しておこう。
まず、名前の下にある属性の表示。これは俺自身の属性を表している。
効果的には無属性魔法使用時、威力が1.2倍で他属性魔法使用時、威力0.8倍。全属性の被ダメージが1.0倍となる面白味のない無難な属性だ。
これがもし火属性だった場合、火魔法使用時の威力が1.5倍、優勢属性である風属性が相手だった場合、さらに威力2倍。しかし、弱点属性の水属性が相手だった場合、威力は半減する。無属性魔法使用時は威力1.0倍。
被ダメージの方は火属性ダメージ無効に風属性ダメージは半減。しかし、弱点属性である水属性ダメージに対しては2倍。他は1.0倍。
属性の説明は終わりで次はSPについて。
SPはその名の通り、自身が持つスキルに割り振ることでスキルLvを上げることが出来る。俺はまだ使わないけどね。
入手方法は職業Lvをカンストすると職業のLv分だけ貰える仕様だ。
SPの説明は以上だ。
他のステータスについては特に説明は要らないだろう。
後は家族に怪しまれない内にさっさと顔を洗って家に戻るとしようかな。
俺は足取りも軽くスキップをしながら家へと向かうのであった。