19本目
村を出てから、肉壁の脚で2週間。
名前を覚えるつもりもない町に寄った俺は冒険者登録を済ませる。
そこで冒険者ギルドでの一悶着を期待していたのにテンプレは発生せず、ガッカリだ。
どうやら俺には主人公補正はないようだ。
テンプレが無く、時間に余裕が出来たので忘れて溜め込んでいた素材を売り払い、そこそこのお金を手にする。
正直、今の装備でも問題ないのだが城塞都市で子供だからと舐められない程度の皮防具を整え、成長に伴い少し物足りなくなってきていた父手製の弓を手放して鋼鉄製の弓を購入した。
装備品を整えて、辺境都市アンドリュースの位置を教えてもらうと心機一転、狩人から冒険者として目的地を目指す。
さらに肉壁の脚で2週間進むと見覚えのある防壁が目に映る。
辺境都市アンドリュースだ。
モンスターを従魔として連れている俺は守備兵を刺激しないようにゆっくりと歩を進ませる。
外門に着くなり、門兵に冒険者カードを提示して、その堅牢な門をくぐる。
肉壁も首に従魔の印である首輪があるのでスルーだ。
このアンドリュースではよく戦闘が勃発する為、戦力となりうる冒険者は他の都市と比べれば比較的、歓迎される。
一応、知っているが念の為、門をくぐるついでに門兵に冒険者ギルドの場所を聞いてみる。
しかし、返ってきたのは予想通りの答え。
ゲームの時代との記憶のズレがないことを確認すれば、後は勝手知ったるなんとやらだ。都市の中をズイズイと進んでいく。
町並みは石造りで統一されており、道幅は兵士や馬車が速やかに通れるように広めに作られている。
都市の中心には小さなお城といった軍司令部の建物が睨みを効かせ、その両脇にそれぞれ冒険者ギルドと商業ギルドが軒を列ねる。
用があるのは当然、冒険者ギルドだ。
いかにも通い慣れている風に両開きの扉を押し開くと中から冒険者達の喧騒に俺の体が呑み込まれる。
それに臆することなく、ギルドの中に一歩二歩と踏み込んで行くと様々な視線を感じる。
嘲笑うような視線、奇異の視線に獲物を見るような粘りつく視線。
不愉快極まりないがシバキ倒すのは後日だ。
視線を無視して、俺は受付カウンターに向かう。
カウンターは全部で6つ。その内、1つは買取り専用だ。
瞬時にカウンターを見渡し、その中でもっとも好みの受付壌がいるカウンターに近付き、冒険者カードを差し出す。
「ダン爺さんの話し相手と防衛戦の依頼を受けたい」
俺くらいになると依頼が張り出されている掲示板を見なくても必要な依頼くらい覚えてしまっている。
一瞬、きょとんとした表情を見せたがそこはプロ。次の瞬間には通常の笑顔でカードを受け取り、処理してくれた。
依頼ダン爺さんの話し相手は依頼者のもとへ行き、話し相手をするだけの依頼でおこずかい稼ぎの未熟な冒険者用の依頼だ。本来ならば・・・。
そして、防衛戦の依頼はこのアンドリュースでの目的の依頼だ。
「受付けは完了しましたのでそれでは説明させてもらいますね」
彼女は俺にカードを返すと説明を始めた。
まずは依頼主であるダン爺さんの住所を教えられてから、次に防衛戦依頼の説明に移った。
防衛戦の依頼では基本、襲ってくるモンスターはオークであり、本来の報酬ならオーク一体につき、銀貨5枚が支払われるのだがここアンドリュースではあまりに多くのオークが襲ってくる為に一体につき、銀貨1枚になってしまうということ。
それから毎月、オーク討伐数を競ってランキングがされること、上位に入れば特別報酬が貰えること等。
ちなみに討伐数は勝手に冒険者カードに記録されるのでそれを元に集計される。
「以上ですが何かご質問はありますか?」
俺は待ってましたと言わんばかりにお姉さんに問いかける。
「俺、まだ泊まる所決めてないんだけど、お姉さんの部屋に」
「次の方、どうぞ!」
お姉さんの掛け声と共に知らないうちに俺の後ろに並んでいた冒険者に押し退けられて横に弾かれてしまった。
まあいいさ、これから俺の活躍を目の当たりにすれば、彼女の態度も変わるはずだからな。




